城での再会
「さて、私は表に出て仕事をしましょうかね。いろいろと溜まっているもので」
「うん、頑張って」
笑顔でひらひらと手を振るロイさんに、ため息がちになりつつあるリーク様ははぁ、とため息をついた。
「あ、そうでした。シオン、貴女に手伝って欲しいことがあります」
立ち上がり、部屋から出ていこうとするリーク様が振り返る。
私は何でしょう? と首を傾げた。
「今、姚国が復興しようと各地に交渉を持ちかけているようです。その為に、今度大使がカロラにもやってくるそうなので、いろいろと相談させてください」
「え……大使? 復興……?」
初耳だった。あの滅びた国を立て直そうとする人物がいるなんて。
ただ、そんことが可能かといわれれば、それな否定せざるを得ない。もう人の手でどうにかなる程、簡単では無いことは学がない私でもわかることだ。
しかし、復興をさせようとしている人がいるなんて、どんな人物だろうか?
「その大使の名前は……?」
「確か、ウブ コウリンという人物ですよ」
「え、コウちゃん?」
知り合いですか、とリーク様に問われ私は頷く。
「コウちゃんは私の幼なじみです。年は三つ上ですが兄妹のように育ちました」
思い起こされるコウちゃんとの思い出。
まさか、そのコウちゃんが大使として、カロラにやって来るなんて。
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その日は快晴で、雲ひとつ無い空だった。少し汗ばむほどの空気の中、姚国の大使であるウブ コウリン―コウちゃんはやってきた。
姚国の正装である袴姿に身を包み背筋をしゃんと伸ばして赤い絨毯を歩いてくる。
お供は数人、どの人物も黒髪の姚国の人間だ。
コウちゃんは先頭に立ち、そんなコウちゃんをリーク様は出迎えた。
変わってない。幼さは抜けているけれど優しそうな顔はあのころと変わらない。
―いつかまた会いに来るから!
そういって別れた日から、かなり時間が経ったのに、ありありと思い出せるのはコウちゃんとの思い出が楽しいものばかりだったからだろう。
「ようこそ、カロラ王国へ。私はカロラ王国の辺境伯リーク ポッロと申します」
片手を差し出し挨拶を交わす。
「どうぞ、こちらこそよろしくお願いいたします」
無邪気だった声はいまや大人の男性へと変貌し、落ち着いた声色だった。
高かった声は、変声期を終えて低くなっている。
私の知らないところで、コウちゃんは大人になっていた。




