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マンション型ダンジョンの101号室で特大のガバをかましたら、次の部屋が133号室だった  作者: 葦原エイ


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1話目 最初で最後の新ルート

「んじゃ、あたしが死なせてあげる」

「うん。お願いするよ」


 マンション型ダンジョンの101号室。


 出だしで特大のガバをかました僕は、左手だけ白骨化した少女精霊と優しく握手した。


「僕が自決用の薬を飲んだら、ひと思いに頼むね」

「オッケー。――あっ」


 骨の指を向けてくる少女。


「ねえ、せっかくだからポン吉のお話しして」

「いいよ。じゃ、軽くつまみながらで」


 僕はカロリーメイトを箱ごと渡すと、ここに来るまでの顛末を語り始めた。


  ◆


 昨日、世界に無数のマンションが出現した。


『見たか、ポン吉!? 正月からおめでたいな! 俺らラッキーズが行くしかねえぜ!』

「うん、規制が掛かる前にね」


 翌朝、代々木公園に出た2階建てマンションの前に、僕とLは登山装備で立っていた。


「うっし! 俺の調査では、異世界エレベーターで“101の精霊部屋”に行けるらしいな」


 Lが、天パをかきつつスマホを操作した。


「中で死んでも、すべてのマンションに2度と入れなくなるだけだってよ」

「そりゃ良かった。死ぬのはヤダからね」


 すでに何人かが挑戦しては、中央の扉から「死んだー!」「熊つえーよ!」と出てきていた。野次馬の拍手がシュールである。


「よし、次は僕らだ」

「ほい来た」


 僕はスマホで配信を開始した。エレベーターの扉は朱塗りで、△を押すと扉が開く。中は銀色だ。


「うはっ! マジで『異世界』ボタンがあるぞ」

「オモチャっぽい……」


 パネルには「9」から「0」まで並び、その下に赤いソレがあった。

 Lが押した瞬間、軽い浮揚感。すぐに重力を感じ、チーンと開くや。


「――うおおおおー! 精霊がいっぱいだー!」


 広い草原に、色とりどりのミニ精霊が飛び交っていた。


 エレベーター脇には看板もある。



――――――――――――――――――――


 101 精霊との出会い


・精霊を使役すること




――――――――――――――――――――



「ほっほお! 要は仲間をゲットだな、PKモンみたいに!」

「L~? 僕も外に出たいんだけど」

「お、悪い悪い」


 立ち位置を替わったLは、リュックを床に置いて漁り始めた。


「つーかこれ、つっぱり棒でドア押さえられるよな? 10フィート棒の代わりに持ってきてたんだぜ~……と」


 Lがドヤ顔で出した直後、そのウザさを隠すかのごとく、扉が閉まった。


 ブゥ……ン。


 エレベーターが呆気なく消える。


「――あれ? 僕、取り残された?」


 なーんてね……。よくある異世界への往来でしょ? すぐ戻ってくるよ。


 少しして、配信にコメントがあった。



L:やべえ、ポン吉! 合流できねえ!



「え? どのエレベーターでも来られるよね?」



L:お前のいない101にワープしたんだ!

L:そういや、他のパーティーと鉢合わせた報告とかもゼロだったな!



 世界各地から、観光名所なみに転移してくるのなら、本来は人でごった返してるハズだ。


「ってことは……、僕の冒険はここで終わってしまった?」



L:Exactly(そのとおりでございます)



「うるさいよ」


 やれやれ、特大のネタが入ったってのに、早くも終了か。全然活かせないのが底辺配信者の悲哀だよ、は~あ。





「アハハ~ッ! ドンマイ、お兄さん!」


 出し抜けに少女の声。


 キョロキョロするが、誰もいない。


「あぁ、ごめん。《透明》になってたわね」


 眼前の空気が揺らぐと、白いレインコートを着た10才ほどの女の子が現れた。


「残念賞で、あたしが姿を見せてあげる。嬉しいでしょ」

「君は……?」

「あたしは、ここのボス! 多分!」


 えっへんと腰に手を当てる少女。その仕草で、左手の肘から先が白骨化しているのが目に入る。指先の動きは滑らかだ。


「は~い、握手」


 スッと左手を差し出されたので、なるべくソフトに握り返す。――うわっ、やっぱヒンヤリしてる。


 パァァアア……。


「なっ!」


 空から光が降り注いできた。慌てて見上げると、“次の部屋は133”の文字が大写しになっている。


「これ、は……!」

「アハッ、すっご~い! やっぱあたしって特殊だったのね~!」


 少女は小躍りした。


 看板にも目をやると、文字が追加されている。



――――――――――――――――――――


 101 精霊との出会い


・精霊を使役すること

・上級精霊を使役すること



――――――――――――――――――――



「キャ~! あたし上級だって~!」

「――君はどうやら、普通と違うみたいだね」

「えっへっへー」


 フードの中で頭をかく少女。


「でも、あたしね? ずっと使役されるってのもイヤだったのよ」

「――なるほど。それで僕の前に現れたのか」

「そっ! あなたってば、エレベーターで移動できないでしょ? すぐにリタイアだもんね~」


 コメント通知がぽこぽこと止まらない。Lだろう。



L:スマホを止めるな! 回せ回せ!!

L:ぶん回すなアホ!

L:画面酔うだろオロロロロ



「やかましい。一人しか見てないから配慮しないぞ」



L:じゃあ、骸骨少女(仮)に質問攻めだ!



「それはそうだね」


 しかし少女は、「スゥ」という自分の名前しか覚えていなかった。いつからいるのか、他の部屋はどうなってるのかなど、全て不明。


「かくして僕は、質問ネタも底を尽き、自決薬を取り出すに至ったというわけさ」

「ふ~ん」


 気付けばスゥは、カロリーメイトをすっかり平らげていた。


「超おいしかった。もうないの、ポン吉?」

「うん」

「じゃあ、さよなら~」

「現金な精霊だなあ」


 僕はスマホを見た。


「L、他に何か聞きたいことある? そろそろ帰るけど」



L:うーむ、さすがに全てを知らぬ存ぜぬではなあ……

L:アレ?

L:お前、透明になってきてね?



「え」


 手を翳しても、スマホが透けて見える。


「これ、スゥの能力?」

「んーん、あたしポン吉に使ってないわよ」



L:おいおい! ならワープだぜ!

L:待てば海路の日和ありだオラァ!



「それじゃあ……、133に!?」



L:いけいけ、GOGO!



 直後、体が溶けたような感覚に襲われたのち、周りの景色がガラリと変化した。



――――――――――――――――――――


 133 耳





――――――――――――――――――――



「おぉーっ、本当に133に来てる……って、アレ?」


 見ると、スゥが近くでぷるぷる震えていた。


「なんであたしも来てるのー!?」

「そりゃ、仲間だからね」

「のんびりしたかったのにー! ねえ、戻ろうポン吉!」

「エレベーターないってば」

「あうぅ……ちくせう」


 感情豊かな精霊だなあ。




 ――人類最初の新ルート。


 のちにそれは、“最後の攻略ルート”と呼ばれることとなる。


 このときの僕は、まだ知らなかった。


 未来の人類が、僕を待ってることを。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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