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第十五章:大落の機密

毎日3話公開の4日目、朝の更新となる第15章です。準決勝での失策によって崩れ落ちたトウジ。控室で一人、指先を震わせる主将の前に現れたのは――。




トウジの失射は、準決勝の運命を決定づけた。早気(はやけ)の容赦ない重圧の下、主将は臨床的焦燥からさらに二本の矢を外し、桜華高校が迷うことなく大舞台への切符を手にした。幽霊部活は、決勝の手前という最大の壁に阻まれて崩れ去ったのだ。


しかし、彼らの大会はまだ終わっていなかった。それまでの立(たち)でダイコ、ミナト、ユウセイが積み重ねてきた馬鹿げた的中数のおかげで、トウジたちの公立校は極めて僅かな差で、地方大会の総合三位決定戦へ進む権利を掴み取っていた。これが、順位表に残された最後の空席だった。次の試合に勝てば、高体連への登録と道場の死守、工程が生存するための予算を確実に勝ち取ることができる。負ければ、すべてが灰に帰す。


トウジは控室の奥、畳の上に腰を下ろし、両腕を膝に預けて深く頭を垂れていた。彼の右手の指先は、射場で己を支配した精神的パニックの残響によって、いまだに微かに震え続けていた。


「……俺が、流れ(フロー)を断裂させた」

トウジは呟いた。その声は擦り切れ、罪悪感でずっしりと重かった。

「お前たちは今日、血の汗を流して繋いでくれた。イツキは自分の失策を乗り越え、ダイコは完璧な精度で方程式を実行し、ミナトとユウセイはスコアを背負って戦ってくれた……それなのに、俺は会(かい)でコラプス(崩壊)した。お前たちの最後の一手(大落)は、精神が粉々に砕けている。俺が決定戦の射線に立つべきじゃない」


ガラッ。


控室の引き戸が開いた。ソラ・ハチマキが一切の工夫なく部屋に入り、その鮮やかな赤色のリボンが蒸し暑い空気の中で揺れた。彼女は冷えたスポーツドリンクの缶を二本抱えており、それをトウジの目の前にある低いテーブルへ、バチンと叩きつけるように置いた。


「惨めな姿ね、主将」

ソラの声は直球で、鋭く、圧倒的な威圧感(オーラ)に満ちていた。

「照明のプレッシャーに指先が負けたからって、まるで世界が終わったかのような顔をして座り込んで。お前は本気で、最後の一手――大落(おおおち)――の機密が、絶対に外さない精密機械(ロボット)であることだとでも思っているの?」


トウジは頭を上げ、少女の強烈で物怖じしない視線を受け止めた。

「脳のスイッチが切れるんだ、ハチマキさん」

トウジは告白した。不満で奥歯が軋む。

「早気(はやけ)は、身体の構造が成熟する前に矢を放してしまう。俺には、制御(コントロール)ができないんだ」


ソラは不敵に微笑み、使い込まれたベンチに腰を下ろすと、圧倒的な風格(スタイル)を放って見せた。

「もし弓道が単なる機械 velvet 制御のゲームなら、インダストリアの精密校正ロボットが全国王者になってるわよ、トウジ。大落の機密は、恐怖の欠落や技術の完璧さなんかじゃない。大落――大トリの役割とは、チーム全員の矢の重みを背負うレジリエンス(回復力)を持ち、たとえ両膝を地につけていようとも、最後まで弦を引き絞る不遜さを持つことよ」


トウジが応じる前に、引き戸が再び乱暴に開け放たれた。

ミナトを先頭に、残りのメンバーが雪崩れ込んできた。巨漢は両肩を大きく怒らせ、イツキは若き確信に満ちた最高の不敵な笑みを浮かべ、ダイコは外科医のような冷徹さで眼鏡を直した。ユウセイでさえ、腕を組んで壁に寄りかかり、鋭い眼差しをトウジに固定していた。


「あそこの四つ目が、たった今統計データを弾き出したぜ、トウジ」

ミナトが告げた。その低い声が控室の空気を振動させる。

「道場を救うには、三位決定戦で二十射中最低でも十六の的中が必要だ。で、聞いてくれよ。俺はこの学校の他のどの部活の名簿にも、名前を書くつもりはねえからな」


「数値的に言うなら、君の最終ポジションでの的中を欠いた状態でこの目標を達成できる確率は、わずか四パーセントだ」

ダイコが人差し指で眼鏡の位置を直して付け加えた。

「要するにだ、主将。君があの射線に立つ必要がある。早気があろうがなかろうがね」


イツキがトウジの前に歩み寄り、幼馴染の使い込まれた和弓の握り皮を突き出し、その木肌を軽く叩いた。

「俺たちは、お前がベンチで決定戦を眺める姿を見るためにここまで付いてきたんじゃないぜ、トウジ。俺たち四人が最初の四本の弦だ。俺たちの仕事は、スコアを生かしたままお前に射線を渡すこと。お前の唯一の仕事は、俺たちの主将であり続け、あの寺の未明に俺たちを一つにした、あの美しいツルネを響かせることだ。残りの問題は、俺たちの汗でねじ伏せてやるさ」


ユウセイは鼻で小さく笑い、いつもの冷笑的な洗練さをまとって壁から身体を離した。

「ここで退くなら、トウジ、俺が今すぐその弓を叩き割ってやる。俺が準々決勝で心の亡霊をねじ伏せられたのは、お前が背中に手を当ててくれたからだ。その涙(ノイズ)を飲み込んで、さっさと畳から立ち上がり、お前自身が道場のボードに書き込んだあのポジションに付け」


トウジは部屋の周りの全員を見渡した。ソラの確固たるアティチュード、ミナトの筋肉、ダイコの論理、イツキの信頼、そして、ユウセイのエリートとしてのプライド。臨床的焦燥による冷や汗は、彼らの放つ完璧に調和した精神の熱量によって、完全に蒸発させられた。外す恐怖はまだそこにあった。だが、このチームのために引きたいという渇望は、その十倍も巨大だった。


トウジはゆっくりと立ち上がった。指先に確かな力を込め、自分を木材へと繋ぎ止めるあの握り皮を掴み取る。彼は姿勢を正し, 主将としての圧倒的な威厳を放って、控室の空気の密度を一瞬で変えてみせた。


「……お前たち、ありがとう」

トウジは告げ、その口元に鋭く不敵な笑みを沸き返らせた。

「あのメイン射場へ、堂々と胸を張って進もうじゃないか。俺たちは五本の弦の進行(リズム)だ。工程の、的の中心に表彰台(ポディウム)を刻み込んでやる」


三位決定戦の開始を告げるアナウンスが、体育館のスピーカーから響き渡った。弓道部は、失うものは何もなく、得るものがすべてである者のアティチュードを全身から放ちながら、緑のカーペットへと歩みを進めた。クライマックスは目の前であり、巨大な的の壁が彼らを待っていた。


(第十五章 終わり)


第15章をお読みいただきありがとうございました!ソラ・ハチマキが告げた大落の本質、そしてボロボロの主将を「支えになる」と言い切る部erたちの姿が熱い展開でした。


この後、本日のお昼12:15には、運命の三位決定戦の射座に五人が並び立つ第16章「二十八メートルの射座」が公開されます。いよいよクライマックスへ向けてフローが加速します!


トウジたちの戦いをこれからも見守ってくださる方は、ぜひブックマーク(お気に入り登録)と、下の評価欄からのポイント応援をよろしくお願いいたします!


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