徘徊する甲冑
「あれ、そちらの方は……、まさか、シーちゃん?」
久しく呼ばれていないあだ名で、名前を呼ばれた。
気づいて貰えるように、私はバンダナを取っていた。
もしかしたら、姚国の人間が王族の近くにいれば、友好的な関係になれる、と思ったのもある。
けれど、一番はコウちゃんに気づいてもらいたかった。コウちゃんはなんなく私に気づいて、名前を呼んでくれた。
あの頃が一気に戻ってきたようだった。
「そうだよ、コウちゃん。久しぶりだね」
「ぁ、ああ、久しぶり……」
どれくらい年月が経ったのだろう。
最初の内は数えていたが、数が増えるにつれて嫌になって数えなくなった日を思い出す。
「懐かしいな。それに、また会えて嬉しい」
両手を叩いて喜びたい気分だった。
思わず涙がこぼれそうになる。
「泣くなよ、シーちゃん……」
コウちゃんは動揺したように、狼狽えていた。あわあわと、私の頭を撫でる。
あぁ、こんなところも変わらないな。
「……久しぶりの再会は、場所を設けましょう。積もる話でもあるでしょうから」
「あ、すみません……」
私たちの様子を見ていたリーク様が軽く咳払いをして、提案してきた。
そうだ、今はコウちゃんを姚国の大使として出迎えなければいけなかったんだった。
「後でまた話そうね」
「あぁ、そうだな」
「では、こちらへ。滞在中のお部屋へ案内します」
コウちゃんはリーク様に促されて、私たちとは別の客間へと案内されていく。その背中を見送る。
どんな話をしよう。思い返されるのは暗い話しかないけれど、出来れば面白い話がいい。
コウちゃんは今までどんな生活を送ってきたのか。
どこでどうして生きてきたのか、聞いてみたい。
「楽しそうだな」
「え?」
背後から突然降ってくる声に振り返ると、甲冑装備に身を包んだ人物が立っている。
顔は全面覆われているため、誰かわからない。
くぐもって入るが、その声は男性のようだ。
「まさか、ロイさん?」
そうだ、とうなづいて頭の装備を軽くあげた。
少し汗をかいたロイさんがニカッと笑う。
「……!? なんでロイさんが!? って、城を勝手に歩き回っていいんですか!?」
仮にも王子だけど、今は身分を捨てている身なのに、見つかったらどうするつもりだ。
私は慌てて装備を整えさせて、人気のない場所へ手を引っ張っていく。




