異界のドラゴン 11
さぁ、そろそろ私達の出番がやってくる。
緊張で速まる心臓の辺りを両手で押さえた。
深呼吸をすれば、師匠の声が聞こえた。
「お前は過去に多くの者の命を獣に変え、ドラゴンでなければ殺してきた」
「ハッ、戯れ事を。何処にそんな、化け物が人間だったという証拠がある」
師匠は笑った。
「喜べ。生き証人だ」
合図と共に神殿の中へ私とアドルフは足を踏み込む。
神殿の中は以前と変わらず、眩しくはない青い光がどこかからか入っていた。
師匠と野郎が居る辺りで一度止まり、アドルフが一歩前へと進み膝をついて祈りのポーズをとる。
「魔導司祭様、お願いです。私を元の普通の人間に戻して下さい!」
「誰じゃ貴様!誰に向かってたやすく口をきいておる!」
「私は数年前、貴方様にこの神殿で獣の姿に無理矢理変えられた人間、アドルフです」
アドルフは通常よりゆっくりと、人から兎の姿へと変身してみせた。
外ではラルゴの魔法によって神殿内を立体映像で見せているため、大勢のどよめく声が神殿まで伝わり響いてきた。
「私は貴方様にこんな姿に変えられ、違うと溜息をはかれ、沢山の人に刺され、魔物のいる森に捨てられました。そして死ぬ間際に魔術師様で在らせられるこの方に救っていただき、出来るだけ人間で居られるようにと魔術をかけていただき、今にいたります……」
アドルフ演技上手すぎだバカ!!
何?その可哀相なおっさんは!
私霞んじゃうよ?
私との演技差でバレたらどうしてくれるんだ!!
「何意味の分からん事を!貴様等のせいでワシの「私は!!この街に来てすぐに、貴方達にここに連れてこられました!そしていきなり、変な魔術をかけられ、恐ろしいドラ、ゴンの姿にした、てっ……っ……お、おも、い出すだけでも、ぅ……」
私は顔を手で覆い隠して泣き崩れるフリをした。
フリであって目が熱くなってるのは気のせいだから、本当に泣いたりとかしてないから。
「ったしを……元に、戻して!!」
次はドラゴンになれればなる予定。
まずは背中に力を込める。
するとすぐに背中から何かが出てくるような感覚がした。
それはどんどんと大きくなり、ビリビリと服を破いた。
「イヤァアアーーーッ!!」
黒くて硬くて大きな蝙蝠のような形の翼が、私の背中から勢いよくバサッと音をたてて出てきた。
外からのどよめきも大きくなる。
両手で服を胸元で押さえながら次は鱗だと腕に力を込める。
そうすればまたすぐに肩から手首にかけて黒い粒が出てくる感じがした。
私は本番に結構強いらしいと場違いな言葉が頭を過ぎる。
「イヤッ!助けてっ!ヤダヤダヤダヤダァァアアアーーー!!」
大きな鱗が肩から順に出てくる。
あとは身体を大きくするだけだ。
今まで練習で失敗し続けてきたけど、大丈夫。
今の私なら簡単にドラゴンになれる。
そう思えば嬉しさからか頬に温かい水が伝った。
私が完全なドラゴンの姿になれば、皆また私を殺そうとするのかな?
なんて……。
「もういい、休め」
突然半透明な壁に囲まれ、身体から力が抜けていくような感覚に陥る。
あと少しで完全なドラゴンになれるはずだったのにと、魔術をかけたであろう師匠を睨む。
だがすぐに力が入らなくなり、いつの間にか側まで来ていた平均より大きなもふもふした兎、アドルフに支えられる。
小さくありがとうと言えば、無理をするなと叱られた。
ドラゴンになれと言ったのはあんた達でしょという言葉は、疲れてもう出なかった。
あとは見守ることしか出来ないや。




