第3話:『深夜の学校のテケテケ』と油圧式台車
ご覧いただきありがとうございます!
前回の「自動販売機」編もお付き合いいただき感謝です。シオンたちの武器選びがどんどん物騒(?)になってまいりましたが、今回はさらにエンジン全開でお届けします。
さて、第3話のターゲットは学校の怪談の定番「テケテケ」。足がないならまさかのスピード勝負で挑みます。
それでは第3話、どうぞ!
「おい、次の依頼……本当にこれ、俺たちがやる仕事なのか?」
ギルドの古いカウンターの端で、レイが震えながら羊皮紙の依頼書を突き返してきた。
そこに書かれていた文字に、俺――シオンも思わず目を疑う。
【クエスト概要】
対象:都市伝説級怪異『下半身のない少女(通称:テケテケ)』
依頼内容:旧校舎の廊下にて対象を捕捉し、その移動スピードを上回って無力化せよ。
難易度:C+ランク
備考:逃げ遅れた場合、身体が綺麗に真っ二つに分断されます。
「テケテケって、あの、腕だけで凄まじいスピードで追いかけてきて、引きずった下半身から血を撒き散らすやつだろ!? 剣とか魔法でどうにかなる相手じゃないぞ!」
レイが真っ青になりながら叫ぶ。
その通り、「テケテケ」は日本全国の学校の怪談として語り継がれる最凶最悪の移動系怪異だ。足がないにもかかわらず、新幹線のスピードに匹敵するほどの速さで這いずり回り、出会った人間の下半身を鎌のようなもので切り裂くという。
「真っ当に走って逃げたら一瞬で両断されるな。だからこそ、頭を使うんだよ」
俺は鞄の中から、あらかじめ用意しておいた「ある巨大な機材」のパーツを確認しながらニヤリと笑った。
深夜零時過ぎ。
俺たちは静まり返った母校ならぬ、お化け屋敷と化した廃校の旧校舎の廊下にいた。
ピリピリとした冷気が肌を刺す。
窓の外からは不気味な虫の音すら聞こえず、ただ静寂だけが支配している。
「……来るぞ」
レイが息を呑んで耳を澄ませた瞬間、遠くの暗がりから、ぞっとするような音が響いた。
――テケ、テケ、テケ、テケ、テケ、テケ、テケ、テケッ!!!
「き、来たぁぁぁぁーーっ!!」
レイが悲鳴を上げる。
廊下の曲がり角から、真っ黒な髪を振り乱した青白い顔の少女――下半身が綺麗に欠損した『テケテケ』が、信じられないほどの超高速で腕だけで這いずりながら突進してきた。
床を引っかく爪の音が、まるで耳をつんざく爆音のように響き渡る。
「シオン! 早い、早すぎるぞ! 逃げるしかねぇ!」
「馬鹿野郎、あいつより速く人間が走れるわけないだろ。準備しろ!」
俺たちは廊下の真ん中に設置しておいた、巨大な「油圧式台車(リフト付きのプロ用台車)」のブレーキを外した。
さらに、その台車の荷台には、ホームセンターで調達してきた「業務用ロケット花火の束」と、怪異を惹きつけるための「塩漬けの生肉」が括りつけてある。
テケ、テケ、テケ、テケ、テケ、テケ、テケ、テケッ――!!
「キエエエエエエエッ!!」
獲物を見つけたテケテケが、血走った目を剥き出しにして猛烈な勢いで迫ってくる。距離はすでに十メートルを切っていた。
「今だ、レイ! 花火に点火しろ!」
「オラァァァッ!!」
レイが震える手でチャッカマンを押し付けると、ボウッという轟音と共に、台車に括りつけられたロケット花火が凄まじい勢いで点火した。
ドゴゴゴゴゴゴッ――!!!
化学の力と火薬の爆発力が生み出した超推進力が、重い油圧式台車を猛烈な勢いで前方に押し出す。
それはまさに、サーキットを走るレーシングカーの如き爆速だった。
「なっ――!?」
テケテケの赤い目が、自分を追い抜いて、あるいは自分以上のスピードで目の前を駆け抜けていく「謎の爆走台車」を捉えてフリーズした。
怪異にとって、自らの移動速度(テケテケ音)こそが最大の誇りであり、恐怖の象徴だった。
しかし、そのプライドである「スピード」が、人間の作った機械の爆発力によってものの見事に塗り替えられたのだ。
テケ……? テケ……?
少女の怪異は、自分の最高速度を遥かに超えた爆走台車を目の当たりにし、動きをピタリと止めた。
「速さ」で負けたショック(概念的なパニック)により、テケテケの存在そのものが不安定に揺らぎ始める。
「とどめだ!」
俺は用意していた「強力な清め塩の塊」を、目の前で呆然としているテケテケの頭上に思い切り投げつけた。
爆走する台車の風圧と、塩の浄化エネルギーを浴びた瞬間、テケテケの体はパキパキとガラス細工のように亀裂が入り、
「ア……リエナイ……ワタシヨリ……ハヤイ……ッ!」
という断末魔の叫びを残して、夜の闇の中にサラサラと霧散して消えていった。
静まり返った廊下には、まだかすかに火薬の匂いと、油圧式台車のタイヤの摩擦熱だけが残されていた。
翌朝、ギルドのカウンター。
俺たちはぐったりと疲れ果てた顔で、受付の男から無事にクエスト完了のスタンプをもらった。
「お見事。まさか怪異とスピード勝負をして勝つ奴がいるとはね」
受付の男が、相変わらず冷めた目をしながら次の羊皮紙を取り出す。
「次は何だ……? もう変な道具を買う金がないぞ」
レイがぐったりしながら尋ねると、男はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「次は……『真夜中のプールに現れる、絶対に振り返ってはいけない首なしの人魚』の討伐依頼だ。準備はいいかい?」
俺たちは顔を見合わせ、苦笑しながらも、新しい武器と……今度は「頑丈な目隠しと耳栓」を買いに、街のショップへと向かうのだった。
第3話、最後までお読みいただきありがとうございました!
ついに怪異とスピード勝負(?)を繰り広げ、花火と油圧式台車で物理の暴力を見せつける回となりましたがいかがでしたでしょうか。
次回は第4話、「真夜中のプールに現れる、絶対に振り返ってはいけない首なしの人魚」のお話です。振り返ったら終わりという定番の恐怖に、今度はどう立ち向かうのか……?
「面白かった!」「続きも読みたい!」と思っていただけましたら、下の【ブックマーク登録】や、☆☆☆☆☆の【評価(星評価)】をポチッと押していただけると、めちゃくちゃ励みになります!
どうぞよろしくお願いいたします!




