異界のドラゴン 9
「よし。お前達の意思は伝わった。早速だが準備と行く。まずヤマダ。お前はドラゴンにすぐ変身出来るようになれ」
「ぇえ!?」
「えー、じゃない。お前はこの中で1番弱い事を自覚しろ。変身すれば身体は人より丈夫になるし脚で人を叩けばまだ戦える方だろう」
「一部だけじゃ……」
「刺されてろ」
私の言いたい事が分かった師匠にばっさりときられたので、ムッとなる。
一応ドラゴンになる特訓はアドルフに教えてもらってるからか、鱗が腕につくようにはなった。
だがこれ以上すると、大きくなって服が破けたりとか全裸とかになりそうで恥ずかしいじゃないか。
一度は大勢の人の前で暴れ回ったけど、あれはパニックになってたから気になら無かっただけで、今回は違う。
今回は自分の意思で全裸にならないといけないんだ。
「ヤマダちゃん。これはヤマダちゃん自身を守る為に必要な事なんだよ。だからこの計画を実行する日までに、ドラゴンに近い姿でいいからなれるようしてほしいんだ」
ラルゴにそう優しい声で諭されると弱い事を知ってての言葉ですかそれ。
溜息を吐き仕方ないかと思うことにして、頷いた。
「努力はするね」
「ねぇ、魔導司祭様が魔物ではない生き物を殺しているって、本当なの?」
「何を言っている!魔導司祭様がそんなことをするわけがない」
「そうだ!魔導司祭様はいつも私達に生きとし生きる者、全てが平等で平和で在るために無駄な殺生をしてはいけないと言っていただろう」
「だから魔導司祭様達はまず、自分達が生き物の肉を食べないのだろう」
「では、ドラゴンは殺して良いのか?」
「あれは、恐ろしい魔物だろう!国からも街に現れた魔物は殺せとの御達示だ。だから仕方なく、魔導司祭様達は勇者様を探し平和のためにと泣く泣く魔導司祭様直々にお願いするのだろう」
「だが何故いつも、魔導司祭様達にしか入る事の許されない神殿だけに、ドラゴンが現れるんだ?」
あれから数日後。
ラルゴとアドルフによると、街では宗教の事で騒ぎになってきているらしい。
ドラゴンは何故神殿から出てくる、他の国や街では魔物は聞くがあんな大きなドラゴンの魔物は聞いたことがない、魔物が昼に現れるものなのか。
沢山の噂が飛び交い連日宗教団のいる教会に大勢の人が集い、魔導司祭とやらに真実を求めた。
宗教団は言い訳しながらも神殿へと逃げて行っているらしい。
その間私は殆どの時間を変身に費やし、ラルゴとアドルフは噂を影から広めに行き、師匠は食事以外はいつも通り引きこもり、野郎は有名なので家事を手伝っていた。
「そろそろか」
皆揃っての食事中、ぽつりと師匠が呟いた。
一瞬何が?と聞きかけたが何となく察して黙る。
毎日夕飯の食事中は街の情勢の話と最近は日常化してきていた事を思い出す。
そして今日の2人の報告では、ついに決闘の場と決めていた神殿に宗教団の奴らが殆ど立て篭もったようだ。
私も最近は完璧ではないが、ドラゴンに変身出来てきている。
ついにこの時が来たのだ。
私は一旦フォークを皿の上に置いて師匠の次の言葉を待ってみた。
が師匠は何も言わず一瞬止まっていた食事を再開させた。
私は心の中ではあ?とか悪態をつきながら水を飲んだ。
「決行日は明後日。各自明日は休み体力を温存しろ」
師匠は自分の食事が終わるとそれだけ言って、自分の部屋に引きこもった。
私はそれを見送ってから最後の一口を口の中にほうり込んだ。
もう少し待っててくれても良かったんじゃないですか?




