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第14話 怪しい仕掛けを発動させてみよう。その2

先程まで暴れ狂っていた召喚陣は、跡形もなく消え去ってしまった。


そして更地に散乱する骨と、地面に座り込みながら「儂のナイスバディが…」とブツブツ呟く少女。

これはどうしたものか…。


「これって、シトラスさんがアレを切ったからですか?」

「おそらくそうだと思う。」

「そうねえ。何か変な感じがしたから、まとめて切り飛ばしてみたんだけど…。」


と、そこまで話を進めたとき、先程まで座り込んでいた少女が、ものすごい勢いでこちらに向かってきた。


「お主の仕業かぁ〜!」


と、大声を出しながら向かってくる少女に見覚えはない。

見覚えはないが、見た目、魔族っぽい。


「えっと、魔族の方?」

「なんと!儂のことをしっとるのか?」

「いや、見た目とかで何となく…。」


角と羽があって、かなり強い魔力の存在を感じるから、当たらずとも遠からずだと思うけど。


「魔族の中でも唯一の魔瀏大帝直系、現皇帝の孫である魔界ナンバーワン美少女ウィステリア・オーギュスタンを知らないじゃと?!」

「何か、自分からペラペラ喋ってるわよ?」

「聞いてよかった情報か判断しにくいです。」

「流石に自称ということは無いでしょうけど…。」

「何じゃコソコソと!」

「で、そのウィステリアちゃんは何故ここに?」

「【ちゃん】ではないわ!」

「だってねえ…見た目、これだし。」

「本来の儂はこんなちんまい体ではないのじゃ!」


その後、ないのじゃ〜!と、座り込んでワンワンと泣き始めたウィステリアちゃんを慰めつつ話を聞くと、どうやらこのウィステリアちゃん、魔族全体を統べる魔瀏大帝の血統で、現大帝の孫に当たるらしい。


「お主が変なことをするから…。」

と、文句たらたらのウィステリアちゃん。


シトラスが黒い柱を切り飛ばしたことが原因で「本来の姿とはだいぶかけ離れた姿になってしまった」が、本人曰く、「儂は魔界一のナイスバディじゃぞ!」ということだった。


実際、嘘では無いのかもしれないけど、流石にこの5才児みたいな見た目から想像するのは難しいかなあ。


ちなみにシトラスが切り飛ばしたことで、一緒に出てくるはずだった骸骨騎士【ダンタリア】は、魂と意志が抜けた、ただの骨として顕現してしまったらしい。

だから途中でバラバラと崩れたのか。


その後ひとしきりギャーギャーと文句を言って落ち着いたのか、「で、お主らは何をしにここに来たのじゃ?」とウィステリアちゃんが聞いてきた。


「えっと…何かありそうだから調べに来た、ってところかな。」

「それで、誰に召喚されたの?」

「ん?別に召喚されとらんぞ?」

「え?」

「ん?」


何か、話が噛み合ってない…。

他のメンバーも、ん?という雰囲気を出している。


「じゃあ、どうやってここに来たの?」

「ほれ、さっきまで陣があったじゃろ、アレを使って来たのじゃ。」

「召喚陣自体はどうなったのかしら。」

「あれか?まあ、陣としてはまあまあじゃが、魔力が全く足りん。あれで呼べる魔物なんぞ、精々ダンタリア子飼いのスケルトンナイト程度じゃろ。」


まあ、それでも人族からしたら結構手強いかもしれんがの、というウィステリアちゃん。

どのくらいかな?と聞いてみたら、ランクAのパーティが3,4組で相手をするくらいのようだったので、普通ならかなり手強い相手だ。


僕らだったら特に問題は無いかもしれないけど、今は上位ランクのパーティが軒並み活動を自粛している。


うーん。

お膳立てされているね。


それから、さっき感じた悪性の気配は、どうやらある程度魔力の強い人間に「わざと」察知させるように調整していたようだ。


「不穏な雰囲気を察した冒険者が駆けつける。召喚陣は駆けつけた冒険者の魔力を取り込む。結果として、より強力な魔物が召喚される。ということだな。」

とレグホーンさんの解説。


「魔力が吸われた冒険者はどうなるんでしょう?」

「死ぬか、良くて瀕死だろう。」

「周りに倒れている人はいませんでしたが…。」

「吹き飛ばすか埋めるような仕組みが別にあるのだろう。推測だが。」

「Aランク以上なら、魔力結界とかで召喚陣自体に対抗できそう?」

「Bランク以下しか来ないように、きちんと外堀を埋めているということかもよ。」


つまり。


「強すぎない程度の冒険者を狙って、おびき寄せていた。」

「しかも、ランクの高い冒険者パーティは近づかないように仕組んでいた。」

「一応、まだ推測の段階だがな。」


狩りが不発だったパーティが、森に入って召喚陣に引っかかる。

新人の冒険者が、ギルドの忠告を無視して、森に入る。

まあ、ありそうなパターンかもしれない。


「召喚陣で強力な魔物を呼んで、王都を襲わせようとしていた?」

「そうね。」


とはいえ、冒険者が手薄でも王都内には騎士団や近衛兵といった国の戦力も十分にそろっている。


「まともに召喚陣が起動したとして…ん?」

「どうしたの?」

「いや、この召喚陣単体で起動したとしても、王都が陥落するほどの戦闘にはならないですよね?」

「つまり、他にもあるのでは、ということか?」

「はい。」


何かしら企てている人がいる気がする。

ただ、それを探るにはちょっと手掛かりが少ないかなあ。


「ところで、ウィステリアちゃんはこの陣を使ってここに来たの?」

「うむ。暇だったからの。」

「まともに機能しなかった陣なのに?」

「あくまで道として使っただけじゃからの。まあ、道として使うこと自体、我の魔力の質と量が素晴らしいことの証明じゃがな。」

「そんなことが出来るんですね。」

「うむ。儂にかかれば造作もないことよ。」


偉そうにふんぞり返るウィステリアちゃんだが、見た目が5才児なので微笑ましさしかない。


とはいえ、召喚陣の魔力を辿ってきたのなら、少なくとも魔力量については疑いようがないかな。


そんなふんぞり返り5才児に、シトラスが話しかける。


「ウィステリアちゃんはこれからどうするの?」

「えっと、この世に混乱をもたらしたりするんですか?」

「そんな面倒くさいことに興味なんぞないわ。」


魔界は至って平和じゃ、世の中を乱す輩なんぞいらん、と豪語するウィステリアちゃん。


現皇帝の孫ということは、魔族のお姫様なのかな?

本人の談しかないけど、全くのウソということは流石にないだろう。


さて、この状況。


不穏な召喚陣。

魔族。

意図的に休止させられたと思われる高ランクパーティ。


一度王都に戻って、情報を整理したほうが良いかもしれない。


シトラスや他のメンバーに、「一度戻って色々整理した方ががいいかも」と声をかけると、みんな頷いてくれた。


「この子は…どうする?連れてく?」というシトラスと、「【この御方】と言え!」とプンプンしているウィステリアちゃん。流石に埒が明かないので、いったん全員で戻ろうを提案した。


「ウィステリアちゃんもそれでいい?」

「だから【ちゃん】付けはやめい!」

「じゃあ、ウィスもそれでどうかな?」

「ウィス…。」


すると、急に黙って下を向くウィステリア。

ん?と思いつつ、「いいかな?」と聞くと、無言で首を縦に降った。


「じゃあ戻ろう。」

「そうね。急にどうしたのかしら…って、あれか!」

「何?」

「あんたが急に愛称で親しげに呼ぶから、異性として意識し始めるっていうパターンよ。」

「えええ…。」


急に大人しくモジモジとしているウィステリアが気になりつつも、一行はウィステリアを中心においた布陣を組むと、西に向かって森を進んでいくのだった。

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