第8話 嘆きの丘
「次に向かうのはこの町がいいと思うわ。」
ソフィアは机の上に広げられた地図を指差した。
「ハルジオンってところかい?」
「えぇ、そうよ。港町ハルジオン。この町の隣には海があるからどうしても船が必要になって来るのよ。それで、ここから一番近いのがハルジオンなの。ハルジオンは、比較的穏やかな町って噂もあるしリラックスもできて丁度いいと思うわ」
「このハルジオンって町へ行くには山を越えていかないと行けないのか?」
「ここの山脈は標高が高い山が連なっているんだけれど一箇所だけそんなに高くない丘になっている場所があるのよ」
「ここの『嘆きの丘』ってところかい?」
「そうよ。けれどここの丘には凶暴で巨大な狼が住み着いていて無事に通れた人は誰1人いないって噂がある場所なのよ。嘆きの丘っていう名前も、そこの狼の遠吠えが誰かが嘆いているように聞こえるからついたらしいわ。」
「嘆くような遠吠えかーなんだか悲しい狼だね」
「まぁでもいくら大きいって言っても、所詮は狼が一匹いるだけだろ?それなら
、俺様がいれば問題ないぜ」
「それもそうね、じゃあここを通って一直線にハルジオンへ向かえるわね!」
「そうだね、ところで狼っていうのはそんなに大きくなるものなのかい?」
「巨大な狼なんて正直言って聞いたこともないわ。多分殺されそうになる恐怖でどうにかなっちゃって実際よりもはるかに大きく見えたんじゃないかしら?」
「確かにそれも十分あり得るね。噂に尾ひれがついて回っている可能性も考えられるしね。」
「まぁここでぐだぐだ意見を出し合っても何もわからないしとりあえず行ってみましょう」
「それがいいぜ」
「じゃあ出発は明日の朝にしよう」
* * * * * * * * * * * * * * * *
三人は、馬車に乗ってハルジオンへと向かい始めた。
「いやー、まさかソフィアが馬車を操れるなんてな。超意外だぜ。」
「意外で悪かったわね。私だって特技の一つや二つあるわよ」
「まぁまぁ、仲良くいこうよ。」
「それはさておきこの森はやけに静かだね。野生の動物の気配が全く感じられないよ」
「確かに森の真っ只中にいるにしては静かだわね。もしかしたらこれも巨大な狼のせいかもしれないわね。警戒は怠らないように行きましょ」
その後もしばらく進むうち日が暮れてきた。一日でかなりの距離を進み、森も後少しで抜けるところだった。
「やっと森を抜けられるわ。そしたらすぐに嘆きの丘に出るから準備をして。」
「「了解」」
森を抜けると草原が広がっていた。そして少し先には、丘が一つやそびえ立っていた。すると、その丘の方から遠吠えが聞こえてきた。
ウォォーーン
遠吠えが聞こえたかと思えば次は大勢の叫び声と爆音が辺りを囲む山々にこだまして響き渡った。
「一体何が起きたいやがるんだ。」
「ここからじゃ何もわからない。ただ何かが起きているのは確かだ。僕たちも急ごう!」
丘のふもとまで来ると、鳴り響く轟音は戦いによるものだとわかった。登る途中もなんども炎が飛んできたが、その度にソフィアが光界で相殺した。
「頂上へ着くわ。状況次第では一気に加速して通り過ぎるわよ」
馬車はいよいよ頂上へ着いた。その瞬間、馬車は飛んできた何かに押しつぶされて見るも無残に砕け散った。三人はぶつかる前に無事脱出に成功していた。馬は驚いて走り去ってしまった。
「いってぇ。馬車がぺちゃんこになっていやがる。これじゃ歩くしかなくなっちまったじゃねぇか」
「それにしても、とんでもない不安だわ。」
「まったくその通りだね。これは簡単には通らなそうだね。」
三人の目の前には、およそ100人近くの軍隊が次なる攻撃に向けて構えていた。そして、それほどの軍隊を相手にしていたのは、潰れた馬車の上で今にも暴れ回らんと全身の毛を逆立てた巨大な灰色の狼だった。




