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第61話 ごめん、間違えちゃった。テヘペロ

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 第61話 ごめん、間違えちゃった。テヘペロ

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 悲鳴が聞こえてきた。

 どうやらタタニアと剛雷のゲキハの二人だけの第一独立部隊が、敵陣に突っ込んだようだ。


 篝火に照らされた人の群れの中に、青紫色がピカッと光る。あれは剛雷のゲキハの放電の光だ。


「二人とも楽しんでいるようだな」


 二人には、突っ込む方角しか指示をしていない。指示したって、聞かないともいう。だから好き勝手やらせる。

 あの二人にはそれくらいで丁度いい。


 次はホッタンの第二独立部隊が接敵したのが見えた。

 敵はいくつもの集団に分かれて野営している。

 これは各騎士家やその配下の騎士が率いる部隊が個々で野営しているためだ。

 このように本隊を囲むように各部隊を配置して野営しているのだろう。


 第一独立部隊と第二独立部隊は共に敵を引きつけている。いい具合に敵を間引いている感じだ。


「俺もやるか」


 強弓に矢を番え引く。

 魔力の強いヤツを狙い狙撃だ。

 射た矢は一人の騎士の胸を貫いた。矢は地面に突き刺さって爆ぜた。今回は太矢は使わない。使い捨てだから、もったいないじゃないか。

 強弓の威力が強すぎて矢が使い捨てになるのは諦めることにしたよ。(達観)


 最初は油を使った火攻めを考えた。却下。

 巨岩を収納しておいて、落下させてやろうかとも思った。これも却下。

 うちに手を出したことを後悔させてやらないといけないのに、簡単に殺してしまっては本末転倒だ。

 精神的に追い込んで、二度とうちに手を出せないくらいにしたい。

 それに、こういうことの積み重ねで、うちに手を出そうと思う莫迦が出てこないようにしたい。

 結果が出るか、出ても思ったようなものになるかは、分からない。ただ今後のことを考えれば、シュラード家とソルバーン家に手を出したら、酷い目に遭うと皆に思わせたいのだ。


 結局、騎士だけを殺しまくってやるのが、一番の嫌がらせだと思い至った。

 今回はダルバーヌの内戦と違い、うちが主導して戦いを進められる。好きなように戦いを終わらすことができる。

 そうなるように、精神的に追い込んでいく。


 二人目、三人目、四人目と上空から狙撃する。

 騎士と思われる魔力を強く感じる人たちを次から次に狙撃する。

 敵はどこから攻撃されているのかが分かっていない。

 気球は真っ黒に塗られ、ハックの魔法は熱魔法だから、光を出さない。だから、地上からの視認は難しいのだ。


 次のターゲットに狙いをつける。

 その時籠がぐらりと大きく揺れた。

 上空の気流に巻き込まれたようだ。


「皆、大丈夫か」


 確認すると、異常はないと返事がある。


「今の突風で結構流されてしまったようだ。姉さん、あっちに向かって」

「分かった」


 再び気球を敵陣の上へ移動させる。


「ハック。もう少し上に」

「はい」


 高度がやや下がっていたが、すぐに五百メートルを維持する。

 俺は再び矢を射まくった。


 二時間が経過したか、そろそろ引き時だな。

 エルグは上手くやってくれたかな。

 まあ、失敗しても皆が無事に帰ってきてくれれば、それでいい。


「ララ。ロッガにタタニア、ホッタンの退路を確認し、撤退を指示してくれ」

「うん」

「姉さん。俺たちはタタニアとホッタンたちの撤退を援護するよ」

「ほーい」


 タタニアと剛雷のゲキハは撤退の命令を受けて、全力で離脱を行った。

 この二人はなかなかいいコンビだ。

 剛雷のゲキハがタタニアの死角をカバーするように動いているように見える。なんだかんだ言っても年の功か。


 ホッタンたちも撤退を開始した。

 こちらはグルダがホッタンとシューをよく統率しいている。グルダに任せてよかった。


 俺は皆の撤退の邪魔になりそうな場所にいるヤツらを狙撃した。

 強いヤツを排除するだけで、敵は混乱する。指揮官がいきなり死んだら、混乱して当然だよな。


 タタニアとホッタンたちの撤退スピードは落ちない。もう大丈夫だ。


「ララ。エルグの部隊はどうだ?」

「作戦成功」

「おっ! やったな、エルグ。フフフ」


 俺たちも合流ポイントに向かう。





 夜が明けてきた。東の空が白んでいる。

 無限収納魔法で気球を回収して、皆と合流した。

 そこには目隠しされ、猿ぐつわを噛まされ、縄で縛られた男がいた。

 気絶しているようで、地面に力なく倒れている。


「こいつがアーク・シュバルクアッドか?」


 そう、こいつはシュバルクアッド家の当主である。

 どさくさに紛れて拉致してきたのだ。


 闇魔法を操るエルグのおかげで、第三部隊はアークが休んでいた本陣へ侵入して拉致までできてしまった。

 それも俺の狙撃の援護があればこそだけどね。(ドヤ顔)

 狙撃で本陣にいた騎士たちをごっそり削ったことで、敵は混乱したのだ。そのどさくさの拉致である。


「多分ですけど、そうだと思いますよ」


 誰もアークの顔を知らないのだから、そういう答えも仕方がない。


「でも、一番立派なテントで偉そうにしていたから、こいつかなーなんて思ったわけです」

「まあ、間違っていてもそれなりの身分の人だろう。構わないさ」


 あとは本人に聞いてみればいい。


 目が覚めたアークは騒いでいるが、猿ぐつわをしているので何を言っているか分からない。


「猿ぐつわを外してやってくれ」


 ホッタンがアークを座らせ、猿ぐつわを外す。


「何者だ!? 儂をガーナン・シュバルクアッドと知ってのことか!?」


 あれれ……アーク・シュバルクアッドじゃない? ガーナンって誰よ?


「ボス。ガーナンはシュバルクアッド家の分家当主でアークの従兄弟だったはずです」


 リットがそっと耳打ちして教えてくれた。


「年齢も近く、容姿も似ているらしいので、影武者だったんじゃないですかね」

「ほう、影武者か」


 リットにはシュバルクアッド家の人員について調べてもらっていた。

 どんなヤツがいるのか分からないと、作戦を立てることもままならないからね。

 そのリットからの情報で、平均的に高い能力の騎士は揃えていたが、剛雷のゲキハのような一騎当千の騎士がいないと分かった。

 そこでタタニアとホッタンを陽動に使い、エルグによる当主アークの拉致作戦を考えたんだ。


「そうか……。アークじゃないなら、捕虜にしても使えないか?」

「そうでもないと思います。アークには兄弟も子供もいないので、もしアークが死んだらこのガーナンがシュバルクアッド家を継ぐ可能性は高いですよ」

「ほうほう。それなら殺すのは少し考え直そうかな」


 役立たずなら生かしておく意味はないが、何かの役に立ちそうだ。

 よかったな、まだ生きていられるぞ。



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