国王との再会
そこに自ら飛び込むには勇気がいる。逃げ出せないのなら、せめて自分で覚悟を決めていきたい。
目を閉じて、ふぅと深く息を吐く。
「よし、行きます」
「そこまでしなくても、平気なのに」
リーク様はそっと微笑んで、私とともに部屋の中へ入った。
相変わらず窓の締め切った、薄暗い部屋だ。王座があるにも関わらず陰湿な空気が漂っている。
そして、灰髪の王であるノーブル王が座っていた。ただ、あの時と違うのは彼の身体に無数の鱗が出来ていることだ。
深い皺が刻まれた眉根は、かなりの苦痛を感じているのだと思わせた。
栄養状態も良くないのか、顔色は白を通り越して土気色に染まっている。
魔物と、コウエイと同じ症状。
もしかして、この王も虹脈を飲んだのだろうか?
なぜ、王族までもが? とリーク様を仰ぎ見る。
「あなたに会いたいと言った人はこの方なんですよ。あなたは、この状態から人を救えるのでしょう?」
「いや……私はあの時無我夢中だったし、何が何だか良く分かってないんです」
不確かなことが多すぎる。
コウエイの時のように、治るとは限らない。そんなことで、ノーブル王に触れられないと首を振る。
「……姚国の移民よ、やるがよい」
今まで目を閉じていたノーブル王が、その重いまぶたを開けて私を見ていた。
その目は自分自身がそんな状態になりながらも、強い光を宿した鋭い眼光だった。
その強さに、私は怖気づいた。
何をここまでこの人を駆り立てるのだろう?
死に瀕しながら、生への執着が見て取れる。
「でも私、どうやったらいいか……」
あの時は、コウエイに触れただけでコウエイの身体から鱗は消え去った。
けれど、今回も簡単にいくだろうか。私の手は震える。上手く行かなかったら……?
どうなるのだろう。
「心配せずとも上手くいきますよ。あなたは選ばれた人なんですから」
とん、とリーク様に強く背中を押された。
その弾みで私はノーブル王の膝下まで飛ばされる。
ここまで来たら逃げられない。
震える両手を胸の前で握りしめ、やるしか無いとノーブル王の腕に触れた。
硬い人の皮膚とはおおよそ考えられない感触。コウエイの時と同じだ。
そしてそれに触れた時、部屋の中に眩い光が溢れ出した。




