J:セクシュアルな逃走
ちさき先輩は私をベッドの上に押し倒す。両腕を押さえつけて、上着を剥ぎ取った。獰猛で野性的な動きだった。何度も口づけをして、私に自らの刻印を刻み込もうとする。私の胸の上に手を滑り込ませ、私が女性である所以のものを、指で弄ぶ。
「あ、あんた、もしかして……!」
「そうだよ、私はレズビアンだよ?でも、しょうがないじゃない。だって、なっちゃんがあまりにも可愛いんだもの」
「この嘘つき!なにがみんなのためよ!なにが私のためよ!あんたは自分の欲望を満たすために、私にあんな優しいこと言って……最低だわ!結局、あんたは自分のことしか考えてないのよ!」
「……そうかもしれない。でも、きっとわかるよ。これはなっちゃんのためになるよ。ふふ。なっちゃんの悪い癖だよね。いつも頭で考えてる。もう考えるのはやめよ?小難しい人生のお話も無し。大丈夫。私に任せて?私がなっちゃんの身体に教えてあげるから……これが高宮かんなの生きる意味なんだって……」
先輩の綺麗な指は私の太ももを伝って、遂にスカートの中にまで入って来た。もう止められなかった。私は全てを諦めて、先輩の前に肉体を差し出した。この日、何でもないただの休日に、私は初めて過ちを犯した……。
ちさき先輩はたかが外れた様に私を求めるようになった。家でも、外でも、学校でも、ところ構わず私を恋焦がれた。拒むことが出来ず。私は先輩のおもちゃになって、ただ犯され続けた。私は泣いて、叫んで、切なく抱きしめた。
「……私ね、なっちゃんのこと、少しだけわかるよ。それは私の思想じゃないけど、理解はできるの。なっちゃんは優しいんだよ。世界一優しいの。あなたがそんなにも生きることを憎悪するのは、この世界が辛すぎるからだよね。そんな世界に……みんなが生きていかなくちゃいけないから。それが我慢できないんだね。みんなの運命を嘆き悲しんで……世界のために涙を流すことができる」
「やめて……。私の心に入って来ないで……」
「私は……逢坂ちさきはなっちゃんのそばにいるよ?全世界がなっちゃんの敵になっても、私だけは永遠に味方なの。ずっと一緒だからね……」
「やだ!?あんた、どこに指挿れて……っ!」
先輩の言うことは半分当たっていた。ちさき先輩と肌を接している時だけは、憂鬱な感情や、生に対する憎悪や、果てしない絶望感を忘却することができたのだから。その後にやってくる、私を飲み込むような激しい後悔と疚しさがあるにしても。
私は先輩に深く溺れて行き、逃走線を引いて、ありもしない救いを願って、背徳を舐め続ける……。




