第9話 名前を決めよう。
予定どおりパーティを組むことにした僕たちは、先程のお姉さん達に報告をした。
するとお姉さんAが、
「じゃあ、パーティの名前を決めないとね。」
と言い出した。
「名前ですか?」
「そうよ。無くても登録はできるけど、報酬とか指名依頼とかで手続きが煩雑になるから、普通は付けるわね。」
その言葉を受けて、他の4人をぐるっと見回すと、皆視線を外しがちになる。
「えっと、もしかして名前考えたりするのが苦手ですか?」
「私は無理ー。」
「私もちょっと…。」
「僕はまあ…頑張ります。」
「任せた。」
えー…という表情のクロム。
だが、どうやら皆で考える選択肢は無い、ということだけは分かった。
そこで、お姉さんAに聞いてみた。
「パーティの名前ってどういう感じで付けるんですか?」
「そうねえ…パーティメンバーの特徴を踏まえたりするのが多いかしら。」
「例えば?」
「弓使いだけパーティ【やられる前にやる】とか、盗賊だけパーティ【暗黒闇の暗躍影軍団】とか。」
「それって色んな意味で大丈夫ですか?」
「王都以外にもギルドはいっぱいあるから、当然いろんなパーティがいるわけ。数あるパーティに埋もれないように、あえて目立つようにしているのよね。」
要は売名行為みたいなものね、というお姉さんA。
成程、あえて変な(?)名前にするのも方法の一つなのだろう。
とはいえ、僕たちはあまり名前で冒険するつもりはないかな…。
「そういえば、名前って後から変えたりできますか?」
「ええ、あまり頻繁でなければ大丈夫よ。」
それじゃあ、と、
「とりあえず【賢者の知恵】とか、どうかな?」
と、提案してみた。
「自分が大賢者マルスの再来だって?中々ね。」
「いやいや、そうじゃなくて…。」
「いいんじゃないか。」
「そうですね。」
と、まとまり気味だったところに、お姉さんAに「あー、既にいるからダメね」とダメ出しをされてしまった。
「流石に同じ名前は無理なのよ、ごめんね。」
「大丈夫です。別のを考えます。」
その後、直ぐに良い代案が出てくるだろうと思っていたのだが…。
「勇者の剣とか?」
「既にいるわね。」
「栄光の5人とか。」
「いるわね。」
「6人…「いるわね。」」
「7人…「いるわね。」」
「何でメンバー増やす前提なのよ。」
「いや、一応聞いておこうかと…。」
「大魔導士の誓いとか。」
「いるわね。○○魔導士のなんちゃら、だけでも数えきれないくらいいるわね。」
「黒薔薇少女騎士団とか。」
「いるわね。」「いるんですね…。」
「ちなみに3人パーティね。」
「3人で騎士団っていいんですか?」
「一騎当千の獰猛な獣達が織りなす狂乱の宴が映し出す双子の月とか。」
「よく出てくるわねそんなの。」
「いるわね。」
「…絶対に嘘ですよね…?」
「双子と三つ子と四つ子は既にいるから、五つ子の月なら空いてるわよ。」
「それを【空いている】という感覚が分かりません。」
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その後も、パーティの名前を決めるだけで話し込むこと数十分。
「もう、何でもいいから決めましょう…。」
という疲れ気味のシトラス。
流石に思いつかなくなってきたので、お姉さんAに聞いてみた。
「お勧めの名前とか、考えるコツとか、ありませんか?」
「パーティメンバーの名前が入ると、他と被らないで決めやすいかもね。」
するとシトラスが、急に、
「分かった!」
と声を上げた。
シトラスがそういう時は、大抵良くない事が起きるんだよね。
と思っていたら、名前をいれて、ついでに盛れるだけ盛りましょう!と怪しい事を言い始めた。
「【史上最強超絶大賢者クロムとその一味】で決まりね!」
「はあ??」
何を言っているんだこいつは、と思いつつ他の人にも意見を聞いてみたところ、
別に私は良いと思いますよ。
クロムさんについていきます。
何でもいい。
と、やる気ミニマムなパーティメンバー。
流石に頭の回転も限界なクロムは、結局「完璧!」という満足気な笑顔のシトラスを説得するほどの気力もなく、そのまま決まってしまった。
そして、
「じゃあ、【史上最強超絶大賢者クロムとその一味】で登録完了しました。これから頑張ってくださいね。」
と、表情一つ変えずに淡々と案内をするお姉さんA。
流石のプロである。
「これって普通のパーティ名なんですか?」
「ちょっと地味だけどいいんじゃないかしら。」
「そんなバカな…。」




