異界のドラゴン エピローグ
あのクヤーク宗教団ドラゴン事件でクヤーク宗教団は完全に潰れ、今までクヤーク宗教団の言葉を信じ生きてきた人々は、これからどうしたらいいと世界の終わりだと嘆いていた。
だがそこに大賢者グランテ様が現れ、言葉1つで人々は救われていった。
そして彼等は完全なるグランテ様崇拝者となった。
「ねぇあのさ?街の人達は魔術に操られてた訳じゃなかったんだよね。純粋にお爺さん達の言葉を信じてたんだよね。何であんな事……」
「ドラゴンを倒せば街に平和が訪れ、英雄が誕生し、大きな祭が開かれる。そうすれば街から出て行く人は少ないし、魔導司祭崇拝者になって移住してくる人も少なくない。だけどまた数年経てばそれも冷めてしまい街から出ていく人が現れる。それが嫌だったのかも知れないね」
優しくて温かいラルゴの手が私の髪を撫でる。
火傷の後遺症は大分無くなってきたため、私の気分はとてもいい。
「まぁ、ずっと崇拝してる人達を大事にしてれば良かったって話だな」
「おかえり、アドルフ」
「お帰りなさーい」
開けっ放しだった扉をそのままにアドルフは私達のいる玄関ロビーの木でできた椅子に座る。
実はアドルフ、ニートではなくフリーターだった事に私は最近気付いた。
私が来た頃は丁度働いている店が立て替え中で休みだったらしい。
「お帰りなさい!お疲れ様です、アドルフさん」
家の奥から出てきたのはエプロン姿をした自称勇者くんだ。
まだ騒ぎは完全におさまった訳では無いので街には出れない。
なので現在家事スキルと敬語スキルを身につけ中だ。
あ、私が何してるかは聞かないでね。
自称勇者とは一応和解したけど、完全には私は許したつもりはない。
でもまたグランテ様に言われたら、許すんだろうなぁ。
「あ、あの、ヤマダさん。洗濯物を取り入れるのがあとヤマダさんのだけなんですけど、どうしますか?」
初めて自称勇者が洗濯をした日、服や下着を触られるのが嫌でキツく言ってしまい少し怯えられている。
最近は自分で洗濯するのも面倒だし気にしない事にしたが、彼はわざわざ聞きにくる。
怯えた声で。
一度注意したことあるが、したらしたでもっと怯えられた。
「ねえ」
ふと気になった。
此処ではか、国ではか、世界ではか違和感ある私の名前、というか呼び名。
怯える自称勇者を見る。
「その名前で呼ばないでくれる?」
冷たく言ってみれば自称勇者は今にも泣きそうな声で「ごめんなさい」と謝り、ラルゴとアドルフは「ヤマダちゃん」と批難めいた声をあげるが私は気にしない。
むしろ分かってて言ったことになるから、頬が自然と緩んだ。
「愛守利。私の事は苗字の山田じゃなくてそう呼んで」
私は異界にきて早々殺されかけたけど、今はそんなことなくむしろ今までより快適に暮らしている。




