第524話・現代最強の自衛官VS史上最強の魔導士⑦
――――C-2輸送機内。
「テオに連絡して、転移魔法で俺を戦場に直接送ってもらいます」
20式をコッキングした透は、席を立っていた。
周囲の自衛官や、他の第1特務小隊員の視線が集まる。
「賛成できないわね、新海透。この作戦が始まる前の錠前勉の言葉を忘れたかしらぁ?」
執行者エクシリアが、対面で即座に否定。
なんと透は、錠前とイヴの決戦に割り込もうとしていた。
それも、戦局の変化があったからこそ。
「相手が特級神獣を出した時点で、もうタイマンじゃない。このまま多対1は不公平だ」
「違う、”今の”アンタじゃ足手纏いって言ってるの。聞いてたわよね? あいつが介入を認めたのは本当にヤバくなった時だけ」
「テオと2人なら、特級神獣の相手くらいはできる」
透からすれば、割り込むなら逆に今しかない。
映像で見ていて錠前、イヴ共に疲弊しているのは間違いなかった。
そんな窮地で相手が増援を出したとなれば、こちらも助太刀に行くのが役目。
しかし、エクシリアは引かなかった。
「わかってないわね。アンタはこの作戦である意味錠前勉よりもキーマンなの、そんな男をムザムザ足手纏いになる現場に行かせられない」
足手纏い……。
かなり痛い言葉だが、坂本が声を出す。
「隊長、気持ちはわかりますが一旦落ち着いてください。現状不利に見えますがあの1佐がこのまま押し負けるとは到底思えません。何か策を考えているはずです」
「そうね、なんたってあの1佐よ? 逆に隊長が割り込んでプランを邪魔したら後で殺されるかも」
「ウッ……、それはあるな…………」
坂本と久里浜の言葉に、一息吐いて席に座り直す透。
確かにみんなの言う通り、あの異次元の戦場に飛び込んでも死ぬだけだ。
万全の錠前を当てて消耗させることが、現状で一番勝率が高い。
新海透は、その目を細めた。
「信じてますからね……、1佐」
――――第5エリア。
お互いに攻め手を欠いた現状。
両者の思考は、1つの答えに収束した。
――――決めるしかない、出力全開の”暁天一閃”を。
錠前勉は最後の一撃に賭けることとした。
もしこの攻勢に失敗すれば、逆にさらなる適応を許して押し負ける。
現状適応合戦で互角、封域を手札から消した縛りを含めれば優勢。
決めるなら今しかなかった。
「適応の差で優位を取ったつもりか?」
イヴが指を向けた。
「『劈』」
再び放たれる強烈な斬撃。
しかし適応で上回っている分、次元防壁で受けられる。
そう判断したが――――
「ッ…………!」
右腕に走る鈍痛。
見れば、防壁を無視して錠前の右肘から先が斬り飛ばされていた。
確信する。
イヴもまた、”今後封域を展開しない”という同じ縛りで適応に追いついたのだと……!!
観戦組も、思わず叫んだ。
「ヤバいぞ!! 1佐の魔力出力は今落ちてる!!」
この絶好の機会を、イヴは見逃さない。
ゴアマンティスとタイミングを合わせ、右腕の再生に追われる錠前に激しい追撃。
ビルを縦に上りながらの応酬で、いくつかの打撃を当てる。
2体目が背後へ回り込み、錠前にトドメを刺そうとした時だ。
「何勝った気になってんだよ」
――――バギィッ――――!!!!
「っ!!???」
体勢を一瞬で転換した錠前が、笑顔を見せながら残った左拳でゴアマンティスの腹部を叩き潰す。
「お前らだけ役者不足なんだよ。”虚空”、”永劫”、”星海の律動”――――」
ここに来ての完全詠唱。
下がっていた出力を取り戻した錠前は、血を吐くゴアマンティスへ照準を向けた。
「『絶』!!」
一瞬だった。
屈強な肉体に加え、イヴによるバフを掛けられたゴアマンティスが切り刻まれた末に消滅してしまった。
――――これより1分45秒後。世界を二分する最強同士の対決は、暁天一閃の炸裂により決着を迎える。




