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第100話 アウトローな町

 翌朝、ライリーらは次の町に向けて出発する事となった。次の町はこの辺りの農業地帯の農作物等を輸送するための中継地点なのだという。

 多くの馬車や人が行き交うが品が無い町なのだという。ライリーは前の世界でもそんな感じの町には行った事があるのだが店がほとんど夜なのに閉まっていたのを思い出した。


 馬車の御者台に座り、昨晩は良かったなとおもいつつ景色を見ているとソフィアが横に座った。


「ねえ、昨日の夜は何をしていたの?」


 昨日の夜と言えば娘と寝たが、その時に足音がしていた。扉の前に居たのがソフィア達であれば見られていた可能性も高いので適当に誤魔化すのもなんなので一緒にいた事については話す事にした。


「ああ。宿の娘と月明りを見て過ごしていた」

「月明り? あの人の瞳じゃなくて?」


「そりゃ会話するとなると瞳も見るしかないな。月明りと同じように自然と目に入るものはあるもんだ」

「まあ、それはそうなんだけど。一緒に寝てたんでしょ?」


「一緒に酒も飲んでいたからな。酔いが回ってそのまま寝てしまっていたと思う」

「ふ~ん。まあ、いいけど」


 やはりソフィアは物分かりの非常に良いヒロインなのでキツく咎めたりという事はしない。それにこの世界だとそもそも咎める行為でもない事も多い。

 それに前の世界では女性との縁が無さ過ぎて不幸な日々を過ごしていたんだ。せっかく良い世界に来たんだから少々はいいじゃないかと思うところである。


 そんな事を考えているとふと、気になったのが何故次の町はカセムがかなり好きそうな町なのにイマイチな反応なのか気になったので馬に聞いてみる事にした。


「なあ、カセムは次の町に行く事はイマイチ乗り気ではないみたいだがどうしてだと思う?」

「そうだな。俺も前にカセムとは同じ部隊だったかどうか忘れてしまったんだがあの町には行った事がある」


「そうなのか。どうだったんだ?」

「まあ、カセムの言うように馬車の台数は多いし何かと品の無い住民が多い感じだな。それこそ海賊の多い港町とかそういう感じだ」


「なるほどな。王国に馴染んでいる人間だから合わないという事かもしれないな。俺の前にいた世界ではそういう町は普通にあった。

 王国の町は大抵がそういう町と比べるとお上品だから感覚が合わなくなるのかもしれない。海賊には多分、出会った事はないはずだが?」


「そういうことか」

「ところで、こんなファンタジーな世界なんだから海賊くらい普通にいると思うが船は帆船なのか? 海賊旗をなびかせて男たちの汗と酒と腐った魚の匂いが海賊酒場に入れば漂って来そうだな」


「ああ。そういうのも居るぞ。今は東に向かっているがずっと北西の方に行くとそういうのが沢山いる国がある。確か次の町にはそこからの魚も入ってきているんじゃなかっただろうか?」

「そんな遠いところから魚をどうやって運ぶんだ? 腐るんじゃないのか?」


「氷魔法をかけた箱があってな。それに入れて運ぶから腐らないぞ」

「冷蔵庫みたいなもんか」


「王国には冷蔵庫があるが、この辺りとかにあるのは凍りの魔道具だな」

「違いが分からんな?」


「冷蔵庫は魔石の魔力を使って科学的に作った道具で、氷魔法の箱は魔法をかけた魔道具だな。氷魔法をかけた箱は魔力ゲージがあって減ったら魔力を注入するが、冷蔵庫は魔石の交換か魔力注入かのどちらでもいける。それに持続時間がまるで違う」

「そういう事か」


 この世界こそ内陸部の面積がかなり広いので冷蔵庫的なものがないと海産物を運ぶのは難しいと思っていたが魔族領にも似たようなものがあるようである。

 そんな冷蔵庫の話をしていると次の町に到着した。街道が整備されているので思ったよりも早い到着となった。


◇◇◇


 町に到着した一行は中央通りを馬車で移動しているが、確かに馬車の数が多い。しかも渋滞していて動かない。

 そして動かないのかと思いきや、納品までの時間が危ういのか細身の馬車が通してくれと物凄い速度で迫ってきたのだが隣の馬車の御者が美人だったからなのかは分からないが幅が数センチも無い程なのに勢いがあるので、荷台の棒にスカートが引っ掛かりそのまま荷台に乗せられてしまった。


「下ろしなさいよ! バカじゃないの!」


 下着も丸出しで怒っているが、よく見ると下着もスカートも破れているように見える。そのまま止まることなく走って行ってしまった。

 隣の馬車はというと、この世界の馬は幸運な事にほとんどの馬が人の言葉を話せるし何処に荷下ろしをすればいいか理解しているので馬だけ取り残されてもライリーの前の世界のように誰かが引いて行く必要がある事はあまりない。


 御者が居なくなってしまった馬車の馬にこれからどうするのかライリーが尋ねた。


「なあ、ご主人が居なくなってしまったがその荷物はどうするんだ?」

「ん? 他所もんだなお前ら。この町じゃこんなのは日常茶飯事で酷い時は馬車ごと奪われるからな」


「そんなに治安が悪いのか? 馬車ごとって言っても馬はどうするんだよ?」

「そりゃお前……馬刺しになりたくねえから従うしかねえよ。剣を突き立てられたりシミターを首にかけられるんだぜ?」


「カセム、この町はこんなに治安が悪かったのか?」


 尋ねられたカセムはこれに答えた。


「前に来た時はここまでじゃなかった気がするんだがな? せいぜいスリか横領、かなり運が悪い時で町の郊外で山賊に襲われるとかそんなもんだった気がするが?」

「それがなあ、ここから西の方の工業都市で魔族が幅を利かせてるのは知ってるか? その影響なのか、モノの相場が狂ってんだよ。毎日、変な変動の仕方をしてる」


「なるほどな。それで民も右往左往しているから治安も悪化しているのか」

「そういうこった。俺はこの交差点を曲がって向こうの街道に出るんだが御者が誤射されてるかもしれねえから停留所で待つ事にするぜ」


「ああ、パンツ丸出しだったからな」


 そう言うと馬は荷車を引いて向こうへ行った。本当に品が無いが中枢国のように悪意に支配されているような感じではないので大分、マシな感じがする。

 王妃を連れてきているのである意味では社会勉強になるかもしれないがここまで治安が悪くなっているとなると一人で行動させるのは危険なので護衛は常に誰かが必要だろう。


 そう、どこの世界でもそうなのかお上品なところでずっと過ごしているとこういう下品な界隈は新鮮で心躍る未知の世界のような感じがして楽しくなってくる人種が存在する。

 連れてきている王妃もそのようで、馬車の外を見る目が好奇心で輝いているように見える。


 一行はそのまましばらく進み、宿の近くの停留所にこの小型の馬車を停車させて宿に向かった。

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