第511話・送り出せ! 最高の娘!!
いよいよマンガボックスアプリ内で、課金したら読める最新話に現代最強――――錠前勉が登場です。
「えっ…………ッ 辞める?」
頭が真っ白になる。
今……なんて。
「わたしは、新海透の眷属ではなくなると言ったんです」
その顔に嘘は微塵もない。
覚悟も、準備もできた強い女の子の顔。
彼女は直後に、話を繋げた。
「この世界では、家族は同じ名前を使うと聞いています」
「…………あぁ、そうだが…………それがなん――――」
新海透は、勘の良い男だ。
この後に続く言葉を、彼の直観が先回りで教えてくる。
だが、今の透に反論することはできない言葉だった。
「透……、この戦いが終わったら――――わたしを本当の意味で、貴方の”娘”にしてくれませんか?」
幼い少女の告白が続く。
「透がお父さんとお母さんから名前を頂いたように、わたしにも……貴方の名前をください。世界で一番、誇りのある素晴らしいお名前を。これが戦いを最後にするためのお願いです」
それは明確な宣言とお願い。
今までのような上下関係の主従契約ではなく、正真正銘の家族としての関係。
執行者テオドールは、ただそれのみを求めた。
「この戦いを最後に、わたしは執行者ではなくなるでしょう。だから本当の意味で日本で生きる人間として、透の家族として、一緒の名前で生きたいのです!!」
それは、眷属でも執行者でも――――魔法少女でも何でもない。
テオドールという1人の女の子が求める、唯一無二の願い。
透の涙腺が悲鳴を上げる。
もう抑えることなどできない。
彼はめいっぱいの力で、テオドールを抱きしめた。
温かくて柔らかく、甘い高級洋菓子のような香りが鼻を触る。
彼女は甘えた表情をすると、頬を敬愛する透の頬へスリスリと擦る。
「人生最大級のわがまま、聞いていただけるでしょうか?」
考えるまでもない。
「あぁ…………ッ!! わかった。俺の大事な名前を、とてもとても大事なテオにあげようっ! 弱ったこと言って悪かった、自信をもって最後の戦いを一緒にやろう! こんななんでもない人間を親にしてくれて――――ありがとうッ」
「フフッ、気が早いですよ透。その関係になるのは全てが終わったあと。まだわたしは透の眷属です」
ハグを解く。
黒目と金眼、互いに見つめ合い――――改めて誓いを立てる。
すると、テオドールは少し顔を困らせた。
「さて、そうなったらわたしはどう名乗れば良いんでしょうか。新海・テオドール? それは少し語感が合わないですかね」
どちらが気が早いのだろうと笑ってツッコミたくなったが、透はもう案を持っていた。
「どの道、もうテオは世界のアイドルだ。普通に暮らすのに今の名前じゃまず無理。だから真名とは別に日本人らしい名前を考えておくよ」
「透に名付けてもらえるのですか!? やったぁッ!!」
大はしゃぎするテオドール。
この子がもっと喜ぶような、素敵な名前を考えておかねばならないなと彼は息を吐く。
そんな2人の様子を、影から見守る者たちがいた。
「だって衿華、わたしもお名前欲しいなー」
水色のサイドテールを揺らしながら、執行者ベルセリオンは甘えた声を出す。
「そうですね、ベルさんもわたしの実質愛娘なわけですし、与えても良いんですが――――」
悪戯っぽく笑った四条は、
「今はダメです」
「えぇっ! なんでぇーッ!?」
割と本気でショックを受ける眷属に、そんなマスターは柔らかく微笑んだ。
「”今は”、ですよ?」
「あっ――――」
奥の透と四条を交互に見たベルセリオンは、思わず顔を赤くした。
「わたしも、彼からお名前を頂く予定ですので」
「ふっ、フーン…………ッ」
恋慕なマスターにちょっとドキドキさせられたベルセリオンは、結局妹と同じお名前をいただく事となった。




