第一話 紙は、飛ぶ
ん? 空? 外???
机に向かって折り紙してたはず
夢かな……。
寝転んだまま首を動かす。
…………?
ゴリゴリしない。
もう一回。
右。
左。
痛くない。
身体を起こす。
手を見る。
小さい。
足も。
小さい。
…………
ほっぺたをつねる。
痛い。
これって……。
夢じゃない?!
周りを見ると
そこは、森。
でも、なんだか乾いている。
細い枝。
茶色く縮れた葉。
地面も乾いていて、風が吹くたびに葉っぱがカサカサ鳴る。
日本っぽくないなぁ。
…………。
これって、異世界転生ってやつ?
グぅ~~~
あっ、お腹すいた
折り紙折ってる時は、時間感覚も空腹感覚もなくなっちゃうんだけど、気が付くともう捨て置けない。
気になって気になって、それしか考えられなくなる。
わかんないことは、しかたないし
まずは、できることからやっていこう
うん!空腹をなんとかする!
立ち上がる。
身体が軽い。
さすが、こどもの体!
そっか、こどもか…
多分、5歳か6歳くらい?
このころは、全然しゃべらない子だったよなぁ
声も小さくて聴き取れないって先生からお母さんに連絡がいくほどに。
人見知りだったし…
社会に適応するのに、頑張って変わったけど
どうせ世界も違うんだし、昔の私のままでいってみようかなw
小さかった、変わる前の私のままで
それにしても、どっちに行けばいいんだろう。
ちょっとまって!!!
異世界って…
もう、そこは仕方ないから、いいとして
……… 紙、あるよね?
前に見た某アニメでは、紙そのものがない世界だった。
いや~~~~~
それは無理。絶対ダメ!
**紙は、なきゃいけない**
絶対に。
◇
しばらく歩くと、泣き声が聞こえた。
足を止めた。
子ども?だよね
大人だったら、スルー一択、
あっ…でも、情報必要か。
知らない人、苦手だし。
さっき、人見知りOKにしちゃったし
悩む…
でも、子どもが泣いてるのは別。
気になる。
声の方へ向かう。
木の根元に男の子が座っていた。
いまの私より少し大きい?
八歳くらい?
黒っぽい髪。
膝を抱えている。
近づくと、男の子が顔を上げた。
「なんだよ!」
…………
かわいい! 怒ってるw
とりあえず隣に座った。
「…………」
「…………」
男の子がこっちを見る。
「なんなんだよ、お前」
「…………」
泣いてる時って、誰かが傍にいるだけでも
ちょっとだけ、一人じゃないって思えるから
なんで泣いてるかもわかんないけど
一人は、さみしい
説明することでもないし、無口キャラだから答えないw
ん????? !!!
・・・・・・・・・・
「それ、ちょうだい」
男の子のズボンのポケットから。
少し出てるもの
絶対、絶対、紙だ!
じー。
「……なんだよ」
指をさす。
「それ、ちょうだい」
「これ?」
男の子がポケットから引っ張り出した。
くしゃくしゃの紙。
紙だ!
「ちょうだい!」
「は?」
「それ」
「……ゴミだぞ?」
こく。
男の子は変な顔をしながら渡してくれた。
!!!!!!!
紙。
ちゃんと紙。
⸜(*˙꒳˙*)⸝ わーい!
脳内、サンバカーニバル!!
うん、折れる!
しわを伸ばす。
なんか綺麗な模様が描かれている。
長四角だから、男の子だし…
半分に折って、ひらいて
両端から、三角に折って
もう一回、このライン好きだなぁ~
シュッとしてかっこいい
ん~、紙飛行機って苦手なんだよね
こっから、どうするんだっけ…
先に重みが欲しいから、ちょっとだけ折って
翼は、水平に広げて
左右が均等になるように調整して…
飛ぶかな…
飛ばし方もコツがあるんだよね、紙飛行機。
苦手~
男の子が覗き込んできた。
「なんだ、それ」
「飛行機」
「ヒコーキ?」
「うん」
立ちあがって、飛ばす。
紙飛行機が、すーっと飛んだ。
よし!
内心、ガッツポーズ!
男の子が立ち上がった。
「なんだ今の!」
走って追いかけ、紙飛行機を拾ってきてくれた。
「魔法か?」
ぶるぶると首を振る。
「じゃあ、なんだよ!」
「折り紙」
「オリガミ?」
知らない?
………
もしかして、折り紙ない?
男の子は、紙飛行機をあちこちから見てる
めっちゃ気になってるw
「いいよ」と声をかけたら、驚いてたけど
男の子が、飛行機を飛ばした。
ぽとっと、落ちた。
「…………」
もう一回。
ぽと。
「なんでだよ!」
ふふっ、コツがあるんだなぁ~
飛ばして見せた
すーっ。
「なんでお前だと飛ぶんだよ!」
そんな簡単に教えないw
…っていうか、まぐれだから教えられないwww
男の子は何度も挑戦、
飛ばして、飛ばして、飛ばしたら
すーっ。
五回目で飛んだ。
「ヤッター!」飛び上がった!
よかったね。
やなこと、きっとなくなってないけど、いまは楽しいね。
男の子は、走って紙飛行機を追いかける。
その後を追おうとしたら
――べちゃ、転んだ。
…………痛い。
この身体、運動神経なさすぎじゃない?
いや、元から運動神経なかったし、
なんなら2歳くらいまで歩けなかったけど…
転生って、そういうとこ、改善するはずじゃない???
神様!転生チート、言語だけなの?!
男の子がこっちを見る。
「なにもないとこだぞ、なんで・・・
でも、まあ、大丈夫だなw」
・・・
放置された!
いたいけな少女を放っておくな!!
まぁ、大丈夫よ。このくらいじゃ、泣かない。
中身は一応大人だしね… 痛いけど
◇
紙飛行機飛ばすのにも慣れ、すこし日が暮れてきた
「そういえば… 俺は、アル。
お前、名前は?」
「チエコ」
「チョコ?」
「ち・え・こ」
「……チョコ?」
…………
まあ、いっか
発音しにくいんだね、きっと。
新しい世界に、新しい名前 いいよね。
アルは、手に持っていた紙飛行機を私に渡して言った
「チョコ、俺、帰る」
…………
え?
「これ、ありがとな」
…………。
待って! 待って、待って、待って!!!
森。
夜。
ご飯なし。
無理!
アルの服を掴んだ。
「なんだよ、俺、帰るんだよ!
お前も家帰れよ」
「家どこだよ、送るか?」
ブルブル、首をふる
「親は?」
ブルブル、首をふる。
これ、答えちゃだめなやつ。
だって、この世界の設定わかってないし。
でも、アルにいなくなられたら終わる、無理。
「えっと……分かんないの?」
こく。
アルが困った顔をした。
ここは、年齢をいかそう!
必殺泣きそうな顔!
まって、なんか色々、こみあがってくる
お腹すいた。
暗くなる。
置いていかれる。
眠い。
疲れた。
なんで、異世界?
なんで、こども?
……ぅ
あっ、待って涙が出ちゃう
うぇ…… ……うあぁ~ん
「お、おい!」アルが慌てる。
あれ、私、泣かない人なのに
泣きたくても、泣けなかったのに
涙が止まんない、どうしよう…
アル、ごめん、本気で泣くつもりじゃなかったのに…
「分かった! 分かったから!」
アルが頭を掻いた。
「とりあえず来いよ!」
ひっく………ふえ~ん
止まんないけど、泣いちゃったけど
ちょっとずるいけど
私の勝ち!
◇
森を抜けて、村?に入った。
なんか変。
アルが歩くと、人が少し離れる。
目を合わせない。
子どもを家の中へ入れる人もいる。
…………
人見知り?
そういう世界なのかな?
私はアルの服を掴んだまま歩いた。
逃げたりしないと思うけど、はぐれたら困る。
・・・
すぐに、古い小さな家に着いた。
「ばあちゃん!」アルが扉を開ける。
「変なのひろった~」
変なの。
私?ひどくない?
奥から、おばあちゃんが出てきた。
「あらあら。かわいいお嬢さんだこと。どうしたんだい?」
「森で会った。家も親もわかんないっていうし、
離れないから連れてきた」
「まあ」
「あっ、名前は…えっと…チ、チ、チョコだって」
…………
あっ。
チョコ確定!
おばあちゃんが、私を見る。
「チョコ、お腹すいてるかい?」
こくこくこく。
「じゃあ、ご飯にしようね」
いい匂い!
◇
じゃがいもみたいな野菜の入ったうすいスープ。
少し硬いパン。
人が作ってくれたごはん、いつぶりだろう。
もう、それだけで、おいしい!
つ~っと、また涙が流れた。
今度のは、うれしい涙。
こっちの世界の私は、泣き虫みたいだ。
もしかしたら、元々泣き虫だったのかもなぁ…
泣けなかっただけで。
お腹がいっぱいになって、やっと周りを見る余裕ができた。
古い家。
質素な食事。
外の畑も、森も乾いていた。
…………
ご飯、食べちゃったけど、大丈夫だったのかな。
おばあちゃんに、なにかお礼したい。
紙飛行機を手にしてひろげ始める。
これくらいしかできないもんなぁ~
長方形を三角に折って、余ったところは手で切って
正方形の紙を作る。
模様が素敵だから、外側になるように表にしよう!
三角に折って、もう一度三角
指を入れてひろげたら、四角にたたんで
ひとつづつ、またひろげて畳んで
細く折って、ひろげて、折り下げて…っと
何千枚と折った伝承のゆり、目をつぶってでも折れる。
花びらの仕立てで、アヤメにもなるから、おもしろいんだよね~
最後に花びらを整えたらできあがり。
だれかが、大切な人に、やさしい気持ちで伝え続けて、伝承になった作品。
シンプルだからこそ、美しい…
気に入ってくれるかな?
おばあちゃんの袖を引っ張る。
「なんだい?」
ゆりを渡す
「まあ。これは……花?」
こく。
「くれるのかい?」
こく。
「ありがとう。きれいだねえ」
おばあちゃんが笑った。
よかった!
暖炉の上に飾ってくれた。
アルが
「そいつ、紙を渡すとなんか作るんだよ。
森では空飛ぶオリガミ作ってた」って、おばあちゃんにいってる。
空飛ぶ折り紙?間違ってないけど…
紙飛行機の呼び名を折り紙って思っちゃったんだ。
ゆりを指さして
「これも、折り紙」
「これもオリガミなのかい?」
こく。
「さっきのは飛行機。これはゆり」
「ユリ?」
…………。
ゆりもないのかな。
いや。
飛行機もないのかも。
…………
でも、折ったものが、折り紙ってわかってくれたかな
この世界になくても、きれいだったり、楽しかったら、
それでいいよね。
暖炉の上にあるゆりが、うっすら光っているように見えた。
ん?
目の錯覚かな……。
…………。
お腹いっぱいになったら、眠くなっちゃった。
折る紙も、もうないし。
ああ、眠いって気がついちゃった……
寝るしかない




