第2話 普通のこと
銀次たちは心地よい朝の光で目を覚ました。異世界に来て初めての朝だ。自然環境や生き物、建物などの文化、どれを見ても元いた世界とあまり変わらない所為か昨晩はぐっすりと眠れていたみたいだ。
早速3人は次なる街へと向かった。昨日のことを考えると朝ごはんの調達もまた一苦労するのかと思いきや、昨日とは打って変わって森にはあちこちに獣がいた。イノシシはもちろん、昨日は見かけなかったウサギやキツネなんかもいた。
「ここは私に任せてちょうだい!」
そう言ってソフィアは腰に携帯していた2丁の銃を引き抜くとなんと銃口からはレーザーのようなものが出てあっという間に10匹以上の獣を狩った。
「すごいっ!今のはもしかして創界術というものかい?それともその銃に何か秘密があるのかい?」
「どっちも正解よ!私は光の世界を創り出す『光界』を得意としているの。そしてこの銃は創界術を蓄積して放つことができる優れものなの!」
「そうか、これが創界術か、素晴らしい力だな!これは僕も努力すれば使えるのかい?」
「光界は使えるかわからないけど創界術自体は誰にでもできるわよ。っていうかさっきの反応といい今まで創界術を見たことも使ったこともないの?」
「実はそうなんだよ、色々と事情があってね」
さすがに別の世界から来たなんて言っても信じてもらえないだろう。
「おいおい、誰にでもっていうのはこいつの嘘だぜ、銀次。なんせこの俺様は人生で一度も創界術を使えたことがないんだからな!」
「創界術を使えない人間だって初めて会ったのにそれが2人もなんてねぇ。多分ここ最近で一番の衝撃を受けたわ」
「まぁいいわ、ちょうどいい機会だから私が2人に教えてあげるわよ」
「まず創界術には大きく分けて2種類あって、基本的には誰でも使える3つの術 『結界』、『鉄界』、『瞬界』と私の使う『光界』のようなオリジナルで何種類もある術よ」
「それくらいならいい俺様も知っているぜ!『結界』は特定の空間を作る術。『鉄界』は身体を鋼鉄のように頑丈にする術。『瞬界』は自分や物の速度を高速移動させる術だろ!」
「その通りよ。今日はとりあえず一番簡単にできる鉄界からやってみましょう!じゃあまずは2人とも手を出して強く握ってみて。」
言われた通り2人は拳を強く握る。
「鉄界は簡単でこれだけでも少し術が発動するはずよ。」
ソフィアは2人の手に触れた。しかし、彼女はあまりの出来事に思わず叫んでしまった。
「そんな、まさか!ありえない!2人とも創界術を使った時に出る独特の気が全く出てないわ!こんなことってあるのかしら!」
銀次はかなりショックを受けた。どうやら僕は創界術が使えないようだ。運動神経に自信があると言っても先日のフリートの並外れた身体能力を見る限り創界術がなくても別に大丈夫なんだろうと思っていた。しかし、先ほどのソフィアの技をみて、ソフィアから創界術を使えないという現実を叩きつけられもう言葉も出ない。
「まぁそういうこともあるわよ、元気出していきましょう」
ソフィアも初めての出来事にうまい具合に慰めの言葉が思いつかなかったようだがそれも仕方ないだろう。
受け入れ難い現実の知ってしまったせいか街へと向かう3人の足取りは重々しかった。
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昼くらいにやっとの思いで3人は街へ着いた。宿代と夕飯の確保のためにまずは道中で狩ってきた獣たちを市場に売ってきた。合計で銅貨は78枚になった。あれだけの量をとったも関わらずせいぜい一晩越せるだけの銅貨とは世の中は甘くないと改めて感じた。長旅で疲れたことだしまずは宿を取ることにした。お金はできるだけ温存したいので街で一番安い宿に決めた。少しボロい感じはあったものの最低限の設備は整っていたので文句はなかった。何時間か休憩をとり夕飯をどこで食べるか決めるために街を歩くことにした。ラーメンに加えオムライス、終いにはピザのお店まであった。食文化までもがにているらしい。そんなこんなで街を歩いているとある一軒の店で白い服を着た男が店を営む家族に向け銃を向けていた。
「大変だ、あのままじゃ殺されてしまう!助けに行こう!」
「残念だけどそれはできないわ。あの白い服、おそらくあれは 貴族 ですもの」
そのソフィアの怒りを押さえつけたように震えた声にフリートもまた歯を食いしばりながら同意する。
「貴族ってのは2人ですらかなわないほど強いのかい?」
「いいえ、強いっていうのもあるのかもしれないけど、それとは関係なくこの世界では貴族は絶対なの。逆らえば殺されることはまず間違い無いわ。あなたも命が惜しいならみなかったことにするといいわ。」
「なんだよそれ、貴族なら人も殺していいっていうのかい?そんなの絶対に間違っている」
そう言って銀貨は貴族のところへ走っていった。
「ちょっと、何をする気?バカなことはやめなさい」
ソフィアがそう言い終えるころには、銀次の拳は白服の顔面を殴り飛ばしていた。
「おい貴様、誰に向かって拳を振るっているのかわかっているのか?」
「誰だかはよく知らないよ、ただ一つわかることがある。あんたは権力に溺れたクズ野郎ってことだ」
「生意気な奴め、貴様もこの家族同様殺してやろう。私が創り出す炎にその身を焼かれろ!
『炎界』バーニングショット‼︎」
銀次と家族のいる方に向けられた銃口からは圧縮した炎のようなものが放たれた。銀次と違い助けることに躊躇したフリートとソフィアはただそれを見ることしかできなかった。
-僕の異世界での時間はあっという間に終わりを迎えてしまうみたいだな。それに結局誰も助けられずに自分まで殺されてしまうなんてほんと馬鹿だな。せめてあれに対抗するための力があれば変わったのかもしれないのにな。力さえあれば。-
白服の男が放った攻撃が銀次の手のひらに直撃した。このまま終わると誰しもが思った次の瞬間、放たれた炎は跡形もなくかき消された。
この光景に皆が唖然とする中、銀次は一つの文章を思い出した。
かつて一つだった世界を『創造主』の世界と『破壊者』の世界に分けた
ということを
「そうか、創造主というのはおそらく創界術を使う人たちのことだったんだ。だとしたら、僕には」
白服の男はいきなり現れた男に攻撃を防がれ憤った。
「貴様ぁ、いったい今何をしやがった!この私の攻撃を防ぐなど絶対に許さん次は最大出力での攻撃だぁー!!」
「バーニングショット‼︎」
銀次はそれに怯むことなく立ち上がり、またもや攻撃を真正面から受けると、先ほどと同じように炎は一瞬で消えて無くなった。白服の男が勝てないとわかり逃げ出そうとしたが銀次の拳が顔面を殴る方がわずかにはやかった。白服の男は吹き飛び壁に当たって気を失った。
「どうやら僕は『破壊者』側の存在らしいな」




