第521話・現代最強の自衛官VS史上最強の魔導士④
「ッ…………!」
首元を押さえる錠前。
傷口からは、大量の血が流れ落ちた。
「錠前1佐!!!!」
思わず叫ぶ透。
しかし、錠前の次の行動は神速だった。
彼が腕を払うと、一瞬で開いた傷が塞がったのだ。
「1佐はアノマリー! あの程度の傷ならすぐに回復できます……!」
四条の声に、苦い顔をしたエクシリアがすぐに返す。
「けれどイヴの封域内にいる限り、魔法攻撃は続くわ!」
その通りだった。
イヴは封域に先ほどコピーした『劈』を付与していた。
錠前の次元防壁も、より高出力の封域の前では無力。
彼の全身を、嵐のような斬撃が襲い掛かった。
大量の血が流れ落ちる中、錠前は不敵に笑う。
「なんだ、何を付与しているのかと思ったらさっきパクった僕の技か。つまり、君にそれ以上高火力の技は無いってことね」
ゲラゲラと笑うイヴを前に、錠前は動揺1つしない。
しかし、いくら肉体反転があるとはいえこのレベルの斬撃を受け続ければ、いずれ限界が来る。
錠前は地面を蹴り、切り刻まれながら封域の外を目指した。
「フフッ、このまま逃がすわけないだろう」
当然、イヴが阻止に入った。
次元防壁が中和された今、通常の打撃でも通る。
そこを突こうとしたが、
「チッ」
全身を微塵切りにされているにも関わらず、錠前は格闘戦でイヴを上回っていた。
数回の応酬の後、一旦距離を取る。
「凄まじいな、余の魔法を受けながらそこまで動けるとは」
思わず感心するイヴ。
一方の錠前は、魔眼を使って冷静に分析を進めていた。
――――結界の半径はザッと50メートル。もっと広げられるだろうけど、威力と精度を上げるために範囲を絞ってるのかな? どっちみち、僕からパクった技を付与している以上、ブラフは無いと考えよう。
一方で、観戦していた透は汗をかきながら呟く。
「あの結界、ミサイルとか撃ち込んだら破壊できねーかな……。もしくは俺と衿華の干渉でなんとか…………」
そう言ったところで、エクシリアが否定する。
「ミサイルより火力を出せる錠前が破壊を選ばないってことは、あの結界はイヴの体力や運用術に依存していると見て良い。外部からの干渉で破壊は不可能でしょうね」
この言葉に、久里浜が頭を抱えた。
「それめっちゃピンチじゃん! このままもしかしたら負け――――」
彼女が言い終わる前に、スクリーンの奥で動きがあった。
「零式――――『魔装結界』」
錠前の周囲を、薄い結界の幕が覆ったのだ。
これにより、封域の効果が中和。
浴びせられていた斬撃が、ピタリと止んだ。
「君だけの専売特許じゃないよ?」
錠前勉の狙い。
それは、魔装結界により攻撃を中和。
同時に肉体と焼き切れた魔眼の回復を行うという、およそ人間とは思えないコンボだった。
しかし――――
――――バリバリバリッ――――!!!
「フンッ、何をするのかと思えば小手先の技か。魔導封域の前では時間稼ぎにしかならんぞ?」
イヴの言う通りだった。
錠前の魔装結界は、封域より出力で劣る。
現に、格闘の最中に凄まじい速度で削れていた。
肉体の傷が全快したと同時、
――――パリィンッ――――!!!
魔装結界が破れ、同時に封域の中和が途切れた。
せっかく回復した体に、またも斬撃が降り注いだ。
牽制で距離を作った後、錠前は再び魔力を込めた。
「零式――――『魔装結界』」
またも結界を展開。
この行為に、イヴは顔をしかめた。
「もう手札切れか? つまらん」
二度目だが結果は同じ。
錠前の防御は、猛スピードで削られていく。
「ッ」
再び魔装結界が消失。
錠前に斬撃が襲い掛かった。
透、四条、坂本、久里浜はもっとも考えたくない言葉が脳裏によぎる。
――――錠前1佐が……負ける?
勝負がつこうとした時だ。
「やっとか」
「ッ!!!」
錠前の体を襲っていた斬撃が、ピタリと止んだのだ。
同時に、彼は人差し指をイヴへ向けた。
「『絶』」
放たれた魔法を食らったイヴは、そのまま吹っ飛んでビルに突っ込んだ。
封域はイヴが中心となっているので、座標がズレて錠前は外へ。
彼女は瓦礫をどかしながら、若干の怒気を込めた顔を見せる。
「まさか……もう”適応”したのか、余の封域に」
錠前は封域の押し合いに負けた時点で、魔眼の再生を後回しにしていた。
魔装結界で凌ぎながら適応作業を全力で進め、今やっとイヴの魔法に完全適応。
封域を無効化したのだ。
「あー疲れた」
服を整え、身体を綺麗サッパリ修復した錠前は、ニッと笑った。




