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辺境のチート薬師ですが、気弱な法務官(実は極悪策士)に溺愛されています〜ヤンキー聖獣と悪党を合法的に社会抹殺〜  作者: 月神世一


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決戦前夜の星空と、哀れな悪党たちの家宅捜索

決戦前夜の星空と、哀れな悪党たちの家宅捜索

 ザックスを嵌めるための『偽装麻薬(中身は健康茶)』が完成した翌日の夜。

 私たちは薬局の裏手にある縁側に並んで座り、ポポロ村の澄んだ星空を見上げていた。

「いよいよ、明日ですね」

 アルトさんが、私の淹れた陽薬茶の入ったマグカップを両手で包み込みながら、静かに口を開いた。

 彼の横顔は、いつもの冴えない丸眼鏡の奥に、研ぎ澄まされた刃のような鋭さを秘めている。

「ゴルド商会の動きは?」

「予定通りです。泥沼夫妻が流した『ミオが違法薬物を密造している』という噂は、見事にザックスの耳に入りました。彼は今頃、自分の手柄にしようと息巻いて、買収済みの地方騎士団と明日の『家宅捜索』の打ち合わせをしている頃でしょう」

 アルトさんはふふっ、と冷たい笑みをこぼした。

「馬鹿な男です。自分の首を絞めるための罠だとも知らずに、喜んでギロチンの台座を磨いているんですから」

 その氷のように冷酷な横顔を見ていると、ふと、彼がいつも口にしている言葉を思い出した。

『争いごとは嫌いです』

『血を見るのは苦手なんですよ』

 彼は本心からそう言っている。事実、アルトさんは自分から誰かを傷つけようとしたり、無闇に権力を振りかざしたりすることは一度もない。

 ただ、自分の『大切なもの』が理不尽に脅かされた時だけ、その並外れた頭脳を一切の容赦なく『敵の破滅』のためにフル稼働させるのだ。

「……ねぇ、アルトさん。怖くないの?」

 私は夜風に揺れる星空を見つめながら、ポツリとこぼした。

「相手は大商会と、騎士団よ。もし作戦が失敗して、あの手帳(裏帳簿)の存在がバレたら、アルトさんこそただじゃ済まないわ。暗殺されるかもしれないのに」

「怖いですよ。僕は痛いのも、暴力も大嫌いですから」

 アルトさんはあっさりと認めて、困ったように眉尻を下げた。

「でも、ミオさんが僕の前からいなくなってしまうことの方が、ずっと怖いです」

 その真っ直ぐな言葉に、私は息を呑んだ。

 アルトさんはマグカップを縁側に置くと、私の手をそっと握りしめた。

「僕は、争いは嫌いです。でも……あなたが毎日笑って薬を作り、僕に美味しいお茶を淹れてくれる。そんな温かい『居場所』を守るためなら、僕は喜んで悪党になります」

 彼のペンダコのある指が、私の指先に優しく絡みつく。

「僕は、一度掴んだものは絶対に離しませんから。……最後まで、僕を信じてくれますか?」

 夜闇の中で、アルトさんの瞳が熱を帯びて私を射抜く。

 気弱な法務官が見せた、静かで、けれど強烈な独占欲。私の心臓が、まるで思春期の少女のようにドクンと大きな音を立てた。

「……ええ。信じてるわ、私の最強の共犯者さん」

 私が微笑んで彼の手を握り返すと、アルトさんは心底ホッとしたように、いつものヘタレな笑顔に戻った。

***

 そして、運命の翌日。昼下がり。

 ガシャァァァンッ!!

 薬局の入り口のガラス扉が、無惨に蹴り破られた。

「ポポロ村地方騎士団である! 薬師寺澪、違法薬物密造の容疑で家宅捜索を行う!」

 店内に雪崩れ込んできたのは、重武装をした十数人の騎士たちだった。

 そしてその後ろから、我が物顔で歩いてきたのは――。

「ふはははっ! 言っただろう小娘、俺に逆らうとどうなるか教えてやると!」

 ゴルド商会の幹部、ザックスだった。

 彼は嫌悪感を隠そうともしない目で店内を見回し、カウンターの奥で身を寄せ合っている私たち(私と、非番を装って店にいたアルトさん)を指差した。

「こいつは、村の裏で法に触れる恐ろしい薬を作り、荒稼ぎをしている極悪人だ。騎士団長殿、徹底的に探し出してくれ!」

 ザックスにすり寄られ、恰幅の良い騎士団長が傲慢に頷く。彼もまた、ザックスの裏金で買収されているのだろう。

 騎士たちは土足で店内に上がり込み、陳列棚の薬瓶を次々と床に叩き落としていく。

「や、やめてくださいっ! ミオさんはそんなことしていません!」

 アルトさんが、ガクガクと足を震わせながら騎士たちにすがりついた。

「ふんっ、邪魔だ下っ端役人!」

 騎士の一人がアルトさんを乱暴に突き飛ばす。アルトさんは派手に床を転がり、私は慌てて彼に駆け寄った。

「アルトさん!」

「大丈夫です……それより……」

 アルトさんは私に抱き起こされながら、丸眼鏡の奥でチラリと『調剤室』の方へ視線を向けた。

 ザックスが、自ら調剤室のドアを蹴り開けたところだった。

「おや……? こいつは怪しいな」

 調剤室からザックスの歓喜に満ちた声が響く。

 彼が手に持って出てきたのは――昨晩、私が徹夜で錬成した『赤紫色の妖しい粉末(偽装麻薬)』が入った麻袋だった。

「見ろ、騎士団長殿! この毒々しい色、そして嗅ぐだけで頭がクラクラするような甘い匂い……! 間違いない、こいつが噂の違法薬物だ!」

 ザックスが麻袋を掲げると、騎士団長も「おお、見事な証拠だ」と満足げに頷いた。

「これで言い逃れはできまい、小娘! 貴様はこの場で現行犯逮捕、そして全財産は没収だ!」

 ザックスの勝ち誇った顔。

 私は彼を睨みつけ、アルトさんは絶望したように顔を覆って震えていた。

「あぁ……そんな、ミオさんが逮捕されるなんて……っ」

 アルトさんの悲痛な声に、ザックスは腹を抱えて笑った。

「はーっはっは! 間抜けな役人め! 俺はこの足で、ルナミス帝国地方監査局にこの証拠を持ち込んでやる! お前も監査局の人間なら、せいぜいこの小娘が裁かれるのを特等席で見ているんだな!」

 ザックスは証拠の麻袋を大切そうに抱え、騎士団を引き連れて意気揚々と店を出て行った。

 彼らの姿が完全に見えなくなり、足音が遠ざかったのを確認して。

「……ふぅ。やれやれ、相変わらず手荒な連中ですね」

 先ほどまで絶望に打ちひしがれて震えていたアルトさんが、パタパタとスーツの埃を払いながら、何事もなかったかのように立ち上がった。

「お怪我はないですか、ミオさん?」

「ええ、平気よ。アルトさんこそ、また突き飛ばされて痛くなかった?」

「あの程度、受け身を取ったので余裕ですよ」

 アルトさんは落ちていた丸眼鏡を拾い上げ、フッと息を吹きかけて汚れを拭う。

 そして眼鏡を掛け直した彼の瞳には、全ての盤面を支配した策士の、底冷えするような笑みが浮かんでいた。

「これで、第一段階はクリアです。あいつらは自らの手で『無実の証明』を監査局に持ち込み、同時に『不当な家宅捜索』という罪を重ねました」

 アルトさんは、スーツの懐に忍ばせている『裏帳簿』の感触を確かめるようにポンと叩いた。

「さぁ、ミオさん。僕たちのホームグラウンド(監査局)へ行きましょうか。哀れな悪党どもの首がギロチンから落ちる瞬間を、特等席で見物しなければなりませんからね」

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第5話、いかがでしたでしょうか?

前半は、アルトの【極悪な中にもある誠実さと独占欲】が爆発! 「一度掴んだものは絶対に離しません」という言葉に、ミオも思わずドキッとしてしまいましたね。

そして後半、ついにザックスたちが罠に飛び込んできました!

ドヤ顔で『健康茶』を証拠品として押収していく悪徳商会と騎士団。そして、怯えた演技でそれを見送る極悪アルト(笑)。

ここから先は、もう彼らの逃げ道はありません!

次回から、舞台はついに監査局へ!

ザックスが勝ち誇った直後に突き落とされる、怒涛の【合法的ざまぁ】がスタートします!

ミオの錬金術による完全論破と、アルトの裏帳簿による社会抹殺をお楽しみに!

【読者の皆様へ、作者から全力のお願いです!】

「アルトの独占欲たまらん!」「健康茶ドヤ顔で押収するザックス草」「いけー!やったれアルト!」

と、少しでもスカッとしていただけましたら……

ページ下部の【☆☆☆☆☆】の星を【★★★★★】に押して、いよいよ始まる『ざまぁ』の開幕を祝っていただけないでしょうか!?

また、【ブックマークに追加】を押していただけますと、作者が歓喜の舞を踊りながら執筆速度を加速させます!

皆様のポチッという応援が、ザックスに叩きつける最高の『有罪判決』になります!

どうか、次回の法廷バトルもお見逃しなく!

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