この国を守る覚悟
「これを飲めば、私も虹脈と繋がれるのか」
「恐らく。ただ、実験は上手く行っていません。何があるか保証はできかねますよ」
大きなベッドの上で、灰髪の王は横たわっていた。
その腕は異様に細く、枯れ葉のように肌は荒れていた。何処からどう見ても、死期が近いように感じた。
それでもいい、と重く苦しい声で灰髪の王は言った。その手に持った虹脈のかけらを一気に口に入れて飲み干す。
それが、どんな意味を持つか私はすぐに分かった。
灰髪の王はすぐに苦しみだし、口から泡を吹いた。
喉を掻きむしるように首を押さえ、だけど必死に息をした。
それはまるで、溺れないように上へ上へ目指しているようだった。
やがて、その動きが止まる。
「ノーブル王?」
リーク様が、その肩にそっと触れる。
ぴくり、とその肩が跳ねた。ゆっくりと開かれる目は相変わらず濁っていた。
「あぁ……」
地を這うような声で、ノーブル王はその腕を上げる。
ちらりと覗くその肌に、鱗が見えた。
「これで私も、魔物になるということか。たが、諦めるわけには行かぬ」
濁った目に燃え盛る炎が見えた気がした。
なんとしてでもやり遂げる、そういう覚悟。その先に、自分が苦しむことになろうとも。
「それに、儂は見た。あれは虹脈だ。言葉が通じる。あれを操れればこの国の守りをさらに強められる」
「そうですか、このことはローレル様には?」
いいや、とリーク様の問いにノーブル王は首を振る。
「この国をローレルには任せられん。あやつは優しすぎる。姚国に加担しすぎ、この国を守る重責に耐えられるとは思えない」
こうやってな、とノーブル王はリーク様を見た。
リーク様はそれに答えるように、そうですねと頷いて自身の服の袖をまくった。
その腕に、ノーブル王と同じ鱗が見えた。
リーク様! と私は手を伸ばす。
そんな事をしても届かないことは分かっていた。
これは虹脈が見せる過去の記憶。虹脈と言葉を交わせる、あの人、お母さんが見せている。
すべてを知り、私に託そうとしている。
その思いを、私は確かに受け取った。
段々、意識が遠のく。過去の記憶の終わり。次に、意識を取り戻す時は、現実だ。
「絶対に、何とかしてみせるから! 待ってて……お母さん!」
力の限り叫んだ。その先で、声が聞こえる。
待っているわ、と。微笑んでいる気がした。




