第88話 怪しい眼鏡
朝から王妃が宿屋にやってくるとは見た目の割に不安定な国であると言えるがそれでも良い国にしようとする姿はライリーらも助けてあげたいと心から思い、王国にそれを伝えると再度、作戦を検討するので待機するようにと連絡があった。
と言っても休暇が伸びるほどの時間は掛からないだろうから今のうちにとライリーはソフィアと出かける事にした。
◇◇◇
街の中央通りに来た二人は露店で売られている珍しい民芸品に目が留まった。竹を使った籠で、中に小鳥でも入りそうな感じである。
「この籠みたいなのは何だろうね? 小鳥を入れるにも小さすぎるし、かといってもっと小さい動物を入れると隙間から逃げ出しそうだし」
この疑問に店主が答えた。
「これはね、中に小鳥を入れて運ぶための籠なんだよ。さすがにこの中に入れっぱなしじゃ可愛そうさ。もちろん、この籠の中に作り物の鳥を入れて飾る事も出来るし、そうしている人もいるよ」
「なるほどな。だから籠の横に小鳥の置物があるのか」
「そういうことさ。どうだい? 春になると庭を背にこの籠を吊るすと気分が楽しくなると思うよ?」
「う~ん。他にも見てみようと思うからまた後でね」
そう言うと二人は別の店へ向かった。次の店は飴細工のようなものと果物に飴を纏わせた菓子を売っている店だった。
「この赤くて小さい果物はなんだろう?」
尋ねたソフィアに店主が答える。
「ああ。それは酸っぱいけど爽やかな味わいで甘い飴と相性がいいよ」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、一つ貰おうかな? ライリーはどう?」
「そうだな。じゃあ、俺も貰おうか」
そう言うと店主は二本差しだしてきたので金を渡し、受け取った。食べてみると確かに爽やかな酸味と飴の甘味で美味しい。
「何か、前の世界でこんな感じの飴を食べたような気がするな」
「へえ、そうなんだ。……うん。美味しいね。甘酸っぱい感じだよ」
飴を舐めながら他の店も見ていると何やら怪しい雰囲気の店があった。品揃えを見ると宝石店のようであるが魔道具のようにも見える。もしかしたらと思い、店主に尋ねてみた。
「中々、面白い品揃えだな。もしかしてこれらは魔道具か?」
丸いレンズの怪しいサングラスをかけた店主は答えた。
「おやおや? お客さん、お目が高いね。そう、ここにあるのは一級品の魔道具ばかりだよ。何かお探しですかな?」
やはりといった感じだが、とても一級品の魔道具には見えないので実際に使ってみてくれと言ってみた。
「そうか、一級品か。確かに品質の良さそうなものばかりだ。どれを買おうか迷うので何か一つ、実際に使ってみてくれないか?」
そう言われた店主は眼鏡のような魔道具を差し出してきた。
「そうですなあ。ではお客さんは色男なのでこの眼鏡は如何かな? ……こうかけて、ここにボタンがあるので押してみてください」
そう言われ、ライリーが眼鏡に付いたボタンを押すとソフィアの服が透けて中が見えるようになった。
「ほほう。今日のソフィアのセットアップは薄ピンクなんだな」
「うん。そうだけど? その眼鏡は透視が出来る眼鏡なの?」
聞かれた店主は答えた。
「ええ。そうですとも。こちらは相手の服の中等を透視する事が出来る眼鏡で何か隠していても見つける事が出来るものです」
「まあ、似たような魔道具は持っているがこの魔道具が見る事が出来るのは服の中までくらいか?」
「三段階で調整できます。試しに押してみてください」
そう言われたライリーは続けて押してみた。
「どれどれ……更に深いところまで見えた。肌が見えるようになった。もう一段階押すと……おお、内臓まで見えるのか。これは民生品にしては妙に品質が高くないか?」
「そうだよね。内臓まで見えるのは性能が高すぎると思うよ。これはどこで仕入れたの?」
「おや? お客さん、魔道具に詳しいようですね。実はこれはこの街にやってきた魔貴族から仕入れた逸品で、少し値は張りますがお客さんたちのような冒険者の方には役に立つものであると思いますよ」
「確かに一理あるな。じゃあ、その魔貴族の名前を教えてくれたら言い値で買い、更に情報料を払おう」
「まいどあり!」
そう言うと露天商は魔貴族の名前を教えてくれた。どうやら一年以上前にこの街に魔道具の生産工場としてある企業の工場を買収に来たのだという。
そこは技術力が優れているようなところでは無かったが品質に定評があり魔族が技術を提供する事で価値の高い魔道具を生産する事に成功した。
そして偶然にも王国から破壊命令が出ている企業の工場でありそこで作られている魔道具をこうして手に入れる事が出来たという事だ。ソフィアも気になるのか貸して欲しいというので渡した。
「へえ、どんなのかな? ……ああ。ほんとだ。服の中が見える。もう一段階押すと……お! おおき……。もう一段階押すと……うん。内臓が見えるね」
「だろう? 何で内臓より前の方に驚いたのか分からんが高性能過ぎるんだよな」
「うん。これは一般人が使っていい魔道具じゃないね。でも、どうしてこんな自分たちが危なくなるような事をしたんだろう?」
「まあ、小遣い稼ぎが目的なのかこれを使わせる事で情報収集しようとしているのか分からんが、遠隔魔法無効化の魔道具を持っている俺たちならそこも調べるしかないよな。そういう魔法がかけられていたり機能がついてないか調べてくれないか」
「うん。やってみるね」
そう言うとソフィアは魔法でこの魔道具を持っている事にリスクが無いかを調べた。するとやはり使った時の映像が敵に送られるように機能が追加されていた。
「危なかったな。まあ、俺たちは無効化の魔道具を手放す事はないが俺たちの全裸の映像が敵に渡ったらそれはそれでまずい事になっていたからな」
「ほんとだよ。さすがに私たちの姿の詳細が知られると王国軍が関わっているのが知られるからね。それに私がドキドキしたのも敵に知られたくないし……」
「どう思うかは送信されないんじゃないか?」
「そうだけど、画面の揺れ方とかで分かると思う。私の裸を見た時はライリーは何とも思わなかったの?」
「ソフィアの裸は浴場とかでも何度か見ているからな。何というか、見ていて安心するんだよな」
「そ、そうなんだ……」
何とも言えない感情が表情に現れているソフィアとライリーは曇り空が少し暗くなってきたのを見ると宿に帰る事にした。
◇◇◇
宿に戻ったライリーとソフィアはカセムに店に遊びに行く前に通りで手に入れた魔道具をどうするか尋ねた。
「カセム。コイツを見てくれ。露天商から買った魔道具の透視眼鏡なんだが、敵にこの眼鏡を通して見た情報が送られるようになっている。
俺たちの装備ほどの性能は無いが民生品にしては性能が高すぎるので調べるとこのザマだった」
「なるほどな。となると王国に送ったとたん、まずい事になるな」
「王国製の魔道具と一緒に送れば大丈夫なんじゃないのか?」
「それが、転送ポータルは神からの贈り物だと言われている技術でな。どんなに優秀な魔法士や技術者が解析しようとしても魔法陣の術式で解明されていないところも多い」
「そうだったのか。ならこの眼鏡は送れないな」
「そうなる。では俺が有効活用したあと、敵に探られないように裏稼業の連中に捨て値で売ってくる」
どう有効活用するのかは分からないが多分、これから眼鏡をかけて通りを散歩するのだろう。カセムはうれしそうな顔をして宿から出て行った。




