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第99話 覗かれていたようだ

 夜も明け、楽しい夜だったと思いながら身支度を整えていると昨夜、ドアの前で聞き耳を立てていたエリンが入ってきた。

 不満なのか何とも言えない表情でこちらをじっと見ている。何か言いたい事でもあるのかと尋ねてみた。


「どうしたエリン? 今日は良い朝だな。天気も良いし王妃も連れての旅行にちょうどいい」

「ねえ? ライリーさん。昨日は随分とお楽しみみたいでしたね。あの娘がそんなに良かったんですか? どうして私と王妃でお相手しようって言っていたのにどうしてあの娘なんですか?」


「……俺の元いた世界じゃ、アイドルっていう女だけの舞台役者のグループみたいなのがあっていつも舞台に立たせる順番とか売り込む順番、方法で揉めていた。

 どうして揉めるかって? そりゃ自分が一番じゃないと気に入らないっていうヤツもいるし、正当な評価をしてくれないからってのもいるし、皆が平等じゃないからと気に入らないというヤツもいる」


「そんな事を言ったってしょうがないじゃないですか? 私がライリーさんと寝ているのを想像するたけでどうして満足できるんですか? あの宿屋の娘のように夜這いをすれば寝てくれるんですか? 一緒じゃないですよね?」


「そう。一緒じゃない。というのもそのアイドルグループにはグループをまとめる役の人間がいた。立場が上なのでどの順番で売り込んでいこうかとかを考える。

 そして俺がその立場であれば本当に実力のある良いメンバーはなるべく良いタイミングで目立つところで出そうと思う」


「そんな事言ったって、待てば待つほど私も歳をとるんですよ。そうなったら今の魅力は無くなるんですよ。そりゃ胸は大きくなるかもしれないけど今の感じは今だけなんですよ。それが良いタイミングじゃないんですか?」


 エリンも王国民だけに冷静な判断の出来る賢い子ではあるがやはり歳相応に好奇心と我慢の出来ない感情というのは存在するようである。

 かなり怒っている様子であるが、彼女も他の王国民と同様に支配欲というものはほとんど無い。独占欲もほぼ皆無である。


 なら、何がそうさせているのかと考えるならば抗えない人間の欲望と好奇心であろう。ライリーも向こうの世界でそういうものをもっと向けられていればあんな悲しみに満ちたぐんじょ色の青春にはならなかっただろう。

 とはいえ、まずはエリンをなだめる必要があるが欲望と好奇心を押さえるのは難しい。それに下手に押さえれば関わってはいけない類の人間と交わる事もある。


 前の世界ではそんなのは日常茶飯事で優良物件ほど避けられる変な世界であった。だが、この世界はそんな事はない。やんちゃをするのがカッコいいなどと言う考えは少数派であるからだ。

 まあ、そんな事を考えていてもしょうがないのだが、この世界の基準で考えればどうなのだろうか? これはライリーも初めて経験するものである。


 エリンはライリーを好きでいてくれている。しかし、今は時期ではない。そして前の世界でのよくある事のように関わってはならない人間と関わるという心配は皆無である。

 言い訳を話ながら考えているとやっとピンと来た。これならエリンも納得するかもしれない。


「そうだな。エリンの華奢で可愛らしい感じは今しか無いのかもしれない。だが、その感じというのはどうすれば無くなって行く?

 歳を重ねれば無くなって行くというものではないだろう。それこそ夜這いして寝てしまえば雰囲気が変わってしまうだろう?」


「む……そう言われると。でも、魅力的になりますよね?」

「おっと、その魅力というのはさっき言った今の魅力とは矛盾するものじゃないのか?」


「そりゃ……そうですけど」

「だろう? なに、また酔いつぶれた時にこないだみたいに皆で寝ればいいんじゃないか。俺は可愛い娘が三人も出来たみたいで幸せを感じたぞ」


「もう、しょうがないですね。ならそういう事にしておきましょう。今日は次の村に向けて出発するんですよね?」

「だと思うんだが、俺はこの世界の地理はさっぱり分からん。村なのか町なのか?」


◇◇◇


 エリンが落ち着いたところで宿の食堂へと降りていくとそこにはカセムもいた。次はどこへ行くのか聞いてみる事にした。


「なあこの、のどかさが最高の村からもこの食事が済めば発つんだろう? 今日はどこへ向かうんだ?」

「ああ。そういえば話してなかったな。これから向かうのはこの農業地帯の農作物を集めて各都市に輸送する中継地点になる町だ。確かそれなりに酒場とかもあったと思う」


「カセムにしては夜の店の情報が曖昧なのも珍しいな。ほとんど無いのか?」

「いや。むしろ輸送中継地点の町なので多い。宿もかなりある。輸送に携わるのはほとんどが男だからな」


「ならどうしてだ? 魅力的な店がないのか?」

「それがな。あの町の近くに行った時は確か町に入らずに近くの草原で野営したんだ」


「ん? 王国軍が入ると都合が悪い町なのか?」


「都合が悪いというか、あの町は馬車が行き交う量が多すぎて身動きが取れなくなる事がある。それにあの町は何というか下品なだけみたいなところがある。

 今までに行ったことのあるどの町よりも品がない。そういう町は夜の店も淡白だったり適当だったりする」


「なるほどな。それはあるかもしれない。俺もそういう町に居た事があったから何となく言いたい事は分かる。でも、前の世界のあの町は他の都市から来たのもかなり居たぞ」

「ああ。あの町もそうだ。交流が盛んな町だから他から来ているのも多い」


「まあ、といっても町の雰囲気からかけ離れたような人間じゃかえって浮いてしまうよな」

「そういう事だ」


 その話を聞いてたソフィアは言った。


「ねえ、そんな事言ったってカセムはどうせ店に行くんでしょ?」

「そりゃそうだ。期待外れな可能性が高いかもしれないが未知の興奮がそこにあるのかもしれないからな」


 夜の店が生きがいになっている男なのにあまり乗り気でないのが良くわからないところであるが、とりあえず次の目的地は決まった。

 どうして乗り気でないのか考えて見ると彼は情熱的な女性が好みなのかもしれない。この辺りは牧歌的だからか確かに落ち着いていて飾り気のない感じである。


 次の町へは比較的近いので今日の夕方以降には到着する予定だと言っていた。カセムのやる気が少しは戻ってくれればいいのだが?

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