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学校の死神(改)  作者: 化草野菜子
第一章 雨花のトナリ
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2/20

音楽室の噂

 この日は真面目に部活の朝練を終えて、雨花は他の女子バレー部のみんなより、一足早めに教室に上がった。

 教室にはもう女子バレー部以外の生徒たちみんながいて、それぞれ談笑したり机に伏していたり、思い思いに過ごしている。

 そして、もちろん草山良緒の姿も……。

 普通に他の男子たちと、仲良さそうにつるんでいる。



 

 今日は休み明けのテストで、時間はあっという間に過ぎていった。

 ところが、雨花はまだ夏休みの提出物が少し終わっておらず、六時間目の掃除の担当決めのときも、必死に残りを片付けていた。

 そしてやっと提出物が終わり、深い溜息をついて、黒板の掃除決めの表を見た雨花はぎょっとした。

 提出物に必死でどこにも手を挙げなかった雨花は、音楽室で女子男子それぞれ一人ずつの場所に、草山良緒と揃って担当になっていたのだった。

 幸い、掃除替えは体育祭が終わってからだが……。 



 

 いつも音楽室が最後に残るのには、わけがあった。

 音楽室は校舎の一番西側の一階にある美術室前の階段を、最上階の三階まで上がったところの、孤立した場所にある教室だ。

 教室からかなり離れているというのも理由の一つだが、そこには変な噂があるのだ。

 音楽室には、小さな棚の近くの壁に、少し大きな穴がある。

 そして、その穴はポスターで塞がれおり、噂ではポスターの裏に御札が貼られていると言われている。



 

 これは四年前、雨花がまだこの学校にいないときの話らしい……。

 一人の男子生徒が面白半分にこのポスターを剥がし、穴に手を突っ込んだ際、な(・)に(・)か(・)に手を掴まれたそうだ。

 それから数日後にその男子生徒は、突っ込んだ方の右手に大やけどを負ったらしい。

 

 そしてつい最近の一学期頃、雨花の学年の別クラスの男子が、この噂を面白がって、音楽室の例の穴のポスターを少し剥がし、隙間から手を入れたのだ。

 その男子もやはり、なにかに手を掴まれた感覚がして、その手を三日後に骨折するということがあった。

 それからはみんな怖がって、音楽室には授業以外で近寄らなくなったのだ。



 

 雨花は絶望的な気分になった。

 怖い話は大好きだが、こういうのはわけが違う。

 つい最近実際に起こったことだし、自分だけが知らない謎の人物・草山良緒と二人っきりで掃除をしなければならないのだ。

 本来なら隣のクラスからも男女一名ずつ掃除に加わるはずだが、隣のクラスには二名の不登校の生徒がいて、おそらく音楽室の枠にはその生徒二人が割り当てられている。

 音楽室の掃除自体は楽なので、先生たちも黙認している。

 いつもそのパターンだ。

 

(ああ……これからどうなるんだろう……)




 

 それから体育祭までは、あっという間に過ぎていった。

 暑い中厳しい練習を乗り気って、今年も雨花の白組が勝利を収め、疲労と達成感の中、体育祭は幕を閉じた。

 草山良緒や掃除のことをもうだいぶ忘れかけて、辛い体育祭も終わり、雨花は楽しみな文化祭の準備が始まるのを喜んでいた。 



 

 今は四時間目の数学の授業中だ。

 雨花は大嫌いな数学の授業が早く終わらないかと思いつつ、眠気と闘いながらノートをとっていた。

 まだ席替えはしていないので、相変わらず真ん中の一番後ろの席で、草山良緒と隣同士だ。

 と、不意に草山良緒の机から消しゴムが転がり落ちた。

 雨花はぴくっと顔を上げた。

 相手は消しゴムが落ちたことに、全く気づいていない。

 雨花はそわそわした後、少し躊躇いながらも勇気を出して消しゴムに手を伸ばし、向こうの机にひょいと置いた。

 

「おっ、ありがと」

 

 草山良緒はそれに気づいて、雨花に小声で礼を言った。

 一応雨花にとっては初めての会話(?)だ。

 雨花は内心ほっと胸をなで下ろした。



 

 それからやっと授業が終わり、待ちに待った昼食の時間だ。

 雨花がみんなで楽しく弁当を食べていると、不意に美奈がなにか思い出したようにニヤッと笑い、

 

「雨花~、今日から新しい掃除場所だねぇ!」

 

 と意地悪く言った。

 

「……えっ?」

 

 雨花は最初なんのことかわからずに、ポカンと口を開けた。

 しかし、じわじわと不安と一緒に記憶が蘇ってきた。

 

「ああー! そうだった!」

 

 雨花が突然大声を上げたので、一緒に食べていた友人たちは驚いて目を丸くした。

 

「びっくりしたあ」

 

「うわぁ、やだなぁ……本当にどうしよう……」

 

 雨花ががっくりと肩を落として、ぶつぶつとつぶやいているのを見て、美奈は面白がり追い打ちをかける。

 

「本当どうすんの? 二人っきりだよぉ~かわいそぉ~!」




 

 そしてとうとう、清掃オリエンテーションの時間がやってきた。

 清掃オリエンテーションとは新しい掃除場所に変わるとき、その場所の担当の班長や係を決めるための時間だ。

 雨花が清掃オリエンテーションを行う場所に向かおうとしていると、

 

「おい、音楽室の掃除ってどこに集まるん?」

 

 と草山良緒に呼び止められた。

 

「ぅえ? えっと美術室……」

 

 雨花は、声が裏返りそうになりながら答えた。

 

「ああ、そう」

 

 草山良緒は素っ気なくそう言うと、走り去って行った。

 その後ろ姿を見送りながら、憂鬱な気分で溜息をついていると、今度は美奈が背後から、

 

「雨花~! 頑張れ~♪」

 

 と雨花の頭をポンポンと叩くと行ってしまった。

 雨花はぐぐっと顔をしかめて苦悶の表情を浮かべると、美術室に向かって重い足取りで歩き出した。

 

(帰りたい……)



 

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