~マンション(共同住宅)の物語 其の1 「襲い来る第2波」
安仁屋さんは、異常行動者としてマンション内で
認知が広まってしまったが、住民に疎まれ嫌われる
存在から、長年君臨していた嫌な存在であった
江川副理事長をコテンパンに遣り込めた勇者として
奇異な存在ではあるが、皆から守られる対象へと
存在感が変わっていった。
しかし、安仁屋さんは、それまで誰も目を合わさず、
小さな子の親は、安仁屋さんが歩いて来ただけで
子供を抱きかかえ露骨に近づくなと態度で示して
いたくせに、今は愛想笑いを見せながら、一応、
失礼のないように子を抱えている。
これは善意や応援だけではない。
一度火が付けば、10歳そこらの子供に殺すぞと
本気で脅せる安仁屋さんの狂気を恐れてのことで
あった。
それも安仁屋さんを不快で不明瞭な世界に、再び
導いていった。
今で、今から見える共用部分に植えられた樹木を
眺めていると、そこに映画マトリックスに出てくる
ブラックスーツにブラックタイそして白カッター
シャツに黒革靴の男が木に登り、こちらを見ている
ように安仁屋さんには見えた。
サングラスを着用し、表情を隠したその男は、
表情一つ変えることなく安仁屋さんを監視し、
時折誰かと無線連絡をしていた。
驚いた安仁屋さんは、疲れてまだ眠っていた実母
を居間に呼び、言った。
「お母さん、外の木からFBIが覗いていて、
私を監視している。」
そう言って、軍鶏のように奇怪な歩き方で室内
を徘徊した。
実母にはFBIは見えなかった。
「FBなんとかって何色や。緑内障やけ見えん。」
母がそう言うと安仁屋さんは、
「黒や、黒白や。」
「何もおらんで。」
安仁屋さんはそれを聞き、再び外を見た。
すると…
今度は黒白男が、片手に防犯カメラを持って
安仁屋さんを撮影していた。
安仁屋さんは、徐々にパニックと多重人格が
頭を擡げて来た。
「え、FBIと来たかっ!畜生!」と言い
幻のFBIに向かって怒りを表現するため
窓を開け、叫んだ。
「FBI、勝手に撮影するな!」と。
それを共用部分にいた旧自営団(理事長抜き)
が聞いてしまった。
またもやマンションや地域での安仁屋ネタが
増えていった。
FBI、防犯カメラ…
幻影・幻聴、恐ろしい。




