再び訪れる玉座
「ローレル様はご自身の部屋に戻られますか?」
歩きながら、リーク様がそう問いかける。
「いや、いい。僕は今、王子として帰ってきたわけじゃない。だから、あの部屋を使えない。むしろ使いたくない」
ロイさんがそういうと、そうですかと淡白に総リーク様が返す。
「では、三人のお部屋にご案内します」
リーク様が連れてきたのは、客間のようだ。
隣り合う客間をどうやら充てがわれるらしい。
廊下の突き当りから、私、コウエイ、ロイさんという並びだ。
コウエイを部屋のベッドに寝かせ、それぞれ部屋の中へ入るよう促される。
「何かあったら、遠慮なく声をかけて」
「はい。ロイさんも」
あぁ、と少し疲れたような、それでも笑みを絶やさないロイさんに別れを告げて部屋に入る。
ちょっと前のことなのに、城下や城に戻るとは思っても見なかった。
それにひどく懐かしい気分になるのは、ここ数日でいろんなことを経験してきたからだろうか。
ベッドに腰掛けて、ふぅ、と息を吐くと疲れがどっと引き出された気がする。
少し眠ろうかとした時、控えめなノックとともに入ってもいいですか、とリーク様の声が聞こえた。
慌てて髪を手櫛で梳かすと、扉を開ける。
「お休みのところすみません。今、貴女に会ってほしい人が居るんです」
会って欲しい人? と首を傾げるがリーク様は行けば分かります、と言ってさっさと歩き出した。
結局、付いていくしかなく拒否権はまるで無いのだろうと半ば諦めてリーク様の後を追う。
歩いていく内に、何処へ向かっているのかすぐに分かった。
「まさかとは思いますが、リーク様、こっちって」
「だから言ったでしょう? 行けば分かるって」
私はここに見覚えがあった。それは初めてこの城にきた時リーク様に連れてこられた場所。
二つの玉座がある、この国の王と女王に会った場所だった。
「会いたい人は、ノビリス女王ですか?」
あの時は、女王としか話したことがなかった。
なら、また用があるのは女王かと当たりをつけたのだが、リーク様は首を振った。
「貴女に会いたがっている人は、ノーブル国王ですよ」
えっ、と声が漏れる。
会ったことはあるが、一切言葉を交わさなかった灰髪の王が私に用?
怪訝そうな顔をした私の顔を見て、リーク様は落ち着いた声で大丈夫ですよ、と言う。
「あなたの力が今必要なんです。だから会ってください」
両開きの白い扉の前に立ち、リーク様は数度ノックして扉を開ける。
ゆっくり開いた扉の奥から、生温い不快な空気が流れ込んでくる。それはまるでなにか生き物が吐く吐息にも思えた。




