監査局での大逆転! 押収された違法薬物(ただの健康茶)で優雅なティータイムを
監査局での大逆転! 押収された違法薬物(ただの健康茶)で優雅なティータイムを
ルナミス帝国地方監査局。
石造りの厳格な建物の奥にある、最も広い監査長室の扉を、私たちは静かに開けた。
「――ですから監査長殿! この女はポポロ村で違法な薬物を密造し、村人たちをたぶらかしていた極悪人なのです!」
部屋に入るなり、ザックスの得意げな大声が鼓膜を打った。
執務デスクの向こう側に座る、白髪交じりの疲れ切った監査長に対し、ザックスと騎士団長がこれ見よがしに『赤紫色の妖しい粉末』が入った麻袋を突きつけている。
「おお、来たか大罪人め! 自首しに来たのなら褒めてやろう!」
私たちに気づいたザックスが、下劣な笑みを浮かべて振り返る。
アルトさんはビクッと肩を跳ねさせ、オドオドと私の後ろに隠れるように身を縮めた。
「か、監査長……っ、お疲れ様です。僕の担当している薬局で、その……トラブルがありまして……」
「アルトくんか。まったく、君が担当する区域で違法薬物とは。監査局の顔に泥を塗る気かね」
監査長がため息をつきながら眉間を揉む。どうやら監査長自身は買収されてはいないようだが、騎士団長までが証人として同席しているため、完全にザックスたちの言葉を信じ切っているようだ。
「監査長殿、証拠はこの通りです! この毒々しい色、嗅ぐだけで頭がクラクラする甘い匂い。間違いなく、法で禁じられた精神作用のある違法麻薬です!」
ザックスが麻袋を掲げる。騎士団長も深く頷いた。
「我々騎士団が、この女の薬局の調剤室から直接押収した。動かぬ証拠である。直ちにこの女を投獄し、ゴルド商会に多大な迷惑をかけた損害賠償として、薬局の権利と財産を全て差し押さえるべきだ!」
二人の完璧な連携(という名の茶番)に、アルトさんは「あぁ……そんなぁ……」と頭を抱えて震え上がった。
ザックスは勝利を確信し、私を見下して醜く顔を歪める。
「ふはははっ! どうだ小娘、これが権力というものだ。大人しく俺の奴隷になっていればよかったものを、馬鹿な奴め!」
監査局の部屋に、悪党の下劣な笑い声が響き渡る。
私はゆっくりと息を吐き、タローマン製のエプロンドレスのポケットに手を入れた。
「……監査長様。一つ、よろしいでしょうか」
一歩前に出た私の凛とした声に、部屋の空気がわずかに変わった。
「その『証拠品』が本当に違法な麻薬かどうか。私に、証明する時間をいただけませんか」
「証明だと? 悪あがきはやめろ!」
「良いでしょう。ただし、妙な真似をすれば即座に騎士団に斬らせますよ」
監査長が許可を出すと、私はペコリと頭を下げた。
「ありがとうございます。アルトさん、お湯の入ったポットと、ティーカップを三つ用意してちょうだい」
「ひぃっ、は、はいぃっ!」
アルトさんが慌てた様子で、給湯室から来客用のティーセットを運んでくる。
私はザックスから証拠品の麻袋をひったくると、その毒々しい赤紫色の粉末を、ティーポットの中にバサリと入れた。
「なっ!? 貴様、証拠隠滅を図る気か!」
「黙って見ていなさい」
私はポットにお湯を注ぎ、チートスキルを発動した。
「【成分解析】――からの、【錬成解除】」
指先から微弱なマナを流し込む。
すると、どうだろう。部屋中に充満していた『頭がクラクラするような甘い匂い』が、お湯と混ざった瞬間にスッと消え去り、代わりに……大自然の森の中にいるような、清涼感のある爽やかなハーブの香りが漂い始めたのだ。
「な、なんだこの香りは……?」
監査長が目を丸くする。
私はポットを軽く揺らし、三つのティーカップに液体を注ぎ分けた。
赤紫色だったはずの粉末は、お湯に溶けると美しい琥珀色の液体へと変化していた。
「どうぞ。これが違法麻薬の正体です」
私がカップを差し出すと、監査長は恐る恐る口をつけ――カッ、と目を見開いた。
「こ、これは……ッ!?」
「監査長殿! 吐き出してください、毒かもしれん!」
「違う! 違うぞ騎士団長……なんだこれは、信じられん!」
監査長はゴクゴクと一気にカップを飲み干し、感極まったように立ち上がった。
「美味い……! それに、ここ数日の徹夜仕事で重かった腰の痛みが消え去り、視界が恐ろしくクリアだ! 腹の底から活力が湧いてくるぞ! ミオ君、これは一体!?」
「ポポロ村特産の『ポポロ・タバコ』の葉を特殊な温度で焙煎し、『陽薬草』の根っことブレンドした、ミオ薬局特製の『滋養強壮茶』です。……見た目と粉末の匂いがキツいのは、栄養素を限界まで濃縮しているからですけどね」
私はふふっと笑い、自分の分のカップを優雅に一口飲んだ。うん、完璧な出来栄えだ。
「い、違法薬物では……ないだと?」
ザックスがワナワナと震えながら、信じられないものを見る目で琥珀色の液体を睨みつける。
「馬鹿なっ、あんな毒々しい粉末が茶なわけが……っ!」
「私の【成分解析】スキルは、帝国魔法院の鑑定精度を上回ります。信じられないなら、今すぐ専門の魔法使いを呼んで鑑定させてみてください。……どこをどう調べても、ただの健康茶以外の成分は出ませんから」
私の完璧な『科学と魔法』による論破。
ザックスが持ち込んだ「違法薬物」という大前提が、たった一杯のハーブティーによって木端微塵に粉砕された瞬間だった。
「……ザックス殿。騎士団長」
監査長の低い声が部屋に響く。
「これは一体、どういうことかね。君たちは、ただの健康茶を違法薬物だとでっち上げ、無実の村人の店を不当に家宅捜索し、商品を破壊したというのか?」
「ち、違う! これは何かの間違いだ! 俺は確かに、この女が裏で薬を作っているという確かな噂を……ッ!」
「噂、ですか」
――その時だった。
部屋の隅で、ガタガタと震えていたはずの気弱な法務官が、低く、底冷えするような声を発したのは。
「確固たる証拠もなく、信憑性のない噂だけで民間人の店を破壊する。それが、誇り高きルナミス帝国騎士団と、大商会様のやることですか」
アルトさんが、ゆっくりと顔を上げる。
彼の顔からは、先ほどまでの怯えたような表情は完全に消え去っていた。
丸眼鏡の奥の瞳は、まるで獲物を追い詰めた極北の狼のように冷酷な光を放っている。
「ア、アルトくん……?」
「お見事でした、ミオさん。あなたの無実は、今ここで完璧に証明されました」
アルトさんは私に向かって優雅に一礼すると、スーツの埃を払いながら、ザックスたちの前へと歩み出た。
「な、なんだテメェ……下っ端役人が、偉そうに……!」
「偉そうにする権利はありますよ。なにせ僕は、この監査局の人間ですから」
アルトさんはスーツの懐から、黒い革張りの手帳――あの『裏帳簿』を取り出し、デスクの上にパサリと放り投げた。
「不法侵入、器物破損、無実の市民に対する名誉毀損および恐喝。これだけでも十分な実刑ですが……本番はここからです」
アルトさんが眼鏡をクイッと押し上げる。
その仕草は、悪徳商会の終わりの始まりを告げる死神のようだった。
「ゴルド商会幹部、ザックス。そしてポポロ村地方騎士団長。……あなたたちが過去五年間に行ってきた、大規模な脱税と横領、そして裏金の癒着。その全ての証拠が揃いました」
ザックスの顔から、一瞬にして全ての血の気が引いた。
「さぁ、哀れな悪党ども。逃げ場のない『合法的ざまぁ』のお時間ですよ」
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第6話、いかがでしたでしょうか!?
ミオのチート能力が大爆発!
ドヤ顔で持ち込んだ違法薬物(笑)が、お湯を注いだ瞬間に「ただの美味しい健康茶」に変わる瞬間、ザックスたちの顔面蒼白っぷりが最高ですね!
そして、ヒロインが完璧に無実を証明したのを見届け、ついに【極悪ヘタレ法務官・アルト】のスイッチが完全に入りました!!
「合法的ざまぁのお時間ですよ」
怯えていたヘタレからの、この冷酷な策士への変貌。ギャップ萌えの極みです。
次回、アルトの【容赦のない法廷無双】が始まります!
一切の反論を許さない、ロジカルでえげつない社会抹殺をお楽しみに!
【読者の皆様へ、作者から全力のお願いです!】
「健康茶のくだりスカッとした!」「アルトかっこよすぎる!」「いけー!ザックスをボコボコにしろ!」
と、少しでも胸がスカッとしていただけましたら……
ページ下部の【☆☆☆☆☆】の星を【★★★★★】に押して、アルトの極悪な反撃を後押ししていただけないでしょうか!?
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どうか、次回の大逆転劇もお見逃しなく!




