第18話 とあるパーティから追い出された脇役。
王都の一角。
「さて…。」
と呟く一人の少年。
先ほど、Aランク冒険者パーティ『苦渋の選択』から追い出されたばかりである。
この少年のメインジョブは【荷物持ち】。
そう、荷物持ち。
実はこのジョブ、名前からは想像もできないが、冒険者パーティならば1人は確実に保持しておきたいジョブである。
見た目は普通のこの少年も、その外見から想像もできないような輸送量を誇り、輸送時の揺れ軽減による内容物の保護や、その内容物の重量・個数把握と出し入れ管理等々、量・質ともに【究極の荷物持ち】なのだ。
パーティから追い出すどころか、あらゆるパーティから引っ張りだこなジョブであるはずだが、その足取りは重い…、かと思いきや、そうでもない。
つい先程、「お前のようなグズが同じ空気を吸っていると思うだけでキレそうだ!今すぐ立ち去れ!」と、『苦渋の選択』のリーダーからパーティを追い出されたものの、不思議なことに追い出された割にはご丁寧にパーティ共有資産の分割や装備の譲渡などをしてくれた。
最後に別れるときも、「何で追い出したんだっけ?」という雰囲気が満ちていたが、ま、まあいいか、という感じだった。
一応、「自分の代わりはいるのですか?」と聞いてみたが、別にいない、ということで、なんとも歯切れの悪い別れだったような気がする。
「とはいえ、追い出されたことは事実だし、稼がないと食べていけないしな。」
と、気持ちを切り替えて加入できるパーティを探そうと冒険者ギルドへ足を向ける。
すると、すぐそこの路地裏から、かすかな悲鳴が聞こえてきた。
専門は荷物持ちとはいえ、何か不穏な動きがあれば反応してしまうのは冒険者の性というものである。
辺りを見回して見当をつけると、するすると路地裏を縫うように走り出す。
しばらく進むと、地面に一人の少女が倒れていた。
「大丈夫ですか!」
と声をかけつつ近づくと、地面にはかすかに血の跡が残っている。
様子を見ようと抱き起こすと、どうやら右肩に深めの切り傷があるようだ。
すると少年は、荷物持ち専用スキルである「荷物(どころかあらゆるものを一瞬で直すチート)修復」で少女の傷を治す。
そして、「荷物(どころか病気から精神異常から何から何まで整うチート)整理」で少女の体調を完全に回復させる。
少年が「これは自分の荷物」と思ったものなら何でも直せるヤバいスキルだが、当然、自分がそんなにヤバいスキル持ちだとは「気づいていない」。
気づいたら物語が始まらないので、あくまで、気づいていない。
さて、瞬く間に回復した少女は、少年の腕の中で目を開ける。
そして、当然、一瞬で恋に落ちる。
何故か。
少年が「自分の荷物」として認識して、回復させたからである。
この少年の真に恐ろしいところは、輸送量でも回復スキルでもない。
ありとあらゆる存在を、「お前は俺の荷物。黙ってついてこい。」と従わせてしまう能力、【お前は俺の荷物持ち】である。
なお、少年はこの能力に気づいていない。
おそらく一生気づくことは無いだろう。
何故なら、脇役だからである。




