第512話・開幕・異世界ダンジョンVS地球連合軍
遍く世界の終着点編、決戦開始です。
どうぞ最後までお付き合いください。
――――12月24日。
この日、ダンジョンは長い沈黙を破った。
「ねぇ……、なにあれ?」
「ダンジョンが…………ッ」
東京都民にとって、湾内で浮かぶダンジョンはもはや日常の光景。
誰も気にする者はいなかった。
しかし、今日に限っては違う。
『速報です!! ダンジョンから現在多量のガスが噴出中!! ガスは東京上空に広がっており、巨大な積乱雲を形成しつつあります!!!』
天界側は夜明けと同時に動いた。
次元エンジンを臨界稼働させ、世界に亀裂を生み出しつつある。
目的はただ1つ――――
「時は来た! 我が最愛なる創造神アダムと再び巡り合うため、この世界を贄とし、新たなるループの紐を作り上げよう!!!」
積乱雲は高度1万メートルを超える高さになり、遂には東京都23区を超えて拡大。
「我は始発世界のアノマリーにして、ループの代行者!! 新たなる創造の神を復活させるため、今――――この世界を破壊神として滅ぼさん!!!」
イヴの宣言と同時、雲の中から巨大な影が浮かんだ。
暗闇に包まれ、照明の点いた都内で一般人が空を指差す。
「アレ……UFO?」
積乱雲からダンジョンを囲むように出現したのは、数十隻の円盤だった。
それぞれサイズが異なるが、どれもゆうに100メートルは超えている。
一番大きいサイズに至っては、300メートルに達していた。
これこそが――――
「『エンジェル・フリート』、連中の切り札にしてダンジョンの護衛艦隊。次元エンジンの守護者……だったか?」
――――市ヶ谷 防衛省。
地下のオペレーション・ルームで椅子に座った四条陸将は、100インチ超えのモニターを見つめていた。
「四条”統合作戦司令官”! 霞ヶ関から発砲の許可が出ました!!」
電話を片手に持った幹部自衛官に、今決戦の現場トップに選ばれた四条陸将は、低い声で指示を出した。
「総理の下命を確認。発砲を許可する、攻撃始め」
指令はすぐさま東京湾沿岸部に展開していた、陸上自衛隊の高射特科部隊に送られた。
03式中距離地対空誘導弾、ペトリオット・ミサイルが一斉にランチャーを目標に指向する。
「撃てッ!!」
都民の眼前で、対空ミサイルが次々と白煙を上げて発射された。
100発を超えるそれらは、ダンジョンを囲むエンジェル・フリートへ音速を超えて向かうが――――
「まぁ、そうなるか」
四条が一言。
ミサイルは敵に届かなかった。
全ての弾頭が、東京湾上空で未知の防壁に阻まれて爆発。
迎撃は失敗した。
ほぼ同時にJアラートが鳴り響き、Mネットを通じて非常警報が関東全域へ届けられる。
作戦第一段階は、失敗に終わった。
「まだか!」
「あと1分です!!」
円盤が数隻沿岸部に近づくと、その表面に魔法陣を浮かべた。
考えるまでもない、砲撃が降ってくる。
目標は東京都全域!
「施設科大隊!! 展開完了!!!」
「ただちに結晶を砕け!! 魔導防壁展開!!!」
四条の指示と同時に、東京都全域へ展開を完了した施設科隊員が、ビルの屋上で大量の魔力結晶をC4爆弾で破砕。
それがトリガーとなり、東京湾から本土内陸部を包むように魔導防壁が発生した。
円盤のビームは直前で防壁に弾かれ、事なきを得る。
これは、今まで第1特務小隊が使用してきた『簡易魔法結界発生装置』。その極大版。
決戦に備えてギリギリまで製造を行っており、なんとか間に合った形だ。
錠前が決戦日を指定したのは、この装置が完成するまでの時間稼ぎ。
自衛隊は、国民をなんとしても守る姿勢だった。
「エンジェル・フリート転進! 東京湾外へ向かっていきます!!」
高空に展開する無人偵察機グローバル・ホークから、敵艦隊の動きが送られてくる。
映像では、数十の円盤群が隊列を形成しつつあった。
腕を組みながら、四条陸将は呟いた。
「奴らはこれまでの戦いで慢性的なエネルギー不足だ。これは”餌”に食いついたな?」
画面がレーダー表示に映り変わる。
東京の東――――千葉県沖の太平洋上に、無数の輝点が映っていた。
「『国連軍最終決戦艦隊』、こうして見ると壮観だが……果たして勝てるか」
四条の言葉に、隣から声が掛けられた。
「心配いりません、艦隊を指揮しているのは空母『かが』に乗艦する山口海将補です。彼はリヴァイアサン戦、中国本土攻略戦で武勇を上げた精鋭。そして何より――――」
少し苦い顔をした幹部自衛官は、おそらくどんな戦績よりも信頼に値する言葉を出した。
「9年前。真島雄二、秋山美咲、錠前勉1佐を短期間とはいえマトモに授業を受けさせた実績を持ちます」




