第109話 秋祭りと政変と
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第109話 秋祭りと政変と
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秋になり、秋祭りを行った。
神輿を出してワッショイし、皆が熱く燃えた。
「「「ワッショイッ、ワッショイッ、ワッショイッ」」」
神輿は誰でも担ぐことができるけど、大人限定だ。そこまで激しいことはしないけど、さすがに子供が入って怪我をしては大変だからね。
「俺も―――」
「いけません」
俺も神輿を担ごうとしたのだけど、スライミン姫に止められた。俺が担ぐと、怪我人が出ると言うのだ。そんなことはしない! と何度もお願いしたのだけど、シュラーマ姉さんやニュマリン姉さん、ウチカ姉さん、クラリッサまで加わって俺を止めるのだ。
仕方なく、イカの姿焼きを齧りつつ、不貞腐れながら神輿が参道を通るのを見つめている。
神輿が神殿まで練り歩いたら、次はマルダによる祈祷がある。仏法守護社の実質的な責任者で宮司のマルダの祈祷は、ジール州の安寧を祈るもので、五穀豊穣、無病息災、家内安全など、色々祈っている。
祈祷が終わると、スライミン姫とクラリッサの剣舞が披露される。
二人の剣舞はさらに磨きがかかり、もはや神がかった華麗さと荘厳さを醸し出している。
そんな二人の剣舞を息をするのも忘れるほど、皆が見つめている。
クラリッサは本当にいい女になった。まだ十四歳だけど、色香というものが身についている。
スライミン姫も元々美しかったけど、さらに磨きがかかっている。
俺はこんな嫁たちをもらえて、本当に幸せ者だ。
二人の剣舞のおかげで、今年も結界は盤石だ。この結界の中には、魔獣も悪魔も入ってこられないことだろう。
「二人ともお疲れ様」
剣舞を舞終わった二人が下がってきたところで、タオルを二人に手渡す。
「ありがとうございます、旦那様」
「ありがと、ノイス」
「二人のおかげで、結界は盤石だ。助かるよ」
「あの結界を維持できるように、精進しますわ」
「うん、スライミン姫様と同じ」
「とはいえ、二人に頼っているばかりではいけないから、後進の育成も頼むよ」
「「はい」」
女性党員のみに限定し、剣舞について教えている。ただ、今のところ二人と同格の結界を張れるような人材はいない。
結界がどうして張られるのか、そのメカニズムさえ分かっていないのだから、なかなか難しい問題だ。
もうすぐ季節が冬に移り変わろうという時期のことだ、アルタンさんが面会を求めてきた。
俺にとっては舅にあたるアルタンさんなので、そんな堅苦しいことを言わず、気軽に訪ねてきてほしいんだけどね。
「ノイス様、クラリッサ様、お久しぶりです」
「お義父さん、ご無沙汰しております」
「お父さん、元気そうでよかったわ」
アルタンさんは船で交易をしていることから、すっかり肌が小麦色になっている。
遠い場所だと、ジール州から最も離れたバルドーム州や、大陸に渡ったりしているらしい。
そんなアルタンさんが、やや困惑した表情をしている。
「実は、帝都で政変がありました」
「政変?」
「大将軍フェルディア・ルグラン様が討たれましてございます」
「え?」
「大将軍閣下は、以前のノイス様への対応で、大きく評判を落としました」
それについては、いい迷惑だとソルバーン家とシュラード家の連名で抗議した記憶がある。
「元々大した評判などなかったところにあの愚行があり、民心は完全に離れていました。そこにつけ込んだのが、今回大将軍閣下を討ったトレイアス・ウバラッシュ様です」
「謀反、ですか」
「そうなりますね」
「トレイアス・ウバラッシュ様は帝都を掌握しております。おそらく近々大将軍に任じられるかと」
「なるほど……」
「ただ、気になるのは―――」
随分ともったいぶった口調だ。何が気になるというのだろうか? 俺には莫迦な大将軍が、殺されただけにしか思えないのだけど?
「ウバラッシュ家はそれほど大きな家ではなかったのです。それがこの数カ月で帝都周辺の州を併呑し、あっという間に大将軍閣下を討たれたのですよ」
「ほう……」
たしかに気になるね。
もっと聞くと、ウバラッシュ家は動員兵力二千人ほどで、その周囲にはその数倍や一万人以上を動員できる騎士家があった。それなのに、そういった家々を数カ月で併呑し、さらには帝都へと迫った。
こんなこと、簡単にできるわけがない。もしかしたら、俺のような転生者がいたのかもしれない。
だけど、俺の場合は毘沙門天様のおかげで、魔力を増やすことができたけど、そのトレイアスというヤツはどうやったのだろうか?
「情報が乏しいので、どのような判断をすればいいか、なんとも言えませんね。お義父さん、申しわけありませんが、春になったらまた帝都にいってもらえますか?」
「ええ、そのつもりです。すでに父のクライと、次男のフェイトに情報を集めておくように指示してありますので、春になったら追加の情報をお知らせできるかと」
「さすがはお義父さんです。頼りにさせていただきます」
この報から半月もたたずに、初雪が降った。これから本格的な冬がやってくることから、屋敷や仏法守護社の備蓄などの最終確認を行う。
雪深い土地柄なので、冬の間に物資が切れても簡単に補充できないからね。
特に炭や薪の備蓄は大事だ。これを怠ると、まさに冷凍庫の中で過ごすようなものだ。命に係わるんだよ、マジで。
「備蓄は全て問題なかったよ、ボス」
「それはよかった。物資の管理はたのむよ、リット」
「はい」




