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第25話 舞うシトラス

トープから見たシトラスは、思慮深くて格好いいお姉さんである。


リーダーシップを惜しげもなく発揮し、恋人と豪語するクロムと会話する際には、愛らしく茶目っ気を見せる時もある。


醸し出す雰囲気が柔らかく、誰からも好かれそうな存在。

そんな印象である。


自分には中々出来ないなあ、と思う。

関係ないけど、リラには一生どころか十生かかっても無理だと思う。


さて、そんなことを思いながら改めて現状を認識すると…。


13人が、王都のとある一角、大通りから少し奥まった場所に、地面に伏せて気絶している。

持ち物検査の結果、全員B~Cランクの冒険者である。


実力的にはそれなりの人たちだったと思うけど、敵意を向けられた瞬間のシトラスさん…シトラスは凄いの一言だった。


剣を抜くこともなく、人と人の間を踊るように駆け抜け、次の瞬間には全員が地に伏していた。

実力が違いすぎるということもあるんだろうけど、叩きのめすでもなく、投げ飛ばすでもなく、優しく意識を刈り取る様は、まるで舞踊家のようだった。


ちょっと恥ずかしい気がするけど、「舞姫シトラス」という単語が脳に浮かぶくらい、鮮やかだった。


…。


ちょっとじゃなく大分恥ずかしい気がする。

うっかり口を滑らせないように気を付けよう。


さてこの人たち、別に僕たちを襲ってきたわけではない。

「ある程度長い距離を移動するかもしれないから、準備は進めておきましょう。」というシトラスの提案を受けて街に買い出しに来たところ、揉める冒険者パーティ3組のいざこざに巻き込まれたのだ。


「この人たちも、あれかな?」

「なぜかパーティの主要メンバーが抜けたってやつでしょ?恐らくね。」


言い争っていた内容が、引き抜きが…うちの回復役が…などと、いかにもメンバー構成で揉めていた感じだったので、恐らくそうなのだろう。


でも、こんなところで揉めたとして、何も得るものは無さそうだけど…。

するとシトラスが、「王都を混乱させたい人がいるのかしら」と呟いた。


「というと?」

「うーん、一つ一つはそれほど大したことはないけど。」

「一つ一つというと…パーティメンバーの脱退とか、召喚陣とか?」


いや、召喚陣は大事だな。多分。


「そうね、それに行方不明なギルド職員とか、そもそもこんなところで揉める事自体も変だしね。細かい出来事を全体として捉えると、どうしても王都に何かを仕掛けているとしか考えられないのよね。」


うーん…と悩むような仕草のシトラス。

でも、実際には悩んでいるというよりも、より詳しい状況判断のために情報整理中ということだろう。


相当切れる人だし。


「まあいいわ。この人たちは自業自得で放っておくとして、さっさと買い物をして宿に戻りましょう。」

「そうだね。」


どうやら一旦整理は終わったみたい。

他の人も色々情報を仕入れているだろうから、宿に戻ったら皆で情報の擦り合わせだね。

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