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学校の死神(改)  作者: 化草野菜子
第一章 雨花のトナリ
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意地悪な男子

 美術室に着くと、もうほとんどの生徒たちが集まっていた。

 もちろん、草山良緒も既に椅子に座っている。

 雨花を見て、美術室の掃除担当の千代子が早速手を振ってきた。

 雨花も手を振り返しながら、草山良緒の後ろの方に、少し距離を開けて席に座った。

 千代子は雨花のところへやって来ると、

 

「いいなぁ、雨花!」

 

 と小声で話しかけてきた。

 

「え! なにが?」

 

 なんのことかさっぱりわからない。

 今のところ、雨花にとっては悪いことしか起きていないが……。

 

「だって、ラオと二人っきりじゃん! きゃー! もう、本当羨ましい。でも、私怖いの苦手だからさぁ……」

 

 千代子は頬を赤らめて、本当に羨ましそうにしている。

 

「はは……私は今すぐ帰りたいんだけど……」

 

 雨花は苦笑いしながら、独り言のようにつぶやいた。

 それと同時に、この教室に集う生徒たちを管轄する美術の白滝先生が入ってきた。

 千代子は急いで席に戻った。

 

(へぇ、千代子ってあの人のことが好きなんだ……)

 

 雨花は草山良緒の後ろ姿をぼーっと眺めた。



 

「さぁ、それじゃあ始めましょうかね」

 

 白滝先生ののんびりとした声がかかり、生徒たちの号令の声が上がる。

 白滝先生はいつものほほんとした雰囲気の、年配の女性の先生だ。

 

「それじゃあ、各自で決めてくださいな」

 

 先生はそれぞれの掃除のグループに、反省カードを配っていく。

 これに班長が誰かなどを書き込むのだ。

 そして掃除が終わるごとに、班長はこのカードに感想や気づきなどを書いて、職員室前のボックスに提出しなければならない。

 白滝先生が雨花の前に反省カードを置くと、草山良緒はくるっとこちらに向きながら立ち上がり、目の前の椅子に腰を下ろした。

 

「なんだ、音楽室の掃除って二人しかおらんのか」

 

「あっ、うん、そうだね」

 

 雨花は目の前に座られて内心慌てながら、もごもごと答えた。

 元々かなりの人見知りだ。

 中学生になって、なんとか女子とは気軽に話せるようになったが、男子はまだ超がつくほど苦手だった。

 彼女にとっては、男子はもうなにをどう話していいのかわからないのだ。

 

(あああ、帰りたい! だいたい二人なのに班長もクソもないじゃん……)

 

 雨花は必死に目を合わせないように、目の前の反省カードを穴が開くほど見つめた。

 

「おい! 班長とかどうするか?」

 

 そんな彼女を他所に、草山良緒はぱっと反省カードを取り上げる。

 

「えっ、どうする?」

 

 雨花は相変わらずぎこちなく答える。

 すると、草山良緒はさらりとこう言った。

 

「んじゃ、お前班長ね」

 

「……えっ?」

 

 雨花は突然の宣告に呆気にとられた。

 草山良緒は既に雨花の筆箱から、勝手にシャープペンシルを取り出してカチカチと芯を出している。

 雨花はすぐに我に返って、

 

「はっ? ちょっと待って、班長とか嫌だ!」

 

 と、すかさずシャープペンシルを取り返した。

 

「なっ! チッ、お前ケチじゃの~」

 

 草山良緒はふざけているようだ。

 

「どうせケチだよ!」

 

「仕方ないなぁ」

 

(良かった、なんだ結構話し易い人じゃん)

 

 雨花は少しほっとした。

 しかし、草山良緒がまた筆箱に手を伸ばしてきたので、雨花は慌ててそれを取り上げた。

 

「ねぇ、油性のペン持ってない?」

 

 唐突にそう問いかけられて、雨花は眉を潜める。

 

「なんで?」

 

「いいから、早く!」

 

 鈍い雨花はよくわからないまま、油性のマーカーを差し出した。

 草山良緒が、なにやら反省カードに書き込んでいる。

 

「……なに書いて——っああ!」

 

 なんと、草山良緒は強引にも、班長の名前の欄に雨花の名前を油性ペンで書いていたのだ。

 

「最悪……」

 

 雨花はムスッとしてつぶやいた。

 筆箱の中に修正機はない。

 

「まっ、よろしくな!」

 

 そう言って、草山良緒は悪戯っぽくニカッと笑った。



 

 放課後の部活も終わり、雨花は今日は一番のりで帰りのメンバーが集まる場所に、独りぽつんと座ってみんなを待っていた。

 

(あー、ムカつく。最悪……)

 

 雨花が苛々と考え事をしていると、美奈がバタバタと一人で走って来た。

 

「さぁ、雨花、掃除はどうだった?」

 

 同じバレー部だが、顧問がいたため雑談が出来なかった美奈は、待ちきれないようだ。

 

「えっ? 別に……勝手に班長にされたりで最悪だったけど……?」

 

 雨花は美奈とは反対にどんよりと答えた。

 

「ちゃんと話せた?」

 

「まぁ……」

 

「ていうか、未だに記憶ないの? 有り得なくない?」

 

 雨花は困惑した顔で首を傾げる。

 

「うーん。私もおかしいとは思うんだけど、本当にわかんなくて……もしかして新種のアルツハイマーとかかなぁ……?」

 

 美奈はそれを聞いて、少しおかしそうに笑った。

 

「さぁね? でも本当にわかんないんだね……」

 

「美奈、私本当にふざけてるわけじゃないからね? それだけは信じて欲しい……! あと、このこと、みんなには——」

 

「わかってるって! 信じるよ。みんなにも言いませんから!」

 

 美奈は親指を立ててにっこり笑った。

 

「美奈、ありがとう」



 

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