第513話・国連軍最終決戦艦隊VSエンジェル・フリート
――――太平洋上。
広大な青い海原に、白波を切って進む大艦隊の姿があった。
輪形陣で整えられたそれらは、あらゆる国の軍艦で構成された通称――――『国連軍最終決戦艦隊』。
新生国連加盟国で構成された、多国籍の連合艦隊だった。
参加国は日本、アメリカ、欧州、インド、中国、ロシアetc……。
中心部には旗艦である空母『かが』に加え、周囲に原子力航空母艦『ジェラルド・R・フォード』。『ジョージ・ワシントン改』。『ハリー・S・トルーマン』。
空母『HMSプリンス・オブ・ウェールズ』、『カヴ―ル』、『シャルル・ドゴール』、『アドミラル・クズネツォフ』。
それらを護衛するのは海上自衛隊のイージス護衛艦『まや』、『こんごう』、『きりしま』、『あたご』。
汎用護衛艦『いかづち』、『あきづき』、『ふゆづき』、『おおなみ』、『あさひ』etc……。
米国艦はアーレイバーク級イージス駆逐艦が23隻、タイコンデロガ級イージス巡洋艦が3隻。
ここに中国の052C型イージス駆逐艦(一部故障中)が3隻。
ロシアの原子力ミサイル巡洋艦が1隻。
その他欧州のフリゲートが多数といった編成。
あえて言うなら……上記戦闘艦の中に、”ある別の艦種”が混じっていた。
陣形を割って、『ジェラルド・R・フォード』の隣へ近づく。
これこそが、連合艦隊の切り札である。
「さて、時間を稼ぐ必要があるな…………」
『かが』のFTCで椅子に座った山口海将補は、その鋭い眼をモニターへ向けた。
レーダーには、数十隻の巨大な艦影。
それらは洋上ではなく、高空を進んでいた。
「艦隊司令、”突撃部隊”の準備が完了したとのことです」
かが艦長の言葉に合わせて、山口は艦内無線を取った。
「達する! これより本艦隊は、敵空中機動艦隊と交戦に入る!! 執行者からの情報によれば、現在ダンジョンは高出力のバリアに覆われており、手が出せない。そのバリアのエネルギーハブを兼ねているのが、こちらへ進軍する敵艦隊だ! 幾多の戦いを潜り抜けて来た百戦錬磨の諸君らなら、必ずやり遂げると信じている。地球の興廃――――この一戦にアリと心得よ!!!」
無線を置くと同時に、作戦が開始された。
「『無人イージス艦隊』!! 突撃!!!」
◇
――――太平洋上空、エンジェル・フリート旗艦、航空母艦『セラフィム』艦内。
全長300メートルを超えるこの円盤は、3つの艦載機発進口を備えた空中母艦だ。
武装は戦艦クラスの350ミリ・魔導粒子砲を複数備えている。
さらに空間防御能力として、ダンジョンに展開したものと同じバリアを、艦隊丸ごと覆う形で生成。
地球軍のロング・レンジ攻撃に対し、鉄壁のガードを誇っていた。
「司令! ブリッジへ!!」
天界師団の兵士たちが、艦橋へ上がってきた髭の男へ敬礼する。
「ご苦労、艦長――――地球艦隊の様子はどうかね?」
大天使……というには小さい羽根を持ったこの司令官は、名をコカビエル。
破壊神、大天使に次ぐ天界の実力者だった。
「はっ! 我が艦隊の加速は順調。敵艦隊は決戦の構えを取っています」
「乗員の様子は? みなコールドスリープから起きたてで不備は無いか?」
「全員意気軒昂! 我らが破壊神イヴ様に報いるため、この地球ダンジョンを必ずや攻略します」
ここにいるコカビエルを除いた全員が、20代~30代の若い風貌。
しかし、その年齢は100歳をゆうに超えていた。
「イヴ様は今は亡きアダム様と共に、不死の薬を作り上げ……宇宙災害で短命となっていた我らを救ってくれた、その恩義に報いるのは天界人として当然だが――――」
一拍置いてから、コカビエルは目を細めた。
「その勇気が、蛮勇とならんよう気を付けろ。敵の分析は済んでいるな?」
「はっ! 地球軍はミサイルという名の長距離打撃戦力を主力としています。射程は推定数百キロ、破壊力はドラゴンを一撃で葬るとか」
「今まで巡ってきた地球と違うな、魔法は使わないのか?」
「執行者とそのマスター、そして例の現代最強のアノマリーを除いて使用できないと見られます」
「ふむ、次元エンジンを臨界稼働した今。この星全体がダンジョンのエネルギー吸収対象となった、敵艦隊を乗員ごと葬れば……臨界突破のマージンは確保できる」
本当なら東京の民間人を初撃で殺害するつもりだったが、自衛隊によって阻止されている。
いくら空中艦隊とはいえ、未だ未知に包まれた日本本土上空へ深入りはできない。
そこで、太平洋の連合艦隊が標的となった。
「レーダーに感! 敵前衛と思しき大型艦隊が突っ込んできます!」
乗員が続けて声を上げる。
「敵艦隊から多数の音速飛翔物体射出!! 例のミサイルと思われます!!」
「バリアの耐圧限界を節約するぞ、主砲で叩き落せ」
エンジェル・フリート各艦から、魔力粒子砲が次々に放たれる。
ここに、世界の命運を賭けた一大決戦が開始された。




