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第10話 狩りに行こう。その1

「手続きは大体終わりよ」というお姉さんA。

なお、お姉さんBは休憩中、お兄さんは黒薔薇少女騎士団の3人と昼食だそうだ。マジか。


「そうねえ、まだ日も高いし、狩りに行かない?」

みんなの実力も知りたいし、というシトラス。


「あ、大丈夫です。」

「いいですよ。」

「問題ない。」


それじゃあ…、となった僕たち。

そこへ、お姉さんAが「東に行った森の手前でよろしくね」という案内をしてくれた。


「何かあるんですか?」

「そんなに強い魔物も出ないし、隠れやすくて逃げやすい、からね。」


つまり、新人冒険者向けの場所ということか。


「新人冒険者向けの場所ってことね?」

「まあ、そういうことね。」


僕たちに限らず、新人冒険者全員に案内しているものなのだろう。

するとシトラスが「僕ら最強ですから!」って言って無視するのはアリ?と小声で聞いてきた。


当然、「まずは案内に従う」とノーである。


いきなり奥地に向かって、竜と出会ったり妖精を使役したり魔王の娘を保護したりするのは御免被るのである。


「じゃあ、行こうか。」

「何か必要な準備はある?」

「大丈夫です。」

「はい。」

「じゃあ出発ね!」


~~~~


ということで、王都の東門から歩くことしばし、やって来ました東の森の入り口。


「この辺かしら?」

「そうだね。」


森の手前に広がる広い草原と森の境目だが、見通しはそこまで悪くはない。


「見通しは悪くないですね。」

「そうだな。」

「魔物も冒険者も逃げやすい、ということね。」

「待ち伏せされたりとかは?」

「うーん…考えにくいかしら。」

「何が通るか分からない場所で延々と待つのも大変ですよね。」

「そうだな。それに、基本的にはパーティに1人は斥候役がいる。」


魔物側から先に発見されて襲い掛かられないように、だけではなく、弱いパーティを食い物にするパーティも警戒しないといけない。


つまり、よい斥候役は重要、ということだ。


そんな視点でレグホーンさんを見ると、全然会ったばかりではあるけど、索敵能力、探知精度はかなり凄い気がしている。


そこまで警戒しなくても、この辺りでそういう状況は考えにくいだろうけど、油断はしない。


その時、周りを見渡していたトープさんが、「そこまで強い魔物は出ないとギルドの方は言ってましたけど。」という、先ほどのお姉さんAの発言を繰り返す。

するとレグホーンさんは、


「少し調べてみよう。」


と言って、地面に手を当てて目を瞑る。


手を当てた地面から、薄っすらと光が広がる。


「【探知円】のレベル8ね。」とシトラス。

「見ただけで分かるんですか?」と、リラさんが多少驚いている。

「まあね。」


探知円自体は特に珍しいスキルではないが、一般的には4か5くらいまでのレベルの使い手がほとんどだ。

レベル8の発動自体を見たことがない人がほとんどだろうから、それを察知したことに驚いたのだろう。


さて、放たれた光はあっという間に拡散し、消える。


「犬型が12匹、向こうだな。」


と、レグホーンさん。

さらっとやっているけど、やはり、かなりの使い手だ。


「それにしても、犬型?」

「ただの野犬、ってことはないですよね。」

「…どうも怪しいわね。」

「というと?」

「そこまで強い魔物は出ない、というのが本当かどうかってこと。トープは前、後ろはクロムに任せるわ。行きましょ。」

と、さっさと歩き始めるシトラス。


レグホーンさんが教えてくれた方向に歩いていくと、予想どおり犬型の魔物を遠くに視認する。


「結構歩きましたね。」とトープさん。

「この距離を探知できるのってすごいです。」とリラさん。

「…普通だ。」と、ちょっと照れるレグホーンさん。


もしかして結構早く成就するかな?


すると、近づくにつれ、先ほどから話題の犬型の正体が判明する。


「え、ブラッドドッグ?」

「王都の近くに出るのは珍しい…というか普通なら無いな。」

「でもいますね。」


正直、この場所で遭遇する魔物ではない。

明らかに、何か変だ。


「どうしよう?」

「うーん…。殲滅、と言いたいところだけど、まずは様子見をしましょう。」

「様子見?」

「ええ。リラさんにお願いしようかしら。」

「あ、はい、何でしょう?」

「ほら、さっき結界の話があったでしょう?それを見せてもらえないかと。」

「大丈夫です。やってみます。」


二つ返事でオッケーを出したリラさんは、早速、とばかりに右手を上げる。

「【天壌無窮】。」


瞬間、ドーム状の薄い膜が僕たちの周りを包む。


「結界の中心はレグホーンさんにしているので、離れすぎないようにお願いします。」

「あら、自分じゃなくてレグホーンなのね。」

「えっと、あの…。」

「もはや恋心を隠そうともしないリラであった〜。」

「いやあの、奇襲を受ける可能性とか、位置取りとか防御力とか、あのいろいろ考えて…。」

「はいはい、そのへんで。」


そんな微妙な空気を読んだかどうか、

「あ、来ますね。」

ブラッドドッグが一斉にこちらに向かってくる。


その様子を眺めつつ、どうする?とシトラスに聞いてみた。

「ちょっと様子を見ましょう。」

「この結界の?」

「そう。」


横に広がって一斉に襲いかかってくるブラッドドッグ。

噛みつこう、引っ掻こう、と飛びかかって結界に触れた途端…、パン!と弾かれて…そのまま霧になって消えた。

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