異界のドラゴン 10
天気は快晴。
これが所謂、絶好の決戦日和というやつなんでしょう。
日にちはあっという間に過ぎるもの。
これから宗教団を追い込みに行くなんて、なんだか現実味がない。
そんなことを考えていると皆が外に出てきた。
「いくぞ」
師匠がそう言うと、私達5人は森の木より高い位置まで浮かんだ。
師匠の魔術でいっきに神殿まで飛んでいくのだ。
神殿前の闘技場には今日も大勢の人が集まっておりゴミのようだとか思っちゃったけど、これから味方についてもらう人達だったと思い直す。
神殿に入るには先ず闘技場前の大きな扉から入るものだが、今は開けられていないので、私達は上から乗り込むことにした。
屋根なんてついてないからね。
ラルゴを観客席に一度降ろすために、私達も降り立つ。
「じゃあ皆、気をつけてね。言葉遣いにも気をつけて。皆が見てるからね」
ラルゴには主に集まった人達にこれから神殿の中で何が起こるかを立体映像で中継するという、重要な役をしてもらうのだ。
闘技場や神殿の扉を開けるのは簡単だが私達の邪魔をされても困るからだと師匠は言っていた。
じゃあ師匠でもよくね?とか思ってしまったのは内緒だよ。
「ラルゴくんも狙われるかも知れないんでしょ?気をつけてね」
「バレなきゃ大丈夫だよ。……ヤマダちゃんは無理、しないでいいから」
私を安心させるためにラルゴは背伸びして私と目線をあわせて頭をぽんぽんしてくれた。
可愛い。
ありがとう、私の癒し。
師匠も一、二言言葉を交わしてから私達にまた宙に浮く魔術をかける。
ドラゴンの姿だった時はこの闘技場は少し狭く感じたが、改めて人の目で見てみるとかなり大きかったことに気付く。
こんな所で奴らはドラゴン殺しを何度も見世物にしてきたのだ。
そしてあの神殿の中で召喚してはドラゴンではなかった多くの人達を殺しては魔物達に証拠を隠滅させてきたのだ。
「ヤマダちゃん、落ち着いて。変身しかけてる」
アドルフに腕を捕まれ言われてからハッと黒くなる思考から意識を戻す。
ひらひらの長い袖をめくってみると腕に鱗は出てはいなかったが、硬くなっていた。
こうして今簡単に硬くなったのだから、本番上手くいきそうだと良い方向に考える。
気持ちを一旦落ち着かせ師匠にもう大丈夫だと目で訴えてみると、伝わったのか身体が神殿の中に入る唯一の扉に向かう。
大きな扉の前に降り立てば師匠は呪文を唱える。
そうすれば少しずつ扉は開き神殿の中に光を差していく。
扉が開いた事に中にいた人達は驚き、騒ぎはじめる。
普通の人には開けれないよう魔術で固く閉めていたのに、簡単に開いてしまったのだ。
当然といえば当然なのかもしれない。
先に師匠と野郎が中へと入り、私とアドルフは合図されるまで待機。
驚く人々をよそに神殿のど真ん中にいるこの宗教団のリーダーであろう皺くちゃのお爺さん、といっても不老不死で何百年と生きてるらしい爺さんの前へと行く。
先に声を発したのは、爺さんの方だった。
「何じゃ勇者。やっとドラゴンを殺してきたのか。ほら渡せ!鱗があるんじゃろ?さあ渡せ!!」
連日の押しかけて来る人々のせいか、神殿の中だからか、はたまた酔っているせいか『穏やかに私達に語りかけてくる魔導司祭様』ではなく、怒鳴り散らす爺さんを見て勇者は静かに首を振った。
「魔導司祭、知っていたのか?ドラゴンは人だと」
「人……?ガハハハハッ!あんな化け物共が、人?ククッ……そういえば居たのぅ。昔人前で人の型になろうとしやがったガキが。魔術で押さえ込むのが、大変じゃった」
「ッ!!腐ってやがる!お前はそうやって自分の名誉のために人を「何が悪い!魔物は殺すものじゃろ!!」
勇者は腰につけていた剣を鞘から素早く抜き、爺さんに切っ先を向ける。
爺さんは怯えることなくただ見ていた。
剣を振り上げると周りがざわめきだた。
だが今にも切り掛かりそうな勇者を師匠は手で制し、勇者は仕方なく剣を下ろし構えた。




