第三十五話 おかえり、アル!
研究棟は、今日も実験日和。
トトが、伝承の升と空間魔術の術式紙を合わせた。
箱の中に空間がひろがり、作物入れの箱3つ分くらいの荷が入るようになった。
ロンは、使用済みの術式紙で折った箱に魔力を入れている。
作物入れの箱1つ分くらいの荷が入る。
こうして考えると、使用済みの術式紙、使い道がありすぎる。
ルルは、箱のふたに工夫をしている。
外から見た時に違いが判るほうがよいだろうと考えたようだ。
私達は、実験を記録し、報告書を書く。
実験の主体は、子供たちだ。
見ていて、ほほえましいし、楽しい!
でも、今までよりも静かだ・・・
アルが戻るといった一か月まで、あと少しだ。
元気にしているだろうか。
◇
アルが、毎日別邸にいる!
・・・でも、疲れてる?
ん~、げっそりしてる・・・が正解かも。
ピーマンを収穫しながら、おばあちゃんに聞いた
「アル、大丈夫?」
「そうさね~、大丈夫だろうね~」
へぇ~、大丈夫なんだ
でも、姿勢はよくなって、なんかシャキーンってなってる
食べ方もきれいになった
歩き方は、セドみたいになってるし
「俺」が「私」になってるw
まぁ、人間、こうやって急激に変わらなきゃいけない時ってあるしね
所作とかマナーとかは、覚えておいて損はないよ
子どもらしさはなくなってきてるけど
こっちの子どもたちは早熟だから、いいのかも~
うんうん、そうね、大丈夫か
まっ、アル、ドンマイ! がんばれ!
◇
その日、王宮では花火が上がった。
隣国四か国の使者が集い、陛下がお迎えになった。
その横に、アルベルトが立つ。
アルベルトは、赤い魔術師服を着て、
まっすぐ前を見て立っている。
・・・立派になった。
この一か月の訓練の成果だろう
アルベルトは頑張った
よく挫けずにやり遂げた。
・・・・
会談も食事会も、アルベルトは乗り切った。
小さな大魔術師として。
聖女ではなく、魔術師の業だったことが、みなの知るところとなった。
魔力量が多く、コントロールを学んでいるところということで、
各国からの招待も、これで断ることができた。
また、魔術師ということで、強制的な連れ去りを企む者も少ないだろう。
これが終わった後、移動魔術と通信魔術は教えなければ。
どこからでも連絡ができ、戻れるように。
まだ、もう少し頑張ってもらわねば。
◇
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~、終わった!
赤い魔術師服を脱いで、ベッドに飛び込んだ。
確かに、これはチョコには無理だ。
おっさんたちの長話のめんどくさいこと!
腹の探り合いもえげつなかった。
どの国も、この業が欲しくてたまらないのが透けて見える。
セドが、話し方が大事だと、訓練したのもよくわかった。
ちょっとしたことで、上げ足取られて、
どっかの国に行くことになっても、おかしくなかった。
まぁ、チョコだったら、話さないからセドが話すんだろうけど、
あいつなら、この3日間で、誘拐されてもおかしくないw
さすが、チョコ担当のセドだな。
まぁ、全部俺にかぶさってきたけどw
これからも、大魔術師役は続けることになる。
だったら、もっと勉強して、本当の大魔術師になってやる!
最初は、通信魔術と移動魔術だって、セドが言ってた。
あれだよな、誘拐されても連絡して、戻ってこいってことだよなw
もし、チョコが誘拐されたら、そこでオリガミしてそうだよな。
そもそも、誘拐されたって気が付くのか、あいつ
・・・無理な気がするw
まぁ、今のチョコの生活だと、
誘拐いつするんだ?って感じだよな。
ばあちゃんと畑に行く以外、外には出ない。
それ以外は、だいたい部屋の中にいるんだから。
いるかどうかもわからない聖女様か・・・
そのくらいがちょうどいいのかもな。
あれだ、いまは、飢饉もなくなって平和だから、
そんな無茶なことをする国もないと思うけど・・・
用心は大事だよな。
・・・・
いまでも、俺の魔力が、隣国一国を変えたって、信じられない。
ただ、たくさんの人が助かったんだ、この魔力で。
この手が、
この手が折ったユリが、助けたんだ。
いままでとは違う怖さが、これを考えるたびに体の中を走る。
間違っちゃいけない、使い方を。
正しく・・・ではなくて
誰かのために使おう。
迷ったら、
チョコのポンコツを思い出そうwww
そしたら、きっと間違わない。
◇
今日の朝ごはんのアルが、アルだった!
よかったぁ~、元気になった!
口調も戻った!
所作は、素敵なままだけどw
なんか昨日までのギシギシした感じがなくなった!
今日から、また研究棟に行くんだって
なんか日常が帰ってきたから
わたしの勝ち!
「後世の魔術史」
《豊穣の魔術現象の真実》
当初「ユリの聖女の奇跡」と考えられていた豊穣現象は、幼かった大魔術師アルベルトが無意識に発動した膨大な魔力が、折られた術式紙を介して植物へ作用したものであることが判明した。この発見により、奇跡とされていた豊穣現象は、折術研究における重要な魔術現象として位置づけられることとなった。




