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絶望のキッズ携帯  作者: 白瀬隆
キッズ長崎に来る!
28/30

青空

空港へは俺とガキの二人で行くよう嫁に言われた。ガキと二人で長崎空港行きの高速バスに乗っていると、ガキがひっきりなしに勉強について尋ねてくる。俺から言えることは、もし分数の掛け算が分からなければ、分数の足し算ができているか確認するんだと言うことくらいだ。つまり分からなくなったポイントを探せ。それ以外に言えることはない。このガキは数学は比較的まともらしいが、他の教科がボロボロらしい。全教科が必要な国立大学を狙えるだろうか。


そんな心配をしながらバスを降りると、今度は新たな心配が生まれた。こいつの携帯はキッズだ。QRコードが映る代物だとは思えない。チケットか何か持っているのだろうか。ガキに尋ねるとポーチを漁り始め、一枚の紙切れを取り出した。良かった。しかし念のため確認した俺は、ババアをデリヘルに沈めようと決めた。ババア、ガキに領収書だけ渡してどうする。

「おい、クソガキ。これはレシートだ。そのポーチは空だよな?」

ガキが慌てている。ババアに電話だ。時間がない。しかしババアの電話は繋がらない。無理もない。ちょうど神戸空港へ迎えに行く途中なのだろう。俺はババアにラインで経緯を送った。


搭乗受付のリミットが迫っている中、ババアから電話があった。ハローだったら殺す。一撃で決める。そう思っているとババアも慌てていて、どうしたらいいのか半狂乱になり始めた。QRコードのスクショを送ればいいだけなのだが、ババアは取り乱している。ラインで画像を待っていても一向に来ない。あと五分。放送で呼ばれた。そんな中ババアからQRコードが届いた。俺が急いで搭乗手続きを済ませていると、ガキが見たこともない顔をしてババアにキレていた。癇癪。これがガキの癇癪か。ババアのせいじゃないか。クソガキ、俺にもキレさせろ。


そうは思えどガキには時間がない。急いで搭乗口に消えて行き、ろくにさよならも言えなかった。最後にショートメッセージで無事乗れたか確認したところ、大丈夫だという返信が来た。そしてほっとしたところで、ありがとうというメッセージが送られてきた。10円かかったやり取りで、安堵と心の温もり、幾らかの寂しさが伝わった。今度からは俺もこのガキを10円クソ野郎と呼んでやろう。


それから俺は喫煙スペースに行き、アイコスを吸い始めた。空は青く、その青の中を一機の飛行機が盛大に飛び立っているのが見える。あれだろうか。神戸にも中華街はあるしテラスのレストランだってあるはずだ。食べたいものはそれなりに食べれる。その時、長崎を思い出してくれるだろうか。少なくとも夢を持って帰ったんだ。夢の隣にある長崎や俺たちをたまには思い出すだろう。


夢。俺も何かに向かって生きられるだろうか。ヒステリックでブルドッグなババアに育てている不登校児でも前に向かえる。それなら俺にも。ただ向かう先が分からない。向かう先が分からないなら、分からないところから考えればいいのか。タバコの火が消えたところでラインが入った。嫁からだ。

「次はあなたの番だね。応援してるよ」

青空を見上げた。飛行機はもう小さくなっていた。俺もありがとうと言いそびれた。そしてもう一件ラインが入った。ババアが送ってきた楽天パンダが謝っているスタンプだ。赤字でいい。メルカリでベトナムに出品してやる。

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