異界のドラゴン 12
外はより一層響めく声が大きくなり、怒鳴るような声や悲鳴が増えた。
そして扉の方から20代くらいの青年が困惑した顔で慌てて神殿に入って、叫んだ。
「魔導司祭様、大変です!この神殿内の様子が外に流れています!!」
「なんじゃと!!」
爺さんは目を見張り信じられないといった顔をしている。
そしてすぐに勘付きさっきまでの悪役ズラなんて比じゃないくらいのすごい剣幕でこちらを睨んでくる。
「貴様等か。貴様等の仕業か!!」
「今更気付いたか。それでも魔術師なのか?」
「貴様!クソッおいコイツ等を殺せ!」
周りに居た宗教団の人達は動揺しながらも杖を手に持ち、それぞれ呪文を唱えた。
炎渦巻き、水溢れ、風は吹き荒れ、地は揺れる。
神殿内はかなりカオスな状態になった、が結界の中には何の魔術も届く事は無く、私とアドルフは逃げる必要性を感じられないので見ているだけだった。
「今時、杖を使わないと魔術が使えないなんて遅れてるな」
師匠は確実に安全な結界の中に入らず、呪文を唱える事で相手に魔術を倍にして返したり消したりして簡単に攻撃をかわしていった。
同じく野郎も握った剣で飛んでくる魔術を消しては魔術師達に近付き杖を斬ったり弾いたりと、師匠が最終作戦会議の時に流血沙汰にするなと言った命令を実行していた。
これが圧倒的な力の差なのだ。
「さて、タイムアップだ」
パッと突然神殿内は静かになった。
炎も水も風も地震も暗闇も、結界以外の魔術全てが消えたのだ。
何故?と驚いていると、コツッコツッと靴音を響かせながら、ローブを羽織った美形のお兄さんが神殿の中に入って来た。
テライケメン!!
「グランテ、遅いぞ」
「これでも外交の帰りです。貴方は本当に人使いが荒い」
師匠にグランテと呼ばれたテライケメンなお兄さんは眉をひそめて小さく溜息をはいた。
そして周りを一度見渡してからイケメンな声で言った。
「ランゼジを筆頭としたクヤーク宗教団団員51名を禁忌呪術使用、殺人、詐欺の罪で捕縛します!」
空から降ってきた光の輪によって宗教団の人達、1人1人ずつが拘束されていき、拘束された人から首をガクリとさせていった。
全員を拘束したのか確認すると、グランテ様は結界の中に入り、今だに上手く立てずにアドルフに支えられながら床に座っている私に近付き膝を折って目線を合わせる。
「貴方方の活躍はラルゴさんからの通信映像で見ていましたよ。良く頑張りましたね」
「では姿を戻すので、失礼します」とグランテ様は私を気遣いながら右手を翳す。
すると優しく温かい光に包まれ、頬や腕にあった鱗や鋭い爪、大きな黒い翼は身体の中へとゆっくりと戻っていった。
それと同時に破れた服まで直っていく。
「すごい。ぁ、あの、ありがとうございます!」
「いえ、構いませんよ。……貴方は自分で戻れるようですが、どうしますか?」
「あー、気持ちだけで」
アドルフはグランテ様の心遣いを軽い言葉で断った。
グランテ様は次に野郎の元へ行った。
グランテ様と野郎の話は終わり、結果操られてたので無罪とし、師匠の見張り役として師匠の家に置くことに、家主に許可無く決まった。
師匠がそれに反発すると、グランテ様が爆弾発言をした。
「元はといえば貴方が彼等に禁忌呪術を教えたからでしょう!」
「「「は?」」」
「やっぱり……」
私とアドルフと野郎は同時に間抜けな声をだし、丁度神殿に入って来たラルゴは呟いて溜息をはく。
師匠を見れば目があからさまに泳いでいた。
「ど、何処にそんな証拠が」
「禁忌呪術は忘れられた呪術です。それに、資料が残っているのは王立図書館の一般禁止区域の最奥で、立ち入れる人間はかなり限られています。言っては悪いですが、見れば彼等の中に最奥に入れるようなレベルの魔術師はいませんでした。つまり、貴方が教えた確率がかなり高いということになります。他にも、貴方がしてきた事、貴方ならやりかねない事をここで皆さんに聞いていただきますか?」
「分かった!認める!認めるから止めてくれ。……っし、仕方ないだろう!宗教作ったはいいがどうすれば信者が増えるのかを連日私に聞いてくるんだ!奴らが!!しつこいから何か召喚するなりドラゴンを倒すなりで有名になれば良いんじゃないか?って言ったら奴ら本気になって、召喚魔術を教えろと言うから仕方なくだな」
「だからといって禁忌呪術を教える馬鹿がいますか!それになぜドラゴンなんです。一度しか見たことのないものに憧れすぎです!!」
「召喚と言ったらあれしかあの時は出てこなかったんだ!それにドラゴンに憧れて何が悪い!本物のドラゴンは格好いいんだ!!」
「それくらい知っています!……貴方にはまだ説教が必要のようですね」
「必要ない!悪いと思ってる!だから私はこうやって自ら片付けに来たんだ!!」
「彼女で3人目と聞きましたが」
「……」
「彼等を家に送ったら貴方も着いて来なさい」
「食事作らないと……」
「それくらい魔術で転送しますよ」
こうしてクヤーク宗教ドラゴン事件は、幕を閉じた。




