第二話 ゆりは、育てる?
…………
うるさい。
外が、なんか、うるさい。
「チョコ! 起きろ!」
アル?
「……眠い」
「外すごいぞ!」
…………寝る。
「ばあちゃん! ダメだ、こいつ起きない!」
聞こえてる
でも、眠い。
おばあちゃんの声。
「じゃあアル。ちょっと外を見てきておくれ。
この家の周りだけなのか、村中なのか」
「分かった!」
扉が閉まる。
静かになった。
よし!寝よう。
◇
「なんだよ……これ」
アルは、道の真ん中で立ち止まった。
昨日まで、村の畑は……枯れてた。
畑の麦は細く、倒れてた。
野菜は小さく、乾いてた。
果樹の葉も、茶色くなって落ちてた。
それが。
全部。
育っている。
麦は穂を垂らし。
野菜は大きく。
木には、果実が鈴なりだ!
村人たちが走り回っている。
「収穫しろ!」
「急げ!」
「こんなことあるのか!」
「夜中、あの家が白く光ってたぞ!」
あの家・・・
ばあちゃん家?
アルは振り返った。
チョコ・・・ あいつか?
なにしたんだ?
◇
「ばあちゃん!」アルが戻ってきた。
「家だけじゃなかった!」
「そうかい」
おばあちゃんは鍋をかき混ぜている。
「村中だ! 畑も木も全部!」
「じゃあ、これで村中困らないね。よかったよ」
「よかったって……」
「アル。そこの野菜を洗っておくれ」
「ばあちゃん!そうじゃなくて…」
「朝ごはんは、ごちそうだよ」
その言葉だけは、布団の中にも届いた。
「…………ご飯?」
私は、もぞもぞと起きだした。
◇
昨日の夜ごはんより豪華な朝ごはん
???
緑のサラダに、果物。
お芋も煮てある。
パンが焼きたてだ!!!
「食べていいの?」
「もちろんだよ」
いただきます。
ん~、やっぱりおいしい!
ふかふか~
新鮮な食材って、それだけでおいしい!
しあわせ!
「チョコ」
向かいに座っているアルが、じっと見ながら言う
「お前、なにしたんだ?」
?????
なにって?
昨日、異世界転生して、アルに会って
紙飛行機折って、遊んで、転んだ
おばあちゃんのご飯食べて、
ゆりをプレゼントして
寝た…
なんだろう、特別なことはしてないけど
強いて言うなら
「折り紙?」
「それだよ!」
アルが暖炉の上のゆりを指さした。
「夜、家が光ってて
朝になったら、村中の畑が実ってるんだ!」
…………
ゆりを見る。
外を見る。
昨日の綺麗な模様を思い出した
もしかして、この世界って魔法ある?
「……異世界、怖っ」
「なんて言った?」
………
口を押えた
秘密だ、言わない!
私は、おばあちゃんに、ゆりを折っただけだもん。
◇
村では、原因究明より。収穫が優先だった。
当たり前だ、せっかく育ったものを放っておく理由はない。
大人も子供もみんな忙しく働いてる。
このお芋のかごくらい運べるよね
なんにもしないのも心苦しいし
持ち上げる。
……重い。
一歩、、、
進む前に転んだ。
おばあちゃんが笑った。
「チョコには、こっちをお願いしようかね」
豆を座ってむく。
これならできる! っていうか、得意!
ぱき。
むく。
ぱき。
むく。
こういう単純作業は好き。
ずっとやっていられる。
時間が解けるやつw
少し離れたところではアルも働いていた。
大人に言われて籠を運んでいる。
でも、なんとなく、ほかの子とは違う。
仕事は頼まれる。
でも、頭を撫でられたり、褒められたり、一緒に笑ったり、
そういうのがない。
目の端で、追っかけて見てたけど
アルは、あんまり気にしてないみたい
…ならいっか
それより、豆!
ぱき。
むく。
◇
お昼ごはんが終わって、
こどもの特権「お昼寝」しようと思ったら
村の偉い大人たちが訪ねてきた
アルに聞いて、ゆりを見にきたらしい。
「チョコというのか」
コクン
「これは魔法なのか?」
ブルブル、首をふる
「では何なんだ?」
「折り紙」
「なぜ紙を折ると作物が育つ?」
「わからない」
…それは、私が知りたい…
そもそも、ゆりのせいじゃないかもだし
なんか、決めつけすぎな気もする…
変わったことが、これだけだって知ってはいるけど
でもねぇ~
「誰に教わった?」
…………
誰?
伝承の百合。ゆりは、作者不明
知ってても、この世界の人じゃないことは間違いない
「なぜ折れる?」
………
なぜ?
どうやってなら答えやすいんだけど
なぜかぁ~
それは、やっぱり…
「いっぱい折ったから」
部屋を静寂が包む
・・・
欲しい答えがひとつも返ってこないからって
そんなに黙り込まなくてもよくない?
嘘はついてないし
転生なんて話、してもしかたないでしょ…
それに、ゆりのせいじゃないかも
・・・しつこいか(汗)
だれでも、いっぱい折れば、折れるようになる
それが折り紙なんだけど、
それと、魔法が、どうつながってるのかなんて
私が知ってるわけない!
ひっそり、一番驚いてるんだから!
◇
村長の家では、村の男たちが集まっていた。
「領主様に知らせないわけにはいかん。
明日の朝、使いを出そう」
私の知らないところで、色々決まった夜だった。
うすうす、気がついてはいた。
このパターンは、領主的な人が登場するって。
でも、いまは、眠いから気が付かないふりをしよう。




