エピローグ 果てなき路、志は風と共に
富士の要塞が崩落した跡地には、ただ静かな風が吹き抜けていた。
あれほどまでに禍々しい瘴気を放っていた地も、今やただの山肌に戻りつつある。
新選組の隊士たちは、それぞれの荷を背負い、日本各地へと散らばる準備を整えていた。もはや彼らは一箇所に留まる守護者ではない。総統が遺した言葉通り、この国の深層に巣食う「膿」は、まだ至る所に根を張っているのだ。
「葵、お前はどこへ行く?」
近藤の問いに、葵は自身の腰に差した刀――龍の核を宿した相棒――に手を添え、遥か西の空を見つめた。
「各地から、奇妙な『霧』の報告が届いています。俺が龍の導きを追って、すべての禍根を断ち切ってきます」
「そうか。お前なら安心だ」
近藤は満足げに頷くと、土方や他の隊長たちと共に、夕闇に溶けゆく街道へと歩き出した。
彼らが行く先は北へ、西へ、南へと分かれる。だが、その胸にある志は一つだ。この国を蝕む怪物たちを根絶やしにし、民が怯えることのない夜明けを取り戻すこと。
葵は一人、朝日が昇る方向とは逆の、影が濃くなる道へと歩みを進めた。
背後に残る隊士たちの力強い足音と、これから出会うであろう新たな戦いの気配を感じながら。
風が、葵の髪を揺らす。
戦いは終わったのではない。本当の戦いは、ここから始まるのだ。
新選組の旗印が、遠く離れた各地の空に翻るその日まで――隊士たちの旅路に、終わりはない。




