第525話・現代最強の自衛官VS史上最強の魔導士⑧
いよいよ決着です
ビルの側壁に立った錠前は、イヴと残ったゴアマンティスの眼前で笑みを見せながら、欠損していた右腕をアッサリ再生して見せた。
「ッ…………」
さしもの破壊神イヴも、認めざるを得ない。
この男は自分を倒す可能性がある。
なにか一手ミスした時点で、即刻詰む相手なのだと。
破壊神イヴに、人生二度目の緊張が走った。
同時に、錠前勉のボルテージが上がる。
「一気に決めようか」
魔法の完全詠唱を経て、一時的に錠前はゾーンに入った。
超スピードで肉薄すると、イヴの顔面へ強烈な右ストレートを放つ。
「ぐぅっ…………!!!」
間一髪でガードし、即座に反撃。
ゴアマンティスと共闘して凄まじい近接戦を浴びせるが、錠前は全て捌く。
さらに適応のスピードが加速し、イヴを突き放していった。
――――今しかない!
「『劈』!!」
錠前が指を向けると、イヴの体を無数の斬撃が襲った。
やはり適応が追い付いていない。
今ここしか、決着の時は無かった。
最後の一手に踏み出そうと、錠前が魔力を引き上げた時だ。
「ッ!!!」
眼前のイヴの傷が、一瞬で治癒したのだ。
肉体反転ではない、”適応”によるものだった。
「おぬしだけの特権ではないぞ?」
この土壇場で、イヴも追いつくように”多対1での暁天一閃を出さない”という縛りを成立。
元々のアドバンテージも合わさり、ここに来て適応合戦で突き放す。
さらにイヴの体内で、魔力の膨れ上がりを感知。
魔眼を持つ錠前は、相手がどんな魔法を出すか事前に察知できる。
この予兆幅から、イヴが繰り出すのは『劈』と予想。
――――次元防壁で受けて、確実に暁天一閃を決める。
そう錠前は判断。
宙に浮いたイヴが、指を上に向けた。
「――――『神級爆裂魔法』」
「ッ!!!」
イヴが天に向かって放ったのは、同じ出力で偽装された全く別の魔法。
ここまで散々コピーした技を使っていただけに、完全に不意を突かれた格好だ。
「させるかよ」
すぐさま壁を蹴って高速移動。
相手の魔法を炸裂前に撃ち落とそうとした時だ。
「『原始回帰』」
飛翔した爆裂魔法の先には、特級神獣ゴアマンティス。
イヴが魔法を使った瞬間、モンスターの体は瞬時に高濃度の魔力へ戻された。
神クラスの爆裂魔法に、同じく神クラスの神獣が元となった魔力が衝突することで何が起きるか。
答えは”反発”と”膨張”。
イヴはこの土壇場の合わせ技により、”暁天一閃”を決めようとしていたのだ。
「『絶』!!」
空中で錠前が魔法を発動。
即座にイヴが阻止に入るが、タッチの差で錠前が技を発動。
「惜しかったね」
放たれた魔法が、爆裂魔法に向かった瞬間――――
「”焔心”、”疾風”、””紅蓮の鎖――――」
ここに来ての後追い完全詠唱。
初速を増したイヴの魔法は、錠前の技を寸前で回避。
ゴアマンティスだった魔力と、爆裂魔法が彼女の上空で重なっていく。
「”断罪”、”輪廻”、”破滅の礎”――――」
さらなる完全詠唱。
太陽のような輝きが、第5エリア全体を覆った。
「暁天一閃――――『極ノ轟』」
――――炸裂。
戦略兵器級の大爆発が発生し、戦場全てを飲み込んだ。
爆風でビル街は薙ぎ払われ、雲が全て吹っ飛ぶ。
巨大なキノコ雲が生まれた足元では、全てが残骸と化した地面。
「ッ…………」
瓦礫に腕をついた錠前が、瀕死の状態で立っていた。
身体は焼け焦げ、部位もあちこちが欠損している。
「自爆覚悟の離れ業だったが、おぬしの方がダメージが大きかったようだな」
彼の眼前には、同じく焦がされたイヴ。
しかし、その総ダメージ量は明らかに違った。
この様子を、観戦組は死んだような顔で見つめていた。
「次元防壁も剥がされ、徒手空拳もままならない錠前勉に対して……。完全に魔法へ適応し、ダメージも抑えたイヴ…………」
「これって」
「えぇ…………」
その瞬間、スクリーンには勝利の笑みを浮かべるイヴの顔が映った。
「――――イヴの勝ちよ」




