第19話 指揮者は運命を変える。脇役だけど。
王都の一角、その2。
見た目は16~7の女性、実際の年齢はそれよりも少し下くらい、そんな女性…少女は、先程の会話を思い出しつつ、思案にくれていた。
Aランクパーティ『魔物ハンター陽光』のリーダーから、「お前の指図はもう受けない!とっとと立ち去れ!」と言われて追い出されたからだ。
実際には、追い出されたとは言いつつも餞別は貰っており、パーティメンバーの装備の中でも屈指のレア品、【万物流転の指輪】も指に装備したままである。
さて、この少女のメインジョブは【指揮者】。
自らの戦闘能力は低い(低くない)が、後方からの支援・指揮に特性をもつ、あらゆるランクのパーティが欲しがる冒険者の中でも屈指の人気ジョブだ。
だが、追い出された。
実際のところ、自分の性格が少々キツめで、戦闘中の指示も語気荒めなのは理解している。
それでもパーティメンバーの命には変えられないと頑張っていたつもりだった。
「追い出すことはないわよねー。」
追い出す理由も何だかよく分からず、追い出すと言いつつ餞別は手厚い。
しかも、この【万物流転の指輪】。
装備していると、たとえ死んでも、いつの間にか別の場所にいる。
場所がランダムなため多少使いにくそうだが、指揮者のスキル「風の調べ」によりパーティメンバーの場所まで一瞬でワープできるため、実質不死?!というとんでもない性能である。
追い出しつつも、何故この指輪をそのまま自分に渡したのかは正直よく分からない。
「まあでも今更よね。」
このままボーっとしていれば、たとえ今は潤沢でもいずれ金は尽きる。
さっさと新しいパーティを探すべく冒険者ギルドに向かおうとすると、路地裏から微かに悲鳴が聞こえた。
腐っても冒険者、こういう時に聞かなかったフリは出来ない、と少女は聞こえた方角に当たりをつけて走り出す。
すると、路地裏の一角で蹲っている老人がいた。
地面の上には血だまりが広がり、よく見ると老人の両腕もその血だまりの中に転がっている。
一瞬で状況を察した少女は、指揮者のスキル「運命(を自由に改変してあった事実をなかったことにするチート)」で、老人の体をあっという間に元通りに癒す。
あらゆる運命を自在に操る、まさにチート中のチートスキルだが、当然、程々に善なる方向に向けてしか使うことはない。
さて、自らの命と、命と等しいほど重要な「剣神の腕」を失わずに済んだ老人。
神をも殺める剣の技を持っているのに、なんでまた簡単に腕を切り落とされたんですかね、という永遠の謎を持つこの老人は、これ以降、少女に絶対的な忠誠を誓うことになる。
最強の矛と、不死の盾。
そんな組み合わせがもたらす未来は…特に何もない。
何故なら、脇役だからである。




