第三話 もう一度、折ってください
翌日。
村から出た使いは領主の館へ向かった。
そして、その翌日、馬車が来た。
領主の館から役人、護衛、魔術師の三人が派遣された。
ん~、役人、ド定番の偉そうなヤな奴。
「畑の実りについて、確認したい。説明せよ」
…………
ここでは子どもの私、
秘儀、人見知りを発動!
おばあちゃんとアルの後ろに隠れた。
「なんで俺まで盾にすんだよ」と、離れようとするアル。
だめ、離さないw
魔術師は、少し離れたところで立ち止まってる
嫌な感じはしない。
◇
おばあちゃんが、三人を畑に案内した。
村長も来て、村の中や収穫したものを見せて回った。
役人は何度も村長に確認した。
「本当に、一晩でか?」
「はい」
「特別な肥料などは使ってはいないのか?」
「なにも」
魔術師は、話のメモを取りながら
土や植物、収穫したものも少しづつ集めている。
最後に、役人たちが部屋に入ってきて
「例の紙の花を見せろ」と言う
おばあちゃんが、暖炉から百合を取って渡す。
役人は、ゆりを恐る恐る手に取って見ていたが
やがて、魔術師に手渡した
「なにか、わかるか?」
・・・
魔術師は、ゆりを丁寧に掌にのせた
「……これは!」
魔術師の顔色が変わった
回し見る
覗く
光に透かす
「術式紙で折られています」
「術式?」
あっ、うっかり声に出しちゃった!
小さな声だったから、傍にいたアルだけが聞こえたはずなのに
・・・魔術師がこちらを見てる
「はい。植物の生育を補助する魔法陣が描かれています」
おばあちゃんが思い出したように言った。
「ああ。それなら、春に畑で使ったものですねぇ」
「使用済みですか?」
「術式紙は高価なんで、春にしか使わないんですよ」
魔術師が黙った。
「どういうことだ?」役人が聞く。
「あり得ません」
魔術師が手のひらの上のゆりを見る。
「これは、ごく一般的な生育補助術式です。
しかも使用済みなら、残存魔力はごくわずかなはず」
窓の外。
実りきった畑。
「村全体を一晩で成熟させられるようなものではありません」
・・・
視線が、私に集まる。
……そうなるよね
昨日まで、枯れてた畑。
変わったことといえば、私が来て、あの紙を折ったくらい。
異世界転生ですから。
なにかはね、起きるかもとは思ってた。
でも・・・
まさかの折り紙?
説明を求められても、私が一番困るんですけど……。
「チョコさん、あの紙に、なにをしましたか?」
あぁ~、この人、静かにしゃべるけど、有無をいわさない
圧、強よ!
「折った」
「それだけ?」
こく。
「魔力を流しましたか?」
ブルブル、首をふる。
「呪文は?」
ブルブル、首をふる。
「術式の意味を知っていましたか?」
ブルブル、首をふる。
「では、なぜこの形に?」
「きれいだから」
「なぜ、ゆりを?」
…………
おばあちゃんを見る。
「あたしにくれたんですよ。ご飯のお礼にね」
こくこく。
魔術師は、少し黙ってから、またメモし始めた。
ごめんね、魔術師さん…
きっと、なっかやらかしちゃってるんだろうけど
こどもだから、許して…
◇
ゆりを調べていた魔術師の顔が、
どんどん、怖くなってきた。
怒ってるわけじゃない。
考えてる。
ものすごく真剣に。
「折りによって、術式線が重なっている……」
わかるなぁ~
研究好きなんだこの人!
わからないことを紐解くのって楽しいよね~
折り紙教えたら、はまっちゃうかも…
「ここは裏返り……こちらへ接続している?」
ゆりを回す。
「平面では切れているはずの回路が……」
ふふっ、絶対、折り紙好きになるタイプw
たぶん、精密なリアル折り紙にはまるタイプだな
「チョコさん」
…………
「このゆりを、もう一度折れますか?」
こく。
「同じものを?」
こく。
・・・はい、こちとら何千枚とゆりを折ってきてますし
「別の紙でも?」
こく。
・・・ティッシュを半分にはがしたのでも、ゆりなら折れます!
魔術師の目が変わった。
役人と顔を見合わせる。
「……再現できる可能性があります」
再現…って
もしかして、飢饉を救う聖女になっちゃう?!
まさかねw
「後世の魔術史」
《使用済み術式紙再活性化の確認》
魔術師セドリックが、折りによって術式紙の術線が重なり、平面上では断絶する回路が再接続されることで、使用済みの術式紙が再度活性化する可能性について言及した。




