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もし日本がアラスカを手に入れていたら  作者: 如月 愁
第五章 第二次世界大戦

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第11話 ウラジオストクの海

では、どうぞ

 昭和十九年八月、大本営は北方艦隊の一部をもって、ウラジオストクのソ連極東艦隊基地に対する攻撃を実施することを決定した。


 この決定の背景には、いくつかの戦略的な考慮があった。まず、ウラジオストクを拠点とするソ連極東艦隊が、日本の北方への補給線と北氷道への連絡路を脅かす存在として看過できない規模に達しつつあったことがある。また、満州での地上戦で苦しむ日本陸軍に対し、海軍として何らかの形で打開策を示す必要があったという政治的な考慮もあったと本書では推測している。


 北方艦隊から攻撃部隊として選抜されたのは、戦艦一隻、空母二隻、巡洋艦四隻、駆逐艦八隻であった。この編成は、ウラジオストクの港湾施設と極東艦隊の艦艇を目標とした精密な打撃作戦を念頭に置いたものであった。


 攻撃は、昭和十九年八月二十三日の早朝に実施された。日本海を経由して日本海側から接近した攻撃部隊は、夜明け前にウラジオストク沖の作戦海域に展開し、夜明けとともに艦載機を発進させた。


 この攻撃の詳細については、当時の攻撃部隊の作戦記録と後年公開されたソ連側の記録とを照合することで、ある程度の全容を再構成することができる。


 第一波の攻撃隊は、ウラジオストクの港内に停泊していたソ連極東艦隊の艦艇を主目標とした。港内には、巡洋艦三隻、駆逐艦多数が確認されており、これらが攻撃の集中目標となった。第二波は、港湾施設、特に燃料タンクと修理ドックを目標に設定された。


 ソ連側の対空防衛は当初、組織的な対応ができていなかった。奇襲の効果もあり、日本側の第一波攻撃はほぼ計画通りに展開された。停泊中の巡洋艦二隻が撃沈または大破し、駆逐艦数隻にも損害が及んだ。港湾施設への攻撃も、燃料タンク数基を炎上させることに成功した。


 第二波以降になると、ソ連側の対空砲火が組織化され、攻撃側にも一定の損害が生じた。だが、この時点でウラジオストクの港は、黒煙に覆われており日本側の攻撃目標の多くは、すでに達成されていた。


 作戦記録によれば、この攻撃においてソ連極東艦隊は壊滅的な打撃を受けた。巡洋艦三隻全てが撃沈または修理不能な大破状態となり、駆逐艦の多くも損傷を受けた。ウラジオストクの港湾機能は、この攻撃によって当面の間、実質的に失われることとなった。


 後年のソ連側記録には、この日の損害について次のように記されている。


「八月二十三日の日本軍による攻撃は、極東艦隊に壊滅的な打撃を与えた。港湾施設の復旧には、少なくとも一年を要する見込みである」


 この攻撃の成功は、日本海軍にとって、満州での苦戦が続く中での、数少ない明確な勝利のひとつとなった。陸では負け、海では勝つ、というねじれた戦果が、この局面においてもまた、繰り返されることとなったのである。


 ウラジオストク攻撃の後、日本の北方艦隊は日本海における制海権をある程度維持することに成功した。だが、この勝利が満州の地上戦の行方を変えるものではなかったことは、すでに述べた通りである。


 極東の海での一勝と、北満州の地での消耗と。日本はこの両者を同時に抱えながら、講和という出口へと向かっていくことになる。

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