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第81話 北上ルート

 寒い時期に寒い地域に行くのは実に面倒だが、暖かくなってから行けばいいものをと思っても時は待ってくれないらしい。

 暑さも多少は和らいだとは言え、南国の朝はやはり暑い。馬車の中は快適だが外は蒸し暑い事この上ない。


 早速、部隊の全員が揃ったところで山へ向けて出発する。馬車に推進装置が付いているから重さ自体はあまり感じないらしいが馬なので毛がある分、暑いので早めに涼しい山に到達したいと馬も言っている。


「しかし、暑いな。ライリーもすぐに魔族領行きなのは嫌だからと王城でずっと抵抗していたんだって?」


 馬が話しかけてきたので御者台に座っているライリーも答えた。


「ああ。そりゃ地獄から天国に来たのにわざわざ地獄みたいなところに行くとか嫌でしかないだろ?」

「まあな。つっても、王国でずっと農業とかだけして過ごして何か楽しいのか?」


「俺は前の世界じゃずっと嫌だなと思う仕事ばかりしてきたからな。こっちの世界じゃ好きな事だけして過ごせたらって思ってた」

「それは残念だったな。この世界が争いも何もない天国だったらちょうど良かったのかもな?」


「それはそれであの世って事になるよな。まあ、前の世界に居た頃はあの世の天国で美しい景色を毎日見て過ごすのも良いよなって思ってたな」

「そこまで酷かったのかよ」


「ああ、酷かったな。嫌な事があっても支え合う事のできる恋人とかがいればそこまでは普通、思わないもんだと思うが俺には居なかったし仲間だと思っていた奴らにも裏切られた。そんなところで生きていたいと思うか? 思わないよな」


 寒いところに向かっているからか陰気な言葉が止まらない。ソフィアが馬車から出てきて御者台に座った。


「何を言っているの? 寒いところに向かっているから暗い話題が止まらないの?」

「それもあるが魔族領に戻るのが早すぎたというのもあるな」


「それはしょうがないよ。革命が起きたら世界の全体に影響が出るし、動くなら早い方がいいんだよ。それに今回はなるべく遅くに出発してこのタイミングって言ってたよ」

「この早さでか。余裕を持って早めに出発させられていたらどれだけ早かったんだろうな?」


 そんな事を言いながら山に向かっていると徐々に蒸し暑さが薄れ、乾いた風と森の湿った空気が混じりだした。

 街道の左右には林が広がっており、湿った空気が濃くなるにつれうっそうとした森に近づいてゆく。


 まだ大分、先に進まないと次の街には着かないが森の街道に到達した時、この森は何かあるような気がしてならない予感がした。ソフィアも妙な感覚を覚えたのか不安だと言った。


「ねえ、ライリー。この森、何かおかしくない?」

「俺もそう思う。なあ、前にこの森に来た事があるなら何か知ってるか?」


 馬が以前にこの街道を通った事があるかもしれないので尋ねてみた。


「ああ。この森はな、出るんだよ。色々な幽霊が」

「嘘のルートを教えて惑わすヤツとかか?」


「そういうのも居るな。でも大抵は魔道具を使えば解決するぞ」

「歩くたびに道の繋がりが変わって目的地に辿り着けない魔法がかけられた道とかはないのか?」


「この森にはない。大丈夫だ。別のところにはあるけどな」

「そういう魔法の道ってのはどうやって進むんだ? 特に魔道具が無かった頃とかはどうだったのか気になるな」


「そうだなあ。俺たちみたいな馬が一緒だったらその辺の動物に道を聞く。人間だけなら魔法の法則性を確認しながら少しずつ進む。

 魔族や獣人ならカンが優れているのと動物や魔法のエネルギーを感じ取れるのも居るのでそういう特技を使うってところだな」


「なるほどな。何も知らずに迷い込んだら死あるのみだな」


「その通り。特に魔貴族の財宝とかを溜め込んでいる墓場への道とかは最悪だったな。アレは人間だけで行くのは危険過ぎる。

 獣人かエルフ、俺たちみたいな馬の手助けは絶対にあった方がいい。人間でも優秀な魔法使いとかなら何とかなるかもしれないがそれでも危ない。

 常に魔法を使い続けるのは仲間にとっても本人にとっても敵の巣窟では危険極まりない事だからな」


「ファンタジー世界ならではだな。行きたがるヤツも居そうだが俺は行きたくないな」

「ああ。俺だって行きたくないね。ソフィアはどうだ?」


 馬に尋ねられたソフィアは答えた。


「私もそういうところには積極的には行きたくないよ。いつも警戒しないといけないし、いつも驚かされるようなところなんでしょ?」

「いや。驚かされたらそれが命取りになる。うろたえている間に攻撃を喰らったら終わりだ」


「え? 一撃で?」

「ああ。初手の一撃が複数の攻撃って事も珍しくない。魔貴族の宝物を守っているヤツらだぞ?」


「そんなに怖いところなんだ……でもライリーが守ってくれるよね?」


 尋ねられたライリーは答えた。


「俺に任せろ! と、言いたいところだが俺は異能を持った人間でも無ければ異世界人だ。装備を強化した方が早い」

「また身も蓋もない事を言う……」


 粋がったところでどうしようもない。事実、転生ボーナスは顕現化現象を起こしやすくするボーナスである。

 実戦で役に立つのかというと即効性があるのかも分からないし確実性の無い能力である。信頼して使う事自体が危険になる可能性もある。


 そういうわけで、何をどう考えても王国製の魔道具に良い装備で向かう事に勝るものはないだろうと思うところである。

 そんな話をしながら森に入ってしばらくしたところで薄暗くなってきた。カセムが号令を出し今日はしばらく進んだところにある広場で野営すると言った。

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