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~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「クレーマーは止められない!」
井川は切りがないので安仁屋さんからの電話を切った。
しかし、クレーマーが冷静に行動を止めることなど、まず、無い。
以前、出先から安仁屋さんに携帯から電話をかけた際、電話番合を掴まれていた。
切れども切れども、狂ったように電話をしてくる。
着歴72件…。
井川は背筋が凍った。
「また包丁持って暴れ出すかも…。」と。
そして73回目のベルが鳴動した瞬間、着信拒否にしてしまった。
その直後、もうしてしまっているが、強化を得てからそうしたといったストーリーが欲しいため井川は上司に、仕事にならない旨を伝え自ら切り出した。
「着信拒否したいのですが、宜しいでしょうか?」
「わかった。許可する。」
その後もかけているであろう安仁屋さんの狂った姿が浮かんできた。
「つながらないとなれば、次はどうするのだろうか?」
そう思い支店に電話すると、支店の電話対応者が言葉の機関銃を浴びている瞬間だった。
そう、支店にかけ続け、断られても粘り強くかけ続ける安仁屋さんの姿は、もう、獣か物の怪であった。
目は血走り、眉の位置は額の上部まで上がり、顔は歪み、眉間には深い皺が幾重にも連なり、電話口で奇声をあげる姿が想像できた。




