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第91話 休暇の終わり

 カセムが宿に戻った翌日、これ以上は怪しまれるので助けてほしいと王妃がまたライリーの部屋にやってきた。

 妙に焦っている様子からしてこの国の政府は裏では相当にしつこい調査をしているようで、この王妃は本当に亡命しなくていいのだろうかと疑問である。


「ラ、ライリーさん! もうこれ以上は誤魔化せそうにないです! どうかお助けください」

「……その焦りようだと殺されそうなのか?」


「いえ。そうではないと思うのですが私の付き人が急に休みをくれと言いだしたのと、世話人もどんどん、仕事を辞めているのです」

「ああ……権力を削いでクーデターを成功させようとしているのか?」


「うう……私も考えたくはなかったのですが謀反を企てている者が何人か居るようなのです」

「う~ん。俺もこの作戦を聞いた時に何か引っかかるなと思っていた事があった。魔貴族がこの国の企業の一つを牛耳って魔道具を密造して王国領を支配ってのが短絡的過ぎると思っていたんだが本当はこの国を乗っ取る事が目的だったんじゃないか?」


「そう考えると国に入り込んでいる魔貴族があまりにも多い事も納得がいきます。王国はそこまでは把握されていなかったのでしょうか?」

「それについては俺も分からん。だが、考えて見れば悪意に満ちた魔族というのは常に汚い思考をしている。悪しき欲望を常に成就させようとし続けている連中の動きというのは古代から変わらない」


「ではどうせ朝廷に入り込むし、入り込む余地がない国になるのも大分先だから王国から見れば大きな問題にはならないと判断されたと……」


「まあ、そんなところだとは思う。残念だが俺が前にいた世界なんてそれはもうどこもかしこもこの世界と比べれば遅れた国がほとんどだった。

 王国みたいな良い国になるのが何百年も先だというのが向こうの世界に居た時に分かったとして何か出来る事があるのかと言われるとそれも無かったと思う」


「そんな……何か出来る事はないのでしょうか?」


 王妃はずっと悲しそうな顔をしており泣きそうになっているが残酷な現実として受け入れなければならない。

 と言っても、謀反を企てている者がいて魔貴族まで噛んでいるとなると王妃に出来る事は少ない。


 しかし、幸運な事にこの街は王国から離れている方の街なので馬車で通信を行ってもすぐに返事が来る。それまで王妃をこの部屋で待機させる事にした。


「何にせよ、状況からして君を始末しようと画策している者が居る可能性はかなり高い。千里眼でも見ていたがまだこの国には君ほどの心の美しい人間は現実的ではないのかもしれない。

 これから王国と通信を行い、指示を仰ぐ。それまでこの部屋で待機していてくれ。ソフィアにも一緒にいるように頼んでおく」


 そう言うとライリーはソフィアに姫の様子を見ているように頼み、兵士も何人か警護に当たらせた。


◇◇◇


 馬車に向かったライリーは王国へ王妃から聞き取った内容を元に通信を行った。すると十分も待ったかどうかくらいで通信が届いた。

 内容は王妃とライリーの思っていた通りで魔族の介入を許してしまう国であるという事は変えようのない事実であり、それは何らかの刺激を与えないと今後も改善が進まないので今回の魔貴族の介入は今後の成長のために目をつむるという事であった。


 だが、民も王妃もこれに気が付いているので暴動が起こった後には王国が介入できるのですぐに落ち着きを取り戻す事も可能であるとの判断だった。

 そして問題の王妃の安全についてだが、朝廷に既に魔族がかなり入り込んでおり暴動が起きると同時に始末しようと画策している者が何人か居る事を千里眼で確認したと報告があった。


 これについては王国軍側で安全を確保し、工場を爆破後にそのまま王妃を東部へ連れ出し王国軍が到着したと同時に王宮に戻すようにした方がいいので少しの間、旅に同行させるようにとの事であった。

 この点については予定を変更して対処するのだが王妃がこのまま旅について来るような気もしているのであまり長い間、同行させると気が変わって王妃不在になってもいけないと思ったがその心配は無いそうだ。


 それにしてもこんな安全そうな国にも深い闇があったとは驚きだが作戦の決行は明日にでも行えというのでカセムのお楽しみの時間は案外と早く終わるようである。


◇◇◇


 宿に戻ったライリーはカセムと副隊長、王妃等を部屋に集め、盗聴対策を行ってから事の顛末を話した。


「……以上が朝っぱらから王妃が泣きそうな顔になって俺の部屋に来た理由ってとこだな」


 これにカセムは答えた。


「はあ……今回の休暇ももう終わりか」


 王妃の瞳にはうっすらと涙が見えるがカセムを気遣って尋ねた。


「すみません。私にもっと力があれば……でも、毎日のようにお店に行ってたんですよね? 普通、二日も続けて行けば飽きると聞いたのですが?」

「普通はそうでしょう。大抵の男には恋人が居たり、妻が居たりする。しかし、私はそうではありません。心の穴が店に行く事で塞がるわけではありませんがそれが惹かれてしまう理由という事です」


「それは失礼。でも、今回の作戦が終わって私を送って下さった時にまた店に行けばいいのではないでしょうか? その時は特別待遇の出来る店を案内させますよ」

「おお! 姫様! 騎士として精一杯の働きをしましょうぞ!」


「そんなに喜んでくれるなら何よりです。王国の皆さま、どうかよろしくお願いします」


 気丈な王妃を見ていると何とも言えない気分になるが頑張っている人を応援したくなるという気持ちは、心も熱くする。

 会議が終わると明日の作戦が上手く行くようにと皆、念入りに準備をはじめた。

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