第五十話 ・・・聞いてないが
西の隣国の方々は、静かすぎる・・・が
その分、書類で伝えてくるタイプのようだ。
目の前に積まれた資料の山に、みな驚愕している。
しかも、昨日行った実験分まで入っているとか。
地味な、とても地味な実験結果だが、
『箱』の大きさと容量の一覧、その計測方法。
水と物品で、収納できる容量の差の数値。
また、同様にコップの大きさと容量の一覧、その計測方法。
とても有意義なものだ!
が、しかし、その淡々とした発表にみな疲れてきているようだ。
魔術師達が暴走しない議題は初めてかもしれない。
・・・・
西の隣国の報告が終わり、休憩をはさんで、
トトがフネとソリの発表をした。
魔術師達が生き返った。
ソリに関しては、作り方の複雑さから、
ヒコウキを使用した方が安定性を保てるのではないかという意見が出た。
また、ニソウブネは、安定性と荷物を入れられる形状がいいと
皆が興味をもっていた。
風の術式紙だと地面に当たらないという利点もあるようだし、
アルベルト達も実験しようと言っている。
また、北の隣国からは、
ニソウブネを逆さまにすると雪の上で安定するのではないかと意見が出ていた。
雪が降ってからの実験になるので、実験は先送りだ。
今回、新たに発見した書物によって、
フネには、種類が多数あることが判明したので、次回報告することになった。
書物は、王宮の旧地下書庫から発見されたことになっている。
まだ分類もできていないため、都度都度の確認となる前提だ。
・・・・
南の隣国は、いくつかのフネを実際に水に浮かべて実験してみるそうだ。
新たな遊戯が増えるのではと、大喜びだ。
我が国にも、湖があればよいのだが…
東の隣国では、フネを風の術式紙で作るとどうなるかを研究したいらしい。
昨日も、ルルと話し込んでいたので、クスダマは、また進化するかもしれない。
西の隣国は・・・ そっとしておこう。
きっと、また有意義な実験結果を共有してくれるのだろうから。
・・・・
会議の日程は午前で終了した、たぶんつつがなく。
3日目の午後は、買い物と観光の時間だ。
皆、国営商店に行くのが楽しみで仕方ないらしい。
家族持ちの魔術師達は、妻に持たされた書き付けがあって、
それをきちんと購入しなくてはいけないらしい。
・・・大変だ・・・
それぞれの隣国との交易は、すでに始まっているのだが、
どこも品薄で、ここなら手に入るのではないかということのようだ。
「今回は、新しい商品はそんなにないと思いますよ。」
道すがら、話してはみたものの、彼らの熱気に声はかき消された。
・・・・
久しぶりに訪れた国営商店。
レンヅル専用の棚ができているではないか!
他に、ハーモニーオリガミが種類別に平置きされている。
それで折った、ユリやクスダマもある。
術式紙で折ったクスダマまで販売されている。
ヒコウキもつながっていて、祝いの席で人気なのだそうだ。
・・・・パウンドケーキがある。何種類も、売っている。
サナ、仕事しすぎではないか。
それらを見た、各国の魔術師達は歓喜している。
2日目に見たヒャッカクの感動がよみがえっているようだ。
それに、このレンヅルがヒャッカクへの足掛かりとなれば、
興味が尽きることはないだろう。
しかも、種類が多いのだ・・・
列をなすようにして、トトに質問をしている。
「構造がわかれば作れるというものでもないです。
練習あるのみです!」
その言葉を聞いて、魔術師達が深くうなずく。
もはや、大人子どもの区別は全くなくなっているな。
・・・・
パウンドケーキは日持ちするらしく、土産に人気だ。
独身の魔術師でも、全種類買っている者がいた。
研究途中の休憩にちょうどいいとか。
交易にのせるか、レシピの販売をと交渉している者もいた。
魔術会議・・・だぞ。
交易会議では、ないはずだ・・・
いや、今回、文官同行者がやけに多かったのは、そういうことか?
聞いてないが・・・
いや、聞きたくないから、見なかったことにしよう。
私は、チョコ様と陛下のことで、すでに手一杯なのだから。
・・・・・
各国に「オリガミ魔術師団」が結成されることが決まるのは、第五回魔術会議。
そして、その総師団長にセドリックが任命されるのは、また別のお話。




