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~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「クレーマーによる迷惑・被害」

「あなたは私がFBIに掴まり、拷問にかけられても

平気なのか!?」

と安仁屋さんは息巻いた。


井川は「そんなことはおきません。FBIなどいません。」

と、淡々と話した。

朝会の資料は間に合わない。


井川のせいではないが、上司は、昨日のうちに用意して

おけよ…との論法になり、朝の会議の議題残しの責任を

全て井川のせいにして、ため息をついていた。


この仕事は、如何にクレーマーが少ないか(多いか)で

本業に特化できる時間の確保が予定通りで行くか否かを

左右する。


井川は転勤して間がない。

移動してくる営業社員に、既存の社員は、自分が持って

いたくない物件をどうにかして渡し逃げしようとする。


井川はまんまとやられた。

何かと文句をつけてくる閑なリタイア族や、同業で

業務内容を知っている嫌味な客、アンケートにゼロ点

と平気で書いてくる性根の悪い人間…そんな数々の

問題顧客に連日、予定を潰され、たまの休日も「連絡

よこせ。」の連絡がカスタマーセンターに入り、対応

させられる。


「うんざりだ。」心の底からそう思っていた。


しなくてはならない入力作業は、社員を信用しない

巨大親会社のやり方がどんどん末端企業まで及んで

来たため、5年前まではなかったような登録入力作業

が5倍以上増え、毎日それに3時間以上は費やす羽目

になっている。

それなのにクレーマーや異常行動者に3時間持って

いかれる。


「やることはやってから休め。しかし残業はするな

(つけるな)!」


要領がよく、支店が長いベテラン社員は、厄介客を

他に渡し、悠々と自分の仕事だけをしていた。


受話器の向こうで安仁屋さんは叫び続け、時折、

奇声を上げていた。


井川は理事会にも安仁屋さんの扱いについて相談

したことがあったが、「矛先がこちらに向くのは

避けたい。引き続き井川君、頼むよ子守りを。」

と一蹴された。


「もういいや。」

そう井川は心の中で呟き、サンスクリット語の

ような意味不明な呪文か呪いを唱えている安仁屋さん

に言った。

「お相手致しかねます。失礼いたします。」と告げ、

電話を切った。



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